「高を括る」は、日常会話やビジネスシーンで使われることの多い言葉です。ネガティブな要素を含むため、使うときは相手に悪い印象を与えないように注意が必要です。意味を理解して正しく使えるように、同義語や対義語・例文について解説していきます。
高を括るとは
「高を括る(たかをくくる)」の意味は、字体から想像しにくい言葉です。なんとなく使ってしまうと誤用のおそれがあるため、意味と語源について確認していきましょう。
高を括るの意味
「高を括る」には、相手の技量を低く見積もる・物事を甘く見る・安易に予測するという意味があります。売上高や収穫高で使われる物の数や量の総額を指す「高」と、予測する・まとめるという意味の「括る」が合わさった慣用句です。
これから起こる物事に対して根拠が薄い状態で予測を立ててしまった結果、過小評価してしまい、結果と差が出た場合に使われます。「高を括る」には、人や物事に対する見積もりや予測に加えて見下す要素が含まれているため、相手がいる状態で使う場合は、不快感を与えないように注意が必要です。
高を括るの語源
「高を括る」に使われている「高」や「括る」という言葉には、物事に対して下に見るような要素はありません。なぜ「高を括る」は、このような意味で使われるようになったのでしょうか。
「高」は、石高(こくだか)に由来していると言われています。石高は、土地ごとの米の生産性を表す単位のことです。1582年から1598年まで初めて全国的に行われた「太閤検地(たいこうけんち)」によって定められました。石高は国の強さを推し量る基準にもなっており、敵国に戦を仕掛けて勝算があるかどうかは、石「高を括る」ことが判断材料の一つになっていたといわれています。
しかし、戦に勝てるかどうかは石高だけでは分かりません。敵国の方が戦力が高いのに、石高だけで結果を予測して(括って)戦を挑むと負けるおそれがあることが、言葉の語源になったといわれています。
高を括るの使い方
「高を括る」は、他人と自分の両方で使えるので、さまざまな場面での使用が想定されます。具体的にどのような場面で使われるのか、例文を確認していきましょう。
高を括るを使った例文
日常生活の中で「高を括る」を使うときの例文は次の通りです。
- 先生から「簡単なテストだと思って高を括っていると痛い目に遭う」と言われた
- 格下の選手が相手なので練習しなくても勝てると高を括っていたら、試合で完敗した
- 模試の結果から楽勝で合格できると高を括っていたら、試験では全く問題が解けなかった
- 集合場所まで近いのでぎりぎりに家を出ても間に合うと高を括っていたら、遅れてしまった
「高を括る」は、物事が起きる前の状態でのみ使われるとは限りません。実際に起こったあとに予想と結果がどう違ったかを表現するときにも使われるので、覚えておきましょう。
ビジネスシーンにおける例文
「高を括る」は、日常生活だけでなくビジネスでも頻繁に使われる言葉です。ビジネスシーンで使われる例文を紹介します。
- 仕事のミスをどうせバレないと高を括っていたら、思わぬところから発覚した
- 簡単なプレゼンだと思って高を括っていたら、取引先からの質問攻めで頭が真っ白になった
- 今月の予算は余裕で達成できると高を括っていたが、大きな案件を逃してしまい達成できなかった
- 経営者の中には、世間の動きが変わっても「自分の会社は大丈夫」と高を括っている人が少なくない
- 後輩に「簡単に終わる仕事だと思って高を括っていても、意外に時間がかかるから早く取り組んだ方がいい」と注意をした
ビジネスでは、自分に対してだけでなく他の人にも使うこともあります。ただし、注意的な内容になることがあるため、目下の人に使う場合が多いです。
高を括るの類義語と対義語
「高を括る」には、似た意味を持つ言葉や反対の意味を持つ言葉もあります。正しい使い方ができるようになるために、確認して理解を深めておきましょう。
高を括るに言い換えられる言葉
「高を括る」と似た意味を持つ言葉には次のものがあります。
- 侮る(あなどる)
- 軽んじる
- 過小評価
- 高が知れている
- 馬鹿にする
- 見くびる
- 尻に敷く
いずれも、人や物事に対して実際よりも低く見ることや評価するというニュアンスが含まれる言葉です。言われてあまり気持ちのよい言葉ではないため、「高を括る」についても使いどころには注意が必要です。ただし、「馬鹿にする」や「高が知れている」よりも柔らかい表現になるため、状況に応じて言い換えましょう。
高を括るの対義語
「高を括る」と反対の意味を持つ言葉は次の通りです。
- 過大評価
- 買いかぶる
- 贔屓目(ひいきめ)に見る
- 期待し過ぎる
- 過度の期待を寄せる
「高を括る」の対義語は、高く見積もることや高く評価する意味の言葉になります。どちらも予想と結果が異なる場合に表現する言葉のため、使うときに戸惑ってしまうかもしれません。しかし、人や物事に対する評価が高いか低いかが分かれば、適切な言葉を選択できるようになるため、しっかりと覚えておきましょう。
響きが似ている慣用句やことわざ
「高を括る」には、響きが似ている慣用句やことわざがあります。しかし、意味がまったく違う場合があるため、確認しておきましょう。
同じ「くくる」でも意味が違うので注意
「高を括る」と響きの似ている言葉には、「木で鼻を括る」や「腹を括る」があります。
「木で鼻を括る」は、人に対して素っ気ない・不愛想といった態度を表す言葉です。「高を括る」と同じ「括る」が使われていますが、これはもともと、木で鼻をこする(かむ)という言葉が変化したものです。そのため、「高を括る」とは違う意味で使われます。
また、「腹を括る」は、物事に対して決心や覚悟をする意味で使われる言葉です。「括る」は、武士が戦の前に帯を締め直すことが由来になったといわれています。「高を括る」と混同されて使われるケースが少なくありません。どちらの言葉も「高を括る」と同じ使い方をしてしまうと、全く違う意味で捉えられてしまうため注意しましょう。
構成/編集部