9月は台風シーズン真っただ中。つい先日も9月5日から6日にかけ、台風11号が韓国の南部と東部の沿岸部を通過し、各地で洪水が発生し、台風の影響で死者も出た。
昔から夏や初秋には台風がくるものだが、最近はどうも日本に接近する台風の勢力が強いように感じる。
なぜ、台風が強くなっているのか。その理由を気象予報士の内藤俊太郎さんに話を聞いた。
台風が強いのは「日本近海の水温上昇」が原因
記憶に新しいのは令和元年の東日本台風だ。関東甲信越の各地で一級河川の氾濫や内水氾濫の被害が相次いだ。更に、土砂崩れも各地で発生したことで、甚大な被害が出た。災害関連死を含む死者は100名を超え、改めて自然災害の怖さを実感することとなった。
二度と起こってほしくないと思う悲惨な光景だったが、今年も強い台風がやってきて、自然災害が起こってもおかしくないという。
「台風が勢力を強めるキーワードは『海面水温』です。海面水温がおおむね27℃を超えると、海水から蒸発した水蒸気をエネルギー源として発達します。一昔前だと、フィリピンの東や熱帯の海でできた台風が発達しながら日本に近づいてくるものの、熱帯に比べると日本付近の海水温が低いので日本に近づいてくると台風の勢力は衰えていました。
しかし、近年は温暖化とともに海面水温も上がってきています。日本近海に限ると、100年で1.19℃ほど上昇しており、先日の気象庁の発表によれば、2022年夏の海面水温は平年を0.8℃上回り過去最高でした。そのため、日本近海にやってきた台風が、勢力を維持してしまうのです」
台風による被害は、風だけではなく雨の影響も大きい。その強さには「気温の高さ」が影響する。
つい先日、今年の夏の平均気温が気象庁より発表され、2022年の夏は1946年の統計開始以来、2番目に暑い夏だったと発表があった。
「気温が高いと空気中に含むことができる水蒸気の量が増えるため、雨がまとまって、かつ大量に降りやすくなります。実際近年では、雨が降る日は減っていますが、一日の降水量は増えています。つまり、降る時は大量に降って、降らないときは全く降らないんです。
台風が作られた場合、ものすごく水蒸気を含んだ空気と共に日本にやってくることで、雨の降り方も激しくなってしまい、自然災害を引き起こしてしまうのです」
台風シーズンはまだまだ続く
今年は気温が高く海面水温も通常よりもより高い状態であるため、この9・10月は強い勢力の台風が発生しやすく、勢力が衰えないまま日本にくる可能性が高いといえる。それに加え、9・10月は更に懸念すべき気象状況が絡んでくるという。
「特にこれからは秋雨前線が発生しやすい時期に入ります。令和元年の東日本台風も、秋雨前線の影響で台風がくる前から大雨になっていて、そこに強い台風がやってきてさらに強い雨が降ったことで、あれほどまでの大きな災害となってしまった。今年も同じような条件が揃う可能性は大いにあります。台風シーズンはまだまだ続くので、強い台風には警戒が必要です」
内藤俊太郎
気象予報士・防災士。テレビ東京やKHB東日本放送の気象キャスター経て、現在はTBSNEWSとYahoo!天気・災害動画に出演。気象防災アドバイザーや総務省地域力創造アドバイザーとして、地域防災の普及啓発にも取り組む。
取材・文/田村菜津季