「芥子」という漢字を見て、パッと読み方を答えられる人は少ないでしょう。芥子は、冷蔵庫に置いてある家庭も多い身近な香辛料です。芥子の読み方やどんな植物なのかを解説するとともに、同じ芥子でも危険な種類を紹介します。
芥子の読み方は3通りある!
芥子の読み方は一つではありません。芥子は読み方が3通りあり、それぞれ異なる状態を表す漢字なのです。芥子の読み方や、どんな状態を表すのかを紹介します。
芥子の読み方は「からし・けし・かいし」
芥子の読み方は、「からし」「けし」「かいし(がいし)」です。「からし」と聞くと「辛子」という漢字をイメージしますが、「芥子」でも香辛料の「からし」と同じ意味を持っています。
「けし」は種類によってはアヘンの材料に使われるため、麻薬と意味を取り違えないよう、香辛料の「からし」は「辛子」と表記されています。もちろん、料理に使う「からし」を「芥子」と書いても間違いではありません。
状態で読み方が変わる
芥子には3通りの読み方がありますが、それぞれ状態で読み方が異なります。芥子を「からし」と読むのは、アブラナ科の「芥子菜(カラシナ)」の種子を水で練って香辛料にしたものです。チューブ状や粉末状で売られており、自宅に常備している人も多いでしょう。
「かいし」「がいし」とは、カラシナの種子のことです。医薬品の原料として使われることもあります。ケシは高さ1.5mほどまで育つケシ科の植物を指します。芥子は、カラシナとケシという植物のそれぞれの状態で読み方が異なる、おもしろい漢字です。
芥子はどんな植物?
では、芥子と表記されるカラシナとケシという2種類の植物はそれぞれどんな植物なのでしょうか。見た目もまったく異なるので、カラシナとケシの違いがより理解できるはずです。
きれいな花を咲かせる
「からし」の材料となるカラシナは、アブラナ科アブラナ属の野菜です。チンゲンサイやハクサイと同じ種類に分類されます。ツンとした辛味が特徴の練り物のからしと同様に、カラシナそのものにもピリッとした辛味があります。アブラナと似た黄色い花をつけるのが特徴です。
一方、ケシは高さは1.5mになり、赤・紫・白の四弁の花や、花に模様が入った絞り咲き、花びらが何重にもなる八重咲きになります。ケシはカラシナよりも花が大きくなるのが特徴です。
ケシは麻薬の原料になることも
「からし」は自宅でよく見られる香辛料の一つですが、ケシは違います。一部の芥子からは麻薬のアヘンの原料が採取できるため、日本では厚生労働省の許可がなければ栽培できない品種と自宅で栽培してもよい品種が厳しく定められています。
栽培できないケシを見つけた場合は、そのまま抜かずに警察署や保健所に知らせなければいけません。
戦前や戦後は、現在栽培が規制されている品種のケシが自生していました。このため有名な絵画や詩歌に麻薬のケシが登場することがあります。
ケシの仲間にはポピーと呼ばれるかわいらしい花も1種に数えられます。ポピーは日本でも栽培が認められている品種です。
「カラシナ」と「ケシ」は別物
上述のように「からし」の素であるカラシナはアブラナ科アブラナ属の植物であり、ケシと同じ漢字でも、全くの別物です。おでんにつける和からしは、カラシナの種子からできた香辛料で広く日本人に愛されてきました。マスタードと呼ばれる洋からしも、品種は異なりますがカラシナの仲間からできています。
「からし」と同じく、ケシも食用に使われることがあります。あんぱんの上に乗った粒は、ケシの種子です。香り付けに使われることもあり、焼くとナッツのような香りがします。
ケシの種子には、麻薬の原料になる成分がほとんど含まれていません。発芽しないようきちんと熱処理もされているため、食用に使われるのです。七味唐辛子の一部として入っていることもあります。
からしの「和からし」と「洋からし」
「からし」は「和からし」と「洋からし」に分かれ、それぞれ別の用途があります。どちらもカラシナからできていますが、品種が異なるため食事への取り入れ方が違うのです。「和からし」と「洋からし」の特徴の違いを紹介します。
和からしは辛味が強い
日本で「からし」として知られる「和からし」はオリエンタルマスタードの種が使用され、強い辛味を持っているのが特徴です。スーパーでは、「和からし」と「からし」に分けて販売されていることもあります。「和からし」と「からし」の違いは、辛味の強さと味の濃さです。
ハウス食品では、『「からし」製品は、からしの風味と辛味を程よく味わっていただけるよう、「オリエンタルマスタード」と「イエローマスタード」をブレンドしています』と説明しています。
「和からし」はおでんや豚の角煮など、汁に溶かしても辛味が残るよう作られているのが特徴です。一方、「からし」はとんかつやシュウマイなど風味を楽しめるようになっているからしです。
出典:「からし」と「和からし」の違いは何ですか。どのように使い分けたらいいですか。|ハウス食品
洋からしは粒入りもある
洋からしも芥子菜(カラシナ)からできている香辛料で、マスタードとして知られています。カラシナの種子を乾燥させ、マスタードシードにしたものを使用しているのが特徴です。スーパーに並ぶマスタードの中には、ペースト状の商品や粒の入った商品があります。
粒マスタードは、カラシナの種が残った状態です。種を潰しきらずに残すことで、食感を楽しめるようになっています。カラシナは日本料理と洋風料理向けで、味付けと使い方が異なる植物なのです。
構成/編集部