米国株投資入門 ~今こそ知りたいインデックス投資を徹底解説~
そもそもなぜ投資をするのでしょうか?
その目的やゴールは個々によって異なると思いますが、少なくとも今よりも資産を増やしたいという目標は共通するところではないでしょうか。
今回は米国株投資に興味がある方なら1度は聞いたことのある「インデックス投資」について、その歴史と特徴について詳しく解説していきます。
インデックス投資の誕生
世界初の個人投資家向けインデックス・ファンドの誕生は1976年8月31日です。
この日、今では世界最大の資産運用会社となったバンガード・グループが「インデックスファンド(First Index Investment Trust)」を設定したことで、現在まで続くインデックス投資の偉大な歴史が始まりました。
発売当初は人気がなかったインデックス・ファンドが世界的に有名になった背景には、投資家のウォーレン・バフェット(以下バフェット)が自身の死後に備えて「資産の90%をインデックス・ファンド(S&P500)に投資せよ」という言葉を妻宛に残したことと、「プロスペクト理論」で有名な行動経済学者のダニエル・カーネマンの著書「ファスト&スロー」のなかでも紹介されたことで、注目度が飛躍的に上がったといわれています。
ちなみにバンガード・グループの創業者ジョン・ボーグル氏(1929-2019)は「インデックス・ファンドの父」とも呼ばれており、その功績は計り知れません。
そもそもインデックス投資とは何か
インデックス投資とは市場に参加する投資家の平均点以上を目指す投資手法です。
米国経済へのインデックス投資といえばS&P500のような株価指数に連動した成績を目指すために設計されたファンドのことで、別名パッシブファンドとも呼ばれています。
シンプルに考えると米国企業や米国経済の将来を信じることができれば、積立の設定さえすればあとは継続するだけでなので、資産運用について考える時間を効率的にすることが可能です。
ほとんどのアクティブファンドよりも運用実績で優れている
アクティブファンドとは、ファンドマネージャーと呼ばれる専門家にお金を預けて個別株などを運用することで、インデックスなどの指数を上回ることを目指して運用されるファンドのことを指します。
ところがインデックス投資をするだけで、ほとんどのアクティブファンドよりも運用成績が上回っているのです。
実際、過去にはウォーレン・バフェットが大半の人はS&P500に投資するだけで良いと答えたことに対して、それに挑戦したアクティブファンドがあります。
それはS&P500を上回るであろうアクティブファンド5本を選び、どちらの運用成績が良いのかを2008年から2017年まで賭けるというものでしたが、その結果、どのアクティブファンドもS&P500指数を上回ることができませんでした。
このエピソードが物語るように、ファンド選びのプロとはいえアクティブファンドがインデックスファンドに勝つのがいかに難しいのか、その一端が分かるのではないでしょうか。
もちろんインデックスなどの指数をはるかに上回る運用成績を上げているアクティブファンドも存在しますが、それはごく一部に過ぎないのです。
投資信託とETF、それぞれのインデックス投資先
いざ米国株のインデックス投資をしようとしたとき、選択肢として下記の2つの選択肢あります。
①投資信託を通じてS&P500にインデックス投資をする方法
②ETFを通じてS&P500にインデックス投資をする方法
まず①の投資信託の場合、つみたてNISAで年間40万円まで運用することができるのに加えて、利益は非課税となる制度のため、米国株投資をするなら活用することがオススメです。
主な投資先は下記の2つがあります。
・eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
・SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド
また投資信託の場合は配当をもらう方法もありますが、長期投資が前提である限り配当は再投資へ回した方が将来の資産形成に期待ができるでしょう。
次に②のETFの場合は下記の2つがあります。
・VOO(バンガード・S&P500ETF)
・SPY(SPDR・S&P500ETF)
米国でインデックス投資のETFとして1番人気があるのはSPYです。日本ではVOOが人気です。
購入のポイント
投資信託の場合は円建てでの投資となりますが、米国のETFの場合は円で投資もできますが為替手数料を取られてしまうので、ドルに両替した上で投資をすることが一般的です。
インデックス投資のデメリット
S&P500によるインデックス投資のデメリットをあえて挙げるとすれば「GAFAM+T」のようなグローバル企業の業績に大きく依存していることです。これらの企業の成長率が高いからこそ、これまで良いパフォーマンスを残してきたともいえます。
特にS&P500は「時価総額加重平均」を採用しており、時価総額の大きな企業が成長を続けることが指数の上昇へとつながります。
こうしたメリットがデメリットにもなり得ます。
なぜなら「GAFAM+T」のように現在の米国企業をリードするハイテク企業の成長鈍化が指数のパフォーマンスに影響を与えやすいからです。
またインデックス投資は個別株と違ってマーケットの流れを考える必要がない一方、とても退屈な投資手法でもあるため、物足りないと感じる方もいるでしょう。
このようにインデックス投資のデメリットとメリットは表裏一体であるといえるのではないでしょうか。
そのためポートフォリオの半分をインデックス投資にして、もう半分を個別
株にする「コア・サテライト戦略」という投資手法もあり、リスクヘッジしながら個別株の醍醐味を味わう投資家も存在します。
まとめ
資産形成を考える上で最も有名なエピソードのひとつにアマゾン創業者ジェフ・ベゾス(以下ベゾス)とバフェットのこんな会話があります。ベゾスはバフェットにこう聞きました。
「なぜみんなあなたの投資戦略を真似しないのですか?」
それに対してバフェットはこう答えたといいます。
「ゆっくり金持ちになりたい人なんていないからです。」
これこそ投資の真髄のひとつではないでしょうか。
特にインデックス投資は長期にわたって投資を継続することで「複利の効果」を最大限享受することができます。
ほとんどの投資家にとって、早く資産形成したいと無理に投資をするのではなく、じっくりと資産を育んでいくことこそ、遠回りのように見えて実は最も効率的な投資方法ではないでしょうか。
こうした良い習慣を身につけることが大切な投資の心構えだと筆者は考えます。
文/鈴木林太郎
金融ライター/個人投資家。現代アートと工芸作品の収集を通じて「経済とアート」の関係を考えることがライフワーク。投資は米国株がメインなので、米国経済や米国企業の最新情報を届けている。現在は「マネー現代」などのメディアを中心に活動中。
編集/inox.