「平日は一人で運転し、休日は家族や友人とともに外出する」という車の使い方をするとき、乗車人数や積載する荷物の重量に応じて運転方法を変えていますか。今回は、乗車人数や積載する荷物の量が増えると、車の何が変わるのか、何に気を付ければよいのか解説します。
車にはさまざまな力がかかっている
車には、摩擦力や遠心力など、さまざまな力がかかっています。
特に注意しなければならないのは、車にかかる重量が増えたときです。フル乗車したとき、大きな家具・家電を購入して車で運ぶとき、キャンプや旅行などに出かけるときなどは、一人で乗っているときよりも車にかかる重量が多くなります。
車にかかる重量が多くなると、動き出しが鈍くなったり、制動距離(ブレーキが効き始めてから車が停止するまでの距離)が長くなったりするため注意しなければなりません。
重量増加と制動距離の関係
JAFのテストによると、一人で乗車しているときより、フル乗車しているときのほうが制動距離が長いという結果が出ています。
【JAFユーザーテスト「たくさん乗せると、どう変わる?制動距離と旋回性能を比較」】
■条件
・時速60kmから強めのブレーキを踏む
・3回計測した平均値
・定員乗車は乗車定員全員が乗った状態を再現(1人55kgとする)
■軽自動車(定員:4名、一人乗車:70kg、定員乗車:220kg)
・一人乗車の制動距離:28.3m
・定員乗車の制動距離:30.3m
■セダン(定員:5名、一人乗車:70kg、定員乗車:275kg)
・一人乗車の制動距離:26.9m
・定員乗車の制動距離:30.6m
■ミニバン(定員:8名、一人乗車:70kg、定員乗車:440kg)
・一人乗車の制動距離:27.2m
・定員乗車の制動距離:31.5m
(参考:https://www.onosokki.co.jp/HP-WK/products/keisoku/vehicle/jaf_275.pdf)
JAFのテスト結果からも、人を多く乗せるときや積載する荷物の量が多いときなどは、早めにブレーキをかける必要があるといえるでしょう。
遅いより早いほうが良い!ブレーキをかけ始めるタイミング
旅行やキャンプなどに出かけるときは、車にかかる重量が増加していることが多いため、早めにブレーキをかけ始めることが大切です。
筆者は、教習指導員という国家資格(教習所の教官の資格)を保有し、教習所での指導をしていた経験があります。教習しているときやペーパードライバーの方に向けた運転講習をするときなどは、「ブレーキのかけ始めは遅いより早いほうが良い」と指導していました。
早めにブレーキをかけたことで、目標としている停止位置より手前に停まってしまったときは、前進しながら停まる位置の調整をすることができます。しかし、ブレーキをかけ始めが遅いと、停止線を超えてしまったり、事故を起こしてしまったりするなど、取り返しがつかないことになる可能性があります。
このような理由から、ブレーキのかけ始めは遅いより早いほうがよいと指導しているのです。
制動距離は天気やタイヤの状態も影響する
制動距離は、雨や雪など路面の状況が悪いときやタイヤの溝が減っていると延びることがあります。これは、タイヤと路面の摩擦が小さくなることで起きる現象です。
国家公安委員会が作成している「交通の方法に関する教則」には、「雨にぬれた道路を走る場合や重い荷物を積んでいる場合などは制動距離が長くなります」や「路面が雨にぬれ、タイヤがすり減っている場合の停止距離は、乾燥した路面でタイヤの状態が良い場合に比べて2倍程度に延びることがあります」と明記されています。
また、JAFのテストによると、路面が乾いている状態より濡れている状態のほうが制動距離が長くなるということが明らかとなっています。
【JAFユーザーテスト「摩耗タイヤの検証」】
■条件
・テストコースの直線路にて時速100kmからフルブレーキ
・ドライ路面とウェット路面における制動距離を3回計測(テスト結果は平均値)
・サマータイヤを使用
■ドライ路面
・タイヤの溝(10分山):47.5m
・タイヤの溝(5分山):44.1m
・タイヤの溝(2分山):42.6m
■ウェット路面
・タイヤの溝(10分山):47.6m
・タイヤの溝(5分山):50.8m
・タイヤの溝(2分山):70.5m
(参考:https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/tire/wear-test)
このように、制動距離はドライ路面とウェット路面で違いがあり、タイヤの溝が浅いほど延びるということがわかります。
制動距離はちょっとした理由で延びるため運転方法に注意が必要
人・荷物を多く乗せて車で出かけるときや路面状況が悪いときは、制動距離が伸びるため、早めにブレーキをかけるよう心がけることが大切です。また、タイヤの溝の深さも制動距離に影響します。そのため、定期的にタイヤの点検(空気圧、溝の深さ、ひび割れの有無など)をすることが大切だといえるでしょう。
取材・文/齊藤優太