ノンアルコール市場が着々と伸びている。日本国内のビールメーカーもノンアルや微アル製品に力を入れる。一方、ノンアル人気が先行する海外有名ブランドのノンアルコール製品も続々と日本に上陸。8月には白ビール界でグローバルな人気を誇る「ヒューガルデン」からノンアルコールが日本発売された。
世界のビールブランドが競うノンアルコール市場
もちろん以前からノンアルビール市場には一定の需要があった。アメリカのマーケティング会社Report Ocean社のレポートによると、2021年の世界のノンアルコール市場は8,765億米ドル。年成長平均率は6.9%、2030年までに市場は2兆1,326億ドルまで増大すると予測されている。
5年ほど前から、ハイネケン(オランダ)、ステラアルトワ(ベルギー)、バドワイザー(アメリカ)、「ギネス」(アイルランド)といったグローバルのメジャーブランドが続々とノンアルのビールテイスト飲料を製品化。欧米、南アメリカで販売が先行している。その人気はクラフトビールにも流れ、アメリカのクラフトビールのリーディングカンパニー、ブルックリン・ブルワリーは、昨年ノンアル製品を投入。日本でも人気のIPAで知られるブリュー・ドッグは、ロンドンにノンアルコールの専門バーをオープンしている。
そんな中、この8月、白ビール界のグローバルブランドで、日本にも多くのファンを持つベルギーの「Hoegaarden」(ヒューガルデン)のノンアルコール「Hoegaarden 0,0」(ヒューガルデン ゼロ)が日本発売された。
「ヒューガルデン ゼロ」330ml/アルコール分0.0%。脱アルコール製法を採用し、香りは元の「ヒューガルデン ホワイト」に近い。
販売は、現在世界ナンバーワンのビール会社アンハイザー・ブッシュ・インベブ・ジャパン(以下ABInBev)。同じくABInBevの取り扱いブランドの「バドワイザー」のノンアル「バドワイザー ゼロ」も販売を開始した。
同商品はアメリカでは2019年にすでに販売されていた。「ノンアルの販売はグローバルで、特にアメリカで先行しています。日本販売に向けては税関の規制をクリアするため、表記や原料などを工夫してきました」と、ABInBevジャパン平松直子さんは話す。
リラックスするのに酔う必要はない
世界保健機関(WHO)によると、2000年以降、飲酒する人の割合が世界で5%減っている。世界の人口が20%増えていることを踏まえるとかなりの減少幅だ。
以前から健康を考えてノンアルコール飲料を選ぶ人はいた。年齢層はどちらかというと高めだった。それが今、飲めるけれどあえて飲まない「ソーバーキュリアス」がZ世代を中心に、クールなライフスタイルとして広がりを見せている。飲み会に行ってもソフトドリンクで楽しめるという人が、日本でも増えているようだ。
日本においては、2020年からのコロナ禍による外食・外飲み自粛、自宅時間の増加で、ノンアル市場が加速した。サントリーが昨年10月に発表した「ノンアルコール飲料レポート2021」によると、2021年のノンアルコール市場の伸びは前年比111%と見込んでいる。日本においてはノンアルコール市場の8割を占めるのはビールテイスト飲料だ。
ノンアルコール市場の推移2008年〜2021年/サントリー調べ
ノンアルコールビールテイスト飲料の飲用頻度の変化(2021年、年代別):自宅内でノンアルコールビールテイスト飲料の飲用経験がある人/サントリー調べ
自宅でノンアルコールビールテイスト飲料を飲む頻度を見ると、週1回の人が、30〜50代で2割に近い。飲用シーンとしては夕食時に加え、気分を変えたいとき、休肝日、くつろいでいる時などが挙げられている。ビールを飲みたいけれど酔いたくない。リラックスしたいけれども酔いたくない。そんなニーズが高まっているようだ。
「ヒューガルデン ゼロ」の理想ターゲットのジェイミーとは?
新発売の「ヒューガルデン ゼロ」を飲んでみた。ヒューガルデンのオレンジピールとコリアンダーシードの独特の香りは、かなり元の「ヒューガルデン ホワイト」に近いと感じる。また、フルーティな味わいは、かなり甘みを感じる。「ヒューガルデン」は以前から、ビールの苦みが苦手な女性にも人気の高い白ビール。フルーツジュースのような風味は、白ビール大好き層には待望の一本かもしれない。
ABInBevジャパンによると、「ヒューガルデン ゼロ」を好む理想のターゲット像は、ジェイミー、32歳。誰それ? というと、もちろん仮想の人物である。男女の区別もされていない。そのプロフィールが興味深い。
ジェイミー(32歳)は未婚。所在地はニューヨーク、ブルックリン。文学士号を取得し、仕事はマーケティング・コーディネーター。趣味はアドベンチャー・トラベル、野外フェス、写真、外食、ヨガ。友だちと家族を大事にし、健康志向、新しいものが好き。最新のテクノロジーを駆使し、自然の中で過ごすのも大好き……ということで、かなり都会的で知的、経済的にも余裕がありそうな人である。
「ヒューガルデン ゼロ」発表会で示されたヒューガルデンのブランド価値観。
「ヒューガルデンゼロ」の発売に合わせ、東京渋谷でビアガーデン「Hoegaarden BEER GAARDEN」(ヒューガルデン ビア・ガルデン)が、10月16日(日)までの期間限定でオープンしている。場所は明治通りに面した渋谷キャスト。昼からオープンし、ランチメニューも展開。平日は先着100杯、「ヒューガルデン ゼロ」を無料サービス中だ。夕方、仕事帰りにちょっと一杯寄りたい人には、ビールと軽いおつまみセットの「ヒューガルデンアペロ」も用意されている。
ノンアルの他には、「ヒューガルデン ホワイト」のドラフトをはじめ。ABInBevブランドの「バドワイザー」や「コロナ エキストラ」「グースアイランドIPA」などがラインナップので、しっかり飲みたい人にもおすすめ。秋の渋谷でちょっと知的で都会的なジェイミーを探してみよう。
ヒューガルデン ビア・ガルデン
開催時期:10月16日(日)まで
場所:渋谷キャスト ガーデン
営業時間:12時〜21時45分(平日)/13時〜21時45分(土日祝)
取材・文/佐藤恵菜