厚生労働省が年に1度行っている「賃金構造基本統計調査」によれば、令和3年度における公認会計士・税理士の平均年収は約658万円(きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額)であることが開示されている。
しかし、この調査結果は「公認会計士」と「税理士」が一括りにされたものであり、両者の割合や勤務先の職種等も明示されていない。
この点、公認会計士及び税理士は異なる職種であることから、両者を一括りにしたデータの有用性には疑問が残る。
そこでアカウントエージェントは、令和4年8月に第72回税理士試験が実施されたことも受け、広く税理士の年収に関する現実の認知度向上を図るため、税理士の年収に関する分析調査を行い、結果を発表した。
「開業税理士」の平均年収は744万円だが最多は300万円以下の層
まず大手転職エージェントの保有する求人データ(全1,583件)を抽出し、職種別に税理士の年収帯を算出した。
※上記データには就職後の昇給や残業代などは含まれていない
当該調査結果によれば、求人数の最も多かった「会計事務所・税理士法人」の年収は全職種中最も低く、平均年収は560万円であることが判明。
次に求人の多かったコンサル・アドバイザリー職の平均年収は、722万円であることが分かり、職種間において大きな乖離が見られた。
またいずれの求人データにおいても、勤務地が東京のケースでは各職種における平均年収の10%~20%程度年収が上がる傾向が見られる。
職種別年収データから、顧客に対して「節税」「売上向上」などの直接的なキャッシュインをもたらすサービスは年収が上がりやすく、税務顧問などのいわゆる代行サービスについては年収が上がりづらいようだ。
日本税理士会連合会の実施した「第6回税理士実態調査報告書」によれば、開業税理士と社員税理士の年収推移は次のとおり。
全体の7割以上が該当する「開業税理士」の平均年収は744万円であるものの、300万円以下の層が最も多い結果となった。
一方、社員税理士(会計事務所・税理士法人のパートナー)の年収水準は高く、平均年収は886万円、年収700万円~1,000万円の層が最も多い。少なくとも、厚生労働省の開示する賃金構造基本統計調査によるデータとは大きく乖離していることが分かる。
また、日本税理士会連合会は、開業税理士1人あたりの売上高についても調査を行っている。
開業税理士の年収は744万円である一方、1人あたりの売上高は2,205万円とやや高め。税理士事務所のサービスは大半が人件費であることから、従業員への給与及び事務所のテナント料が大きく利益を圧縮していると考えられる。
税理士事務所の開業にはリスク(廃業・売上が安定しない等)があるため、安定して高所得を目指すのであれば、先述のとおり会計事務所・税理士法人の社員を目指すことが効率的であると捉えることもできるだろう。
調査概要
調査期間:2022年8月22日(月)~8月26日(金)
調査方法:大手転職エージェント保有の求人データを抽出
サンプル数:1,583件
対象:全国における税理士向け求人データ
その他利用したデータ:日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査報告書」
関連情報:https://a-agent.co.jp/tax/tax-accountant-income/
構成/Ara