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【深層心理の謎】手がふさがっていると脳の活動が低下するのはなぜ?

2022.09.23

 わずかに雨足が強まってきた。ここまで傘を差さずに済んでいたが、バッグの中の折りたたみ傘を取り出して開くかどうか微妙なところである。明らかに強まってくれば傘を出さずにはいられないが、しばらくこのままであればどこか屋内に入るまでは差さなくていいように思えるのだが……。

傘を差すかどうか微妙な空の下、駒込界隈を歩く

 なで肩気味なのでトートバッグなどを肩掛けしていてもすぐに外れて落ちてしまう。したがってあまり見栄えがいいとはいえないが普段持つバッグはたすき掛けにできるものを使っている。たすき掛けのメリットはなんといっても両手が空くことだ。手に何か持って歩くのは個人的にあまり好きではない。

 JR駒込駅界隈に来ていた。正午を少し過ぎたところだ。生憎の雨模様だが、運よく今日はまだ傘を差さずに移動できている。戻ってからまだいろいろと作業は残っているが、ちょうどお昼でもあるし、どこかで昼食にしてみたい。駅の東口から「アザレア通り」商店街を進む。

※筆者撮影

 もともとの体型がなで肩気味なのだとは思うが、高校生の頃に学校の鉄棒で毎日懸垂をしていた時期があり、首の付け根あたりの筋肉がやや発達していることもなで肩を助長している。まぁこうしたことが原因である種の服装が似合わなくなったりするのは、アスリートや筋トレ実践者にはよくある話だ。

 通りを進む。韓国料理の店や鉄板焼き店、ラーメン店などが左右に店を構えているが、もう少し歩いてみたい。

 …しかしあまり呑気に歩いているわけにもいかない。これまでは霧雨程度だったが、気づけば空から落ちてくる雨粒がほんの少し大きくなってきていた。まだ傘を差すまでもないとは思うが、徐々に雨足が強まってくるようなら、たすき掛けにしているバッグから折りたたみ傘を取り出して開かなければならない。雨が強まる前に入る店を決めたいところだ。

 バッグをたすき掛けにしてせっかく両手を空けているのに、傘を持つことになるのはあまり気分のいいものではない。たとえ片手だけでも手がふさがれてしまうのは、自分の能力が制限されてしまうような感じがしてくる。考えてみれば決して気分の問題ではなく実際にそうなのだろう。

 それで思い出したが、警察官や軍人は基本的に傘を差さないし、常日頃から両手を空けておくことが“標準仕様”であるとされている。少し考えてみれば当然のことで、何らかの緊急事態が起きた際に両手がふさがっていては仕事にならない。その意味ではやはり手がふさがっている状態は能力が制限されているわけである。

手を拘束すると脳活動が低下する

 商店街の最初の十字路を左折してみることにした。角には和菓子屋があり、その奥にはうなぎ店がある。

※筆者撮影

 うなぎも久しく食べていないが、今時に食べたいというわけでもない。もう少し歩いてみよう。見つからなければ商店街に戻ってみてもよい。

 心なしかさらに雨足が強まった気がする。手をふさぎたくないので、傘はギリギリまで差さないつもりだ。それにしてもなぜこうも自分は傘を持ちたくないのだろうか。それはもちろん身体能力がわずかであれ制限されることを嫌ってのことではあるのだが、最新の研究では手が拘束されることで認知機能が低下することが報告されていて興味深い。


 身体化された認知の理論によれば、意味処理は身体の動きと密接に結びついています。たとえば手の動きを制限すると、手で操作できるオブジェクトのメモリが抑制されます。ただし身体拘束が意味論に関連する脳活動を低下させるかどうかは(これまでは)確認されていません。

 手の動きの制約は手で操作可能なオブジェクトに対する左頭頂間溝(LIPS)の脳活動を抑制し、サイズ判断タスクのリアクションタイムに影響を与えることがわかりました。

 これらの結果は身体の拘束が意味論に関与する脳領域の活動を低下させることを示しています。

 手の束縛は運動シミュレーションを阻害する可能性があり、それが身体関連の意味論的処理を阻害する可能性があります。

※「Nature」より引用


 大阪公立大学の研究チームが2022年8月に「Scientific Reports」で発表した研究では実験を通じて、手で扱えるモノをあらわす言葉に反応する脳の活動が、手の拘束によって大幅に減少することが示されている。言葉の意味処理を行う脳活動が、手を拘束することで抑制されてしまうのである。手がふさがった状態は身体能力だけでなく認知機能をも低下させていたのだ。

 実験では「カップ」と「ほうき」という2つの単語が画面上で参加者に提示され、それらの単語が表す物体の相対的なサイズを比較し、どちらの物体が大きいかをなるべく早く口頭で答えるように求められた。この場合はもちろん「ほうき」だ。

 またこの「カップ」や「ほうき」などの手で扱うことができるオブジェクトと、「建物」や「街灯」などの手では扱うことができないオブジェクトの2種類のオブジェクトを表す単語を比較して、それぞれのタイプがどのように処理されたのか、研究チームはその脳活動を機能的近赤外分光法(fNIRS)で測定した。

 テスト中に参加者は机の上に両手を置いたのだが、手の上に透明なアクリル板を乗せて拘束するパターンでもテストが行われた。

 回答データと脳活動のデータを分析したところ、手で扱えるモノの名称に反応する左脳の活動が、手の拘束によって大幅に減少することが示されたのだ。口頭での反応も手の拘束によって影響を受けて回答が遅くなった。これらの結果は、手の動きを制限することが手で扱えるモノの名称の意味処理に影響を与えることが示されることになったのである。

 手をふさがれることに何かネガティブな気持ちを抱いてしまうのは、単に動きが制限されるというにとどまらず、脳活動の低下を招くからでもあったのだ。

台湾料理店で魯肉飯を味わう

 路地を進む。進むほどに住宅街の様相を帯びてくる。左手に中華料理店が見え、右手にはインド・ネパール料理店がある。町中華でチャーハンを食べるのもよさそうにも思えてくる。

※筆者撮影

 中華料理店の前まで来ると、路地を右に曲がった角にも飲食店があることに気づく。近づいて店先を見ると台湾料理の店であることがわかる。店頭の立て看板では魯肉飯(ルーローハン)が紹介されている。そういえば一度ちゃんとした魯肉飯を食べてみたいと思っていた。いい機会だ。入ってみよう。

 店内は可愛らしいインテリアで思ったよりは狭くカウンター席はなかった。先客はなくご主人らしき年配の男性が1人で切り盛りされているようだ。

 店の奥にある2人掛けのテーブル席に着く。狭いとはいえカウンターのないこのお店を1人で回すのはどう考えても無理があることから、おそらく何か事情があってのワンオペなのだろう。その根拠になるのが、今は魯肉飯しか提供できないというご主人の申し出だ。そもそも魯肉飯しか食べるつもりはなかったので快諾して魯肉飯をお願いした。

 ともあれ雨が強くなる前に店に入ることができてよかった。食べ終えて雨が強まっていたなら、店を出るタイミングで傘を出すしかない。

 魯肉飯がやってきた。見た目からして美味しそうで、まさに“SNS映え”するメニューだ。そして見た目だけでなく、実際に美味しいことは容易に想像がつく。

※筆者撮影

 記憶をたどる限り魯肉飯を食べるのはたぶん初めてのような気がする。ハワイ料理のロコモコ丼は何度か食べたことはあるが、実際にこうして魯肉飯を目にしてみればロコモコ丼とは違う。

 ともあれさっそくスプーンですくってひと口食べてみる。美味しい。何も言うことはない。こういう丼モノのメニューということだ。

 頭の片隅でずっと行ってみたいと思ってはいるものの、未だに行けていないのが台湾だ。今のこのご時世の中で敢えて行くという気にはならないのだが、この先訪れる機会がめぐってくることがあるのだろうか。

 自分の場合、基本的に旅は一人旅なので、若い頃は“バックパッカー”風を装うことでそれなりに格好はついていたが、中年になった今ではなかなか難しいものがあるもしれない。特にアジア圏では中年男性の一人旅は「出張ビジネスマン」風を基本にしないと収まりが悪いような気もしてくる。

 しかしもちろんそれは考え過ぎというものだ。何歳であろうと行きたいところに行って自分なりに旅を楽しめばいいのだ。

 それはそうと“バックパッカー”の利点は、必要なモノはすべてリュックに収めて背負い、両手が空いていることである。海外旅行者といえば今や大きなキャリーバックをガラガラと引き摺っているイメージが定着してしまっていそうだが、少なくとも自分は海外旅行でも両手がフリーになるリュックやバッグを使いたい気はしている。

 そんなことを思ってはみてもいったい次の海外旅行がいつのことになるのやら皆目見当はつかない。余計なことは考えず、ひとまず今は魯肉飯を味わうことに集中したい。

文/仲田しんじ

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