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どうすればいい?クラウドファンディングのリターンが届かない時の対処法

2022.09.22

プロジェクトの実現をサポートするための出資を行い、その見返りにリターン(返礼)を受け取る「購入型クラウドファンディング」が人気を集めています。

購入型クラウドファンディングに参加すると、独自性のあるリターンを受け取れる点が大きな魅力です。しかしその一方で、実行者が出資金を持ち逃げする悪質な事例も報告されています。

もしクラウドファンディングのリターンが届かない場合、実行者はどのような責任を負うのでしょうか? 出資者はどう対処すべきなのでしょうか? 法的な観点からまとめました。

1. クラウドファンディングの出資金持ち逃げは犯罪?

クラウドファンディングの出資金を持ち逃げする行為は、実行者側の意図によっては犯罪に該当します。

また、持ち逃げの意図があったかどうかにかかわらず、リターンを提供できない場合は出資金の返還が必要です。

1-1. 意図的に持ち逃げした場合は「詐欺罪」

最初からリターンを提供するつもりがなく、意図的に出資金を持ち逃げした場合は「詐欺罪」に当たります(刑法246条1項)。詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。

1-2. お金がなくてリターンを用意できない場合は、犯罪ではない

これに対して、当初はリターンを提供するつもりがあったものの、浪費などによって出資金を使い果たし、リターンを提供することができなくなった場合は、原則として詐欺罪には当たりません。

出資金の提供を受けるための「欺罔行為(だます行為)」が認められないからです。

ただし、実際にはお金があるにもかかわらず、「お金がない」とウソをついてリターンの提供を拒否した場合は詐欺罪(詐欺利得罪)に当たります(刑法246条2項)。

リターンを提供する義務があるにもかかわらず、ウソをついて義務を免れ、財産上不法の利益を得ようとする行為だからです。

また、クラウドファンディングで得た出資金を隠匿し、支払不能であると偽って破産申立てを行い、破産手続開始の決定が確定した場合には「詐欺破産罪」により処罰されます(刑法265条1項)。

詐欺破産罪の法定刑は「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」で、併科される場合もあります。

1-3. 犯罪かどうかにかかわらず、出資金を返金する義務がある

クラウドファンディングの出資金持ち逃げが犯罪に当たるか否かにかかわらず、リターンを提供しない事業者は、出資者に対して出資金を返還する義務があります。

購入型クラウドファンディングにおいては、実行者と出資者の間では、「出資の見返りにリターンを提供する」という契約が成立しています。

したがって、出資者に対してリターンを提供することは、実行者に課された契約上の義務です。実行者が契約上の義務を怠り、リターンを提供しない場合には、出資者は契約を解除して、出資金の返還を請求できます(民法541条、542条、545条)。

2. クラウドファンディングのリターンが届かない場合の対処法

クラウドファンディングのリターンが届かない場合、プラットフォーム側は基本的に対応してくれないので、実行者に対して直接返金などを請求する必要があります。

もし実行者が返金請求に応じない場合には、支払督促や少額訴訟などの法的手続きの利用もご検討ください。

2-1. プラットフォーム事業者は対応してくれない|実行者への直接連絡が必要

クラウドファンディングサービスを提供するプラットフォーム事業者は、リターンが届かないなどのトラブル対応については基本的に関知せず、実行者と出資者の間で解決することを求めています。

参考:支援したプロジェクトのリターンが届きません|CAMPFIREヘルプ
参考:【支援者向け】プロジェクトが実行されない、リターン・コースが届かない|READYFOR

法的にも、クラウドファンディングに関する契約は、実行者と出資者の2者間で締結されており、プラットフォーム事業者は契約の当事者ではありません。

したがって、リターンが届かなかったとしても、原則としてプラットフォーム事業者の協力を求めることはできず、返金請求などは出資者に直接行う必要があります。

ただし、実行者による出資金持ち逃げの被害については、プラットフォーム事業者が一定の保証を提供しているケースもあります。保証の有無や内容は、プラットフォーム事業者に対して個別にご確認ください。

参考:CAMPFIRE あんしん支援保証について(2022.3.1以降に掲載開始のプロジェクトはこちら)|CAMPFIREヘルプ

2-2. 返金に応じない場合に利用できる法的手続き

リターンを提供しない事業者が返金に応じない場合は、以下の法的手続きを利用することが考えられます。

①支払督促

裁判所に申立てを行い、出資金を返金すべき旨の支払督促を行ってもらいます。

2週間以内に異議申立てがない場合は、仮執行宣言付支払督促を申し立てることができます。仮執行宣言付支払督促は、強制執行の申立てに用いることが可能です。

参考:支払督促|裁判所

②少額訴訟

60万円以下の金銭請求については、簡易裁判所に少額訴訟を提起できます。

長期化しがちな訴訟とは異なり、少額訴訟の審理は原則として1回で完結します。控訴も認められていないため、早期解決が期待できます。

少額訴訟で確定した判決は、強制執行の申立てに用いることが可能です。

参考:少額訴訟|裁判所

支払督促・少額訴訟のいずれも、弁護士に依頼せずとも、ご本人だけで十分対応し得る手続きです。クラウドファンディングの出資金を返してほしい場合は、各手続きの利用をご検討ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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