お葬式の香典袋の書き方は、筆ペンを使い表書きや名前・金額・住所を書きます。宗教や宗派によって書き分けが必要ですが、マナーを覚えてしまえば難しくはありません。表書きの書き方や金額に合った香典袋の選び方を解説します。
お葬式の香典袋の書き方
香典袋には外袋と中袋がそろっているものと、外袋だけで中袋が無いものがあります。書く内容は同じですがどこに書くかがそれぞれ違います。外袋には表書きと名前、中袋には金額と住所・名前を記入するのが一般的です。
葬儀には仏式・キリスト教式・神道式がありますが、ここでは仏式の香典袋の書き方を解説します。
外袋の書き方
外袋に書く内容は「表書き」と「名前」です。表書きとは香典袋の名目のことで、水引(みずひき)の上中央に、「御霊前(ごれいぜん)」「御香典(ごこうでん)」などと書きます。御霊前とは故人の霊にお供えするという意味です。通夜やお葬式では、故人の霊はまだ成仏されていないのでこのような書き方をします。
個人の名前で香典を出す場合は、水引の下中央にフルネームで書きます。また、連名で出す場合の書き方は以下のようになります。
夫婦 |
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3人 |
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4人以上 |
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夫の代わりに妻が参列する場合は、夫の名前の左下に「内」、上司の代理で持参する場合は上司の名前の左下に「代」と小さく書きます。
中袋の書き方
中袋の表面には香典の金額を書きます。金額は「金〇〇〇圓」と中袋の表面中央に書きますが、このとき「金〇〇〇圓也」とは書かないようにしましょう。金額の後ろに付ける「也」は数字の改ざんを防ぐためのものです。これは古くからのしきたりなので、最近では付けないことが一般的になっています。
数字は金額の書き換えを防ぐなどの目的で使われる「大字(だいじ)」で記します。
1 |
2 |
3 |
5 |
6 |
7 |
8 |
十 |
千 |
万 |
壱 |
弐 |
参 |
伍 |
陸 |
漆 |
捌 |
拾 |
仟 |
萬 |
たとえば3,000円は「参仟圓」、1万円は「壱萬圓」です。また、忌み数字である4と9は香典には使いません。
裏面の左寄りには郵便番号・住所・名前を書きます。これは四十九日を過ぎてから喪家が香典返しを送る際に使われます。傷心の中で余計な手間を取らせないための配慮でもあるので、書き忘れの無いように注意しましょう。
中袋が無い香典袋の場合の表書き
簡略化した香典袋には、中袋が無いものもあります。その場合表面の書き方に変わりはありません。裏面には、水引の下の左寄りに郵便番号・住所・フルネームと続いて金額を書きます。
香典袋の表書きに使う筆記具
香典袋に使う筆記具は原則毛筆です。「故人の訃報を聞き涙で硯(すずり)の墨が薄くなってしまった」という意味で、薄墨の毛筆で書くのが基本的なマナーです。
筆ペンまたはサインペンを使う
現代ではなかなか硯で墨をする機会も無いので、筆ペンを使いましょう。弔事用の薄墨筆ペンは文房具店やコンビニ・100円ショップで扱っています。基本的には外袋も中袋も筆ペンで書きますが、中袋だけはボールペンやサインペンを使ってもマナー違反にならないことが多いようです。
中袋には郵便番号や住所・金額など画数の多い文字が並びます。書いた文字が読みにくいと喪家側が困ることになるので、読みやすさに配慮する意味で使えるようになったのでしょう。ただし土地柄によってはマナー違反となるので、できる限り毛筆で書いた方が無難です。
スタンプを使うのは失礼になる?
ホームセンターや100円ショップでは「御霊前」のスタンプを扱っています。筆書きが苦手という人には便利かもしれません。しかし、スタンプは大量に書く作業を楽にするイメージがあるため、心がこもった印象は薄くなるのでおすすめしません。
達筆でなくてもいいので丁寧に心を込めて手書きで書いた方が印象は良いといえるでしょう。
筆ペンで上手に書くポイント
社会人になると冠婚葬祭に関わることも増え、筆を使う機会は意外と多くなります。筆の扱いに不慣れなためどうしても苦手意識を持ってしまう人も多いでしょう。そこで筆ペンで上手に字を書くコツを紹介します。
- 自分に合った筆ペンを使う
- 筆ペンを正しく持つ
- いきなり字を書かない
- 右利きであれば左手を右手の下に添える
- 普段から練習する
筆ペンはさまざまなメーカーから販売されています。芯から筆先の長さが違ったり、筆の太さが違ったりするだけで書き味が違います。使ってみて一番書きやすいものを普段から用意しておきます。
毛筆よりも筆先を短くすることで、ボールペンと同じ持ち方ができるのが筆ペンの良いところです。持ち方はボールペンと同じで構いません。筆ペンに慣れるため、図形の丸や四角・細線・太線を落書きしてみましょう。字を書くときは右手の下に、左手を添えて書くとブレにくくなります。
宗教や宗派で異なる表書き
香典袋の表書きは、仏式の中でも御霊前を使わない宗派があります。キリスト教式や神道式も仏式とは文言が違います。使い分ける理由は宗教・宗派の教義が大きく影響しているようです。
仏式の香典袋でも宗派で異なる
浄土真宗では御霊前と書かず「御仏前」「御香典」と書きます。浄土真宗は親鸞(しんらん)が開祖の大乗仏教の一つです。
「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」、人は亡くなると直ちに成仏し浄土へ迎えられると考える点です。ほかの宗派では故人の霊は三途の川を渡り閻魔大王の取り調べを受けるという流れなのですが、浄土真宗は霊としてさまよう場面はありません。そのため「霊」の字は使わず「仏」を使うのです。
キリスト教式の香典袋には「御花料」と書く
キリスト教式の香典袋の表書きはカトリック教会・プロテスタント教会ともに「御花料」「お花料」と書きます。キリスト教式のお葬式では、仏式と異なり焼香をあげるのではなく献花が行われます。
ほかの書き方として、カトリック教会では「御ミサ料」、プロテスタント教会では「献花料」「忌慰料」という表書きもあります。香典袋は百合の花や十字架が描かれたものが多く、白い無地の袋でも問題ありません。表書き以外は仏式と同様の書き方になります。
神道式の香典袋には「御玉串料」と書く
神道式の香典袋には「御玉串料」「御榊料」「御神前」と書きます。神道式のお葬式では玉串(たまぐし)が神前に捧げられます。玉串とは榊(さかき)や樫(かし)・杉の木の枝と紙垂(しで)を麻のひもでまとめたもので、神様に捧げる供物の代わりになるものです。したがって「御玉串料」とは、この玉串の代わりとなるお金という意味になります。
無宗教式・宗教宗派不明な場合の表書き
無宗教式・宗教宗派不明の場合、香典袋には「御霊前」「御花料」とするのが一般的です。
無宗教式のお葬式は、仏教やキリスト教・神道などのような宗教の儀式を行わない葬儀の形です。近年は喪家が宗教にこだわらなかったり、お別れの会や火葬式を家族だけで行ったり、自由形式で行う無宗教式のお葬式が増えてきています。
スタイルが自由なため、献花と焼香のどちらを行うかわかりません。喪家にどのような式になるのか事前に聞いておいた方がよいでしょう。