米中関係は、ガジェットウォッチャーにとっても無縁ではない。
あまり政治の話はしようと思わないが、たとえば「中国で開発された製品にGoogleのOSを搭載できるか」という問題は常に付きまとう。
日本在住者は、やはりGoogle謹製のフォーマットを使い慣れている。
それはスマホだけでなく、スマートウォッチにも言えることだ。
中国・北京に本社を置くMobvoi社のスマートウォッチ『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』は、我々が使い慣れたGoogleのOS(Wear OS)を搭載し、我々が使い慣れたアプリ、そして我々が使い慣れた各種機能を展開してくれる。
今回はそんな『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』が筆者の手元に届いたので、試してみよう。
慣れ親しんだ「Google謹製」のプラットフォーム
筆者の仕事とGoogle Mapは、切っても切れない間柄である。
何しろ、取材先が初めて行く土地ということも珍しくない。従って、スマホを片手に見ず知らずの道をグルグル巡ることもしょっちゅう。そしてそのうちに、スマホの電力がどんどん減っていく……。
そもそも、片手にスマホを持ったまま街を歩くというのはあまり良くない。ということで、ここは『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』にGoogle Mapをインストールして利用してみよう。
指の太い人や老眼の人には多少扱いづらい部分もあるかもしれないが、基本操作はスマホのそれと同一である。
このような具合に、スマホ(特にAndroid機種)で扱い慣れているアプリを『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』に取り込んで利用することができるわけだ。
Spotifyがプリインストールされているが、自分はYouTube Music派なんだよなぁ……という場合も、Playストアから該当のアプリを持ってくればいい。
故に、『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』は「初めて使うスマートウォッチ」という感じが一切しないのだ。まるで、何年も前からこれを使っていたかのような感覚にすら陥ってしまう。
多忙の中の製品レビュー
TwitterやLINEなど、スマホではなく『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』から利用するということももちろんできる。
スマートウォッチとしての基本的な機能、即ちスポーツアシスト機能や睡眠トラッキング機能、健康管理機能もしっかり揃えている。
そして、それらの機能を十分に使いこなせるだけのスタミナ量も持っている。
スマートモードで最大72時間、省電力モードで最大45日間の稼動ができるというから、現代のスマートウォッチの基準に照らし合わせても申し分ないスタミナと判断できる。
インポーターから提供された『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』を初めて装着した日、筆者は忙しさに呻いていた。
というのも、9月15日から東京ゲームショウ(TGS)が3年ぶりの実地開催ということで、新作のゲームやゲーム関連ガジェットの発表会の案内が立て続けに届くようになったのだ。
様々な人やあちこちのメディアの編集部と連絡を取るのに、『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』は早速ながら大活躍している。
Bluetooth通話で、他のライターに電話をかける。『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』にはマイクとスピーカーが内蔵されているため、わざわざスマホを取り出す必要はない。
『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』とBluetoothでつながってさえいれば、バッグの中に押しやっても問題ないのだ。
そしてこの記事を書いている今も、筆者の左手首にはめた『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』がいくつもの通知を立て続けに表示している。
しかもここは、東京から静岡へ向かう高速バスの中。ちゃんとした部屋の中ではなく移動中に製品を試用するというのは、レビューライターの風上にも置けない「いい加減な行為」だろうか?
しかし現実問題、ガジェットというものは「忙しい中で使うもの」であって、嵐のような多忙さの只中にその機能を発揮できなければ記事にする価値はない。
時たまそのような製品に当たってしまうこともあるが、その場合は何も言わずに製品を提供元へ返送する。
しばしば「王様は裸だ」と叫んでしまう筆者自身の性格を曲げてまで、使えない製品のレビュー記事を書く暇など全くない。こう見えても忙しいのだ。そしてその忙しさを綺麗に整理整頓してくれる製品は、まさに記事にするべき逸品である。
忙しい男のスマートウォッチ
それにしても、『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』という製品名はいささか誤解を生じてしまっている。
これだけを見れば、この製品はGPSにしか対応していないように感じる。
しかし実際はGPSの他にもGLONASS、ガリレオ、北斗、みちびきにも対応しているのだ。
このあたりはもっと強調しなければ、「何だこれ? 今時GPSにしか対応してないの?」という印象を抱かれてしまうと思うが……。
なお、『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』の筐体は米軍規格MIL-STD 810Gに準拠しているため、かなり男性的な見た目である。
いや、見た目だけでなく実際に触ってもゴツい。もしかしたらこのあたりに賛否両論あるかもしれないが、筆者個人は大好きなビジュアルだ。
平日の仕事だけでなく、休日のレジャーでも十分に活用できるスマートウォッチだが、筆者としてはスポーツマンでなくとも「忙しい男」にこそつけてもらいたいという思惑がある。
それまではスマホで行っていた作業を『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』に集約することができ、なおかつバッテリーの持ちも良くクリアな音声通話も可能、さらに付け加えればGoogle Payと紐付けさせてNFC決済もできる。
この製品は、実は「大都市型スマートウォッチ」ではないかとも筆者は思案している。
東京23区で生きるために必要な機能が、この『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』に全て内蔵されているというわけだ。
そんな『TicWatch Pro 3 Ultra GPS』の価格は3万5,999円ということになっているが、筆者がAmazonをチェックしたところ、何と2万7,880円で販売されていた。
もちろんこれは公式ストアでの価格である。が、「セール中だからこの製品は買うべき!」という書き方をするつもりは一切ない。
仮にこれが3万5,999円のままだったとしても、ビジネスの最前線で戦う者にとっては何よりも頼りがいのある武器になるはずだ。
いずれにせよ、「これこそがビジネスガジェット」と堂々言える製品であることは間違いないだろう。
【参考】
TicWatch Pro 3 Ultra GPS-Mobvoi
TicWatch Pro 3 Ultra GPS-Amazon
取材・文/澤田真一