女性と同じようにメイクをしたり、スキンケアをする若者男性が増えてきている令和新時代。特に10代や20代の男性は、昭和、平成と比べ美意識が格段に上がっているように感じます。
そんな中、意外とノウハウが提示されていないのが、40代以降の男性のスキンケア。コロナ禍以降オンライン会議が増えたことにより、画面越しの自分の姿を気にする人も多いのではないでしょうか。
今回は、正しいスキンケア方法やエイジングケアなど、40代以降の男性が行うべき肌のケアについて、ゴリラクリニックの総院長 稲見文彦医師にお話を伺いました。
ゴリラクリニック総院長 稲見文彦医師
PROFILE:東邦大学医学部を卒業後、同大形成外科学教室に入局。美容外科医を志し某大手美容形成外科に入職。10年以上にわたり数多くの手術を行い、同院京都分院長を経て、2015年に男性専門の総合美容クリニック『ゴリラクリニック』総院長に就任、現在に至る。医師として何よりも必要なのは知識や技術の前に、まず「心」であり「コミュニケーション」であることを信条に、患者様の悩みや希望に向き合い、気持ちに寄り添っている。
コロナ禍以降、高まっている40代男性の美意識
ゴリラクリニック 新宿本院の内観
男性専門の総合美容を専門に取り扱うゴリラクリニック。同医院の稲見総院長によると、「若見え(オンライン映え)」を目的に美容クリニックへ来院する40歳以上の男性が増えているとのこと。
――コロナ禍以降、来院されるお客さまはどのような悩みを抱えている方が多いのでしょうか。
稲見総院長:弊院を受診される男性患者さまは大変増加しました。理由としては、マスク生活による肌荒れ、オンライン会議などの普及による「顔の衰え」の自覚、そしてマスク生活を逆手にとって施術チャンスと受け取ったこと、この3点が挙げられます。
稲見総院長:特に、ニキビにお悩みの患者さまが大変増えました。10代、20代の方は以前も多くいらっしゃいましたが、コロナ禍以降は30代、40代の方が増えた印象があります。また、オンライン会議により自分自身の顔を客観的に見る機会が増え、結果としてしわやシミ、たるみなどが気になるようになった男性が来院されるケースも多いです。
逆にマスク生活が日常化したことにより、ダウンタイム(※)がある治療を受ける方もいらっしゃいます。ニキビ跡の凹みを治す「ダーマペン」は数日間にわたり肌が赤くなりますが、マスク生活やリモート勤務が増えた背景から、治療を希望されるケースが増えました。
※ダウンタイム:治療後の赤みや腫れなど、皮膚の状態が落ち着くまでの期間のこと。
――肌荒れや顔の衰えを感じている人は、普段どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。
稲見総院長:基本的なスキンケアが大切です。喫煙をしない、適度な運動習慣を身に着ける、バランスのよい食生活を心掛けるなどの対策も皮膚という「臓器」を健やかに保つには必須です。
「肌は臓器である」という認識を、読者のみなさまに持っていただきたいと思います。肌を健やかに保つことは見た目をよくするだけでなく、健康的な生活を送るための方法の一つと言えます。メタボリックシンドロームにならないよう食事に気を付けるのと同様に、肌の健康のために正しいスキンケア方法を身に着けていただきたいと願っています。
――コロナ禍以降特有の、マスク着用による肌荒れで悩んでいる人も多いかと思います。どのように予防・対処をしたら良いのでしょうか。
稲見総院長:withコロナの時代を迎え、マスク生活にも慣れてきた一方でマスク着用についてさまざまな考え方が見られるようになってきましたよね。会話を必要としないシーンなどで、マスクを可能な限り外す、というのも選択肢の一つかもしれません。
とはいえ、まだ完全にマスクオフというわけにもいきません。まずは肌を清潔に保つことが大切です。朝晩は石鹸を用いて洗うべきですが、日中は水で軽く流すだけでも良いでしょう。
肌荒れが軽快しない場合は自己流で治そうとせず、皮膚科などで抗生剤やステロイド剤を処方してもらうことをおすすめします。
40代以降の男性がすべき正しいスキンケアとは
――20代、30代の男性の肌状態と、40代以降の男性の肌状態を比べた時に、一般的にどのような違いがあるのでしょうか。
稲見総院長:年齢を重ねると皮膚のコラーゲン量が減少し、たるみやしわの原因となります。また天然保湿因子も40代以降はさらに減少し乾燥肌となりやすくなります。
皮膚のターンオーバーも衰えていくためシミを生じやすくなります。しみ、しわ、たるみ、乾燥肌などが40代、50代特有の肌トラブルと言えるでしょう。
――そのような年齢特有の肌トラブルを避けるために、エイジングケアは何歳ごろ始めるべきなのでしょうか。そもそも、肌が老化するとはどのような状態のことを指すのでしょう。
稲見総院長:皮膚のコラーゲン量は20代から減少し始めるため、アンチエイジング・ウェルエイジング(※) を意識するなら、できるだけ早くから対策することをおすすめします。基礎的なスキンケアを行っていただきつつ、日焼け対策を行うことが重要です。とはいえ30代、40代からでも遅すぎることはありません。
肌の老化のサインは数多くありますが、代表的なものがシミ・しわ・たるみです。そのほか、加齢によるイボ・毛穴の開きや帯状毛穴・くすみ肌なども老化症状に挙げられます。
※ウェルエイジング:病気にかかってから治療を行う、という考え方から、元気に長寿を享受することを目指し、もともと健康な人のさらなる健康を指導する医療のこと
疾病にかかってから初めて治療を行う「病気の治療」という考え方から、バランスの良い老化(バランスエイジング)を目指した、「健康な方のさらなる健康」を指導する医療です
――肌タイプを問わず、40代以降の男性が誰でもできる、基礎的なスキンケア方法をぜひ教えてください!
稲見総院長:さまざまな情報が飛び交っていますが、あれこれと試すより基礎的なスキンケアをコツコツと継続することが大切だと思います。一流のスポーツ選手がストレッチを重視するのと一緒です。基礎的な正しいスキンケアとは、「正しい洗顔」「洗顔後の保湿」「日焼け対策」「ビタミン剤の摂取」の4点。
まず正しく洗顔すること。洗顔フォームであれ石鹸であれ、泡立てネットなどを用いて濃密な泡を作り、なでるような洗い方を行いましょう。手のひらや指先が直接皮膚に触れないように意識し、泡で洗った後は十分にすすいで泡が残らないようにします。
次に保湿を行うこと。保湿とは化粧水と乳液やクリームで、水分と油分を補います。男性はこれを怠りがちですが、きちんと行いましょう。
そして日焼け止めを使うこと。白浮きせず使いやすい日焼け止めを、たっぷりとまんべんなく塗布し紫外線をカットすることで光老化を防ぎます。これらに加え、不足しがちなビタミン類を適宜摂取するとよいでしょう。特にビタミンCやビタミンB、L-システイン、グルタチオンなどがおすすめです。
まずは洗顔と保湿から始めてみては
年齢特有の肌トラブルに関わらず、マスク着用による肌荒れなど、いかなる肌のケアにも基礎的なスキンケアが重要だと解説する稲見総院長。
10代や20代、30代に比べ、40代以降の男性はスキンケアを怠りがちな人も多いかもしれません。日焼け対策とビタミン剤の摂取まで行うのはハードルが高い、と感じる人は、まずは洗顔と保湿から始めてみるのもいいかもしれません。
写真提供:ゴリラクリニック 広報部
取材・文/ゆりどん