新車購入時に利用するローンの選択肢として、残価設定ローンがあります。具体的な数値を用いて残価設定ローンの仕組みなど基本的な解説をし、さらにメリット・デメリットや利用に向いている人・向いていない人の特徴などを紹介します。
残価設定ローンとは?基本知識を解説
残価設定ローンを理解するためには、用語の意味と仕組みの両方を知らなければなりません。残価設定ローンの理解に欠かせない、基本的な知識を解説します。
残価とはどういう意味?
残価とは、将来の車の価値を表す「残存価格」を省略したものです。残価設定ローンにおける「将来」とは、最後のローン支払い時点を意味します。残価を決めるのは、車種・経過年数・走行距離など複数の要因です。車は車種や色の人気によって買取価格が異なり、登録から時間が経過するほど・走行距離が多くなるほど価値が下がります。
「残価設定ローン」では走行距離などある一定の条件を定めた上で、最後のローンを支払う時点での「残価」をあらかじめ設定するのが特徴です。その上で、月々の支払金額を決め、返済していきます。
残価設定ローンの仕組みを説明
残価設定ローンでは、車を購入する際に決めた残価を最後のローン返済時に支払います。例えば、支払回数:60回、残価:200万円の残価設定ローンであれば、60回目のローン返済時に200万円の支払いが必要です。
また、残価設定ローンでは、車両価格から残価を引いた金額を、残りのローン返済回数で割って返済していきます。先ほどの例であれば、車両価格から200万円を引いた金額を59回に分けて返済することになります。最後のローン返済時の残価をあらかじめ決めて、残価以外の金額を月々返済していくのが、残価設定ローンの仕組みです。
残価設定ローンの具体例
新車のミニバンを購入することを想定した、残価設定ローンの支払い例を紹介します。
- 車両価格:650万円
- 支払い回数:120回
- 残価:150万円
残価設定ローンでは、残価を最後のローン返済時に支払います。つまり、この場合は120回目の支払い金額が残価と同額の150万円です。残りの回数で支払うのは「車両価格-残価」なので、500万円(車両価格:650万円-残価:150万円)を119回に分けて返済します。1回あたりの支払金額は約4万2,000円です。
このように、単純に650万円を120回で返済する場合(1回あたりの支払金額は約5万4,000円)に比べて、月々の支払金額が安くなるのが残価設定ローンの特徴です。
4パターンの残価精算方法
残価設定ローンでは、最終ローン返済時に残価の精算が必要となります。具体的な精算方法は、以下の4パターンです。
<ディーラーに車を返却する>
車を返却することによりローン最終回の支払いは免除されます。ただし、返却してしまうので、手元に車は残りません。
<残価を支払って車を買い取る>
車を買い取ることで、引き続き同じ車に乗り続けられます。そのためには、残価分を一括または分割により支払う必要が生じます。
<同じディーラーで新しい車に乗り換える>
現在の車はディーラーに返却するので、ローン最終回の支払いは不要です。新しい車を購入するための一連の手続きが必要です。
<車を購入したディーラー以外の買取業者に売却する>
あまり知られていませんが、残価設定ローンで購入した車でも買取業者で売却できます。人気車種や中古車相場によっては、残価設定ローンで決めた残価よりも高値で売却できることもあります。契約書でディーラー買取が強制になっていると、買取業者での売却ができないので、事前に確認が必要です。
残価設定ローンとマイカーローンとの違い
残価設定ローンもマイカーローンも車を購入するために利用するローンですが、異なる点があります。両者の違いについて解説します。
マイカーローンは複数の金融機関から選べる
「残価設定ローン」は購入する車種を取り扱うディーラーでのみ契約が可能です。つまり、ローン契約を結ぶ選択肢はディーラーしかありません。このようにディーラーの関連会社や提携する信販会社と契約するのが「ディーラーローン」であり、残価設定ローンもディーラーローンに含まれます。
一方、「マイカーローン」は多くの銀行・信用金庫など各金融機関で取り扱いがあるので、金利などを比べて自分に合ったところを選べます。また、マイカーローンの方がディーラーローンよりも金利を低く抑えられる可能性があり、車両本体以外にも車の付属品や車検費用などもローンの対象となるのが特徴です。
手続きは残価設定ローンの方が簡単
残価設定ローンはディーラーローンの一種なので、車の購入と同時にローン契約も可能です。本人確認書類などの準備は必要ですが、書類のほとんどはディーラーが準備してくれ、手続きもディーラーで行うため、1カ所でローン申し込みが完了します。
それに対し、マイカーローンの場合は車の価格などについてはディーラーで書類をもらい、平日の昼間に金融機関に出向いてローン手続きを行う必要があります。ローン申し込みに必要な手続きは、1カ所で完結する残価設定ローンの方が簡単です。
残価設定ローンのメリット
残価設定ローンには優れた点があるからこそ、多くの人に利用されています。車を購入する際に残価設定ローンを利用する具体的なメリットを紹介します。
車を手放すときの下取り価格が保証される
一般的に、車は新車登録から時間が経過するほど価値が下がります。新車を購入してから、3年後と5年後の車検を経過すると、その値下がり幅は特に顕著です。中古車として買取業者で売却した際に、思っていたよりも値段がつかない可能性も十分にあります。
一方、残価設定ローンならあらかじめローン終了時の下取り価格が保証されています。したがって、購入時の予想よりも中古車価格が下がり、手放したときにローンが残るという心配は不要です。
生活環境に応じて車の乗り換えがしやすい
車に求めるものは、生活環境の変化によって変わります。例えば、夫婦で乗る分にはコンパクトカーで十分ですが、家族が増えればミニバンの方が良くなるでしょう。
また、主に通勤に使う用途だとしても、アウトドアが趣味になればSUVが欲しくなります。このように、車に求めるものは時間の経過とともに変化しうるものです。3~5年でローンが終了する残価設定ローンを利用することで、生活環境の変化に合わせた車の乗り換えがしやすくなります。
毎月の返済額を抑えながら新車に乗れる
一般的なマイカーローンが車両価格全体を月割りして返済するのに対し、残価設定ローンでは、「車両価格全体-残価」を月割りで返済するので、月々の支払額を抑えられます。先ほども紹介した、以下の例で説明します。
- 車両価格:650万円
- 支払い回数:120回
- 残価:150万円
残価設定ローンを利用すると「車両価格-残価=500万円」を119回に分けて返済し、1回あたりの支払金額は約4万2,000円です。一方、車両価格:650万円を120回で返済する場合の1回あたりの支払金額は約5万4,000円です。このように、残価設定ローンなら頭金不要で毎月の支払額を抑えつつ新車に乗れます。
残価設定ローンのデメリット
その他のローンと同様に、残価設定ローンにもデメリットがあります。残価設定ローンが抱えるデメリットについて具体的に見てみましょう。
車の状態によっては残価が保証額を下回る
残価設定ローンで設定する残価は、契約で定められた一定条件を満たす場合にのみ保証されます。具体的な条件の例としては、「車両に損傷がない」「レース等での使用や違法改造をしていない」「既定の走行距離を超えていない」などです。
これらの条件を満たせないと、購入時に設定された残価よりも低い金額での下取りになる可能性があります。そうなると、「あらかじめ設定した残価」と「実際の残価」の差額を支払う必要が生じます。
車の維持費はローンとは別に必要
車を維持するためにはガソリン代の他にも税金や車検代、さらには故障したときの修理費などが必要です。これらの費用は残価設定ローンの金額に含まれていないので、別途で支払います。
エンジンオイル交換・バッテリー交換など、経年劣化に対応するために必要な部品交換や、法定点検などのメンテンナンス費用もあります。このように、ローン以外にも支払う費用があることを考慮した上で、月々のローン支払い金額を決めなければなりません。
ユーザーに車の所有権がない
残価設定ローンで購入した車の所有権は、ユーザーではなくディーラーや信販会社になることが多いです。購入時の計画から変更なく車を使用するなら大きな問題とはなりませんが、何らかの変更が生じたときに思わぬ手間を引き起こす可能性があります。
例えば、生活環境が変化し、ローンの途中で車の売却を検討したとします。この場合には車の所有権を一旦自分に移した後に売却の手続きが必要です。車の所有権を移すためには、その時点での残りのローンを一括で返済しなければなりません。
多くの場合、金銭的な余裕がないからこそローンを利用するものです。したがって、ローン残高を一括返済するのは難しい場合が多く、車を売却したくてもできない事態も十分に起こりえます。