■連載/Licaxxxの読書×鑑賞文【第14回】ハードボイルド映画を見てたら「家族愛」に戻ってきた
ハードボイルド作品が好きだ。ハードボイルドとは、感傷や恐怖などの感情に流されず、精神的・肉体的に強靭で、時に冷酷非情、などが挙げられる。私が刑事物や法廷物が好きなのは、とにかくそんな主人公がたくさん出てくるから。自分的にはヒーローものを見てるような気分になるわけです。
ハードボイルドも目指している先があります。己の正義が違うからぶつかり合うわけです。組織のため?自分のため?最後は家族のためが一番つよい。最近見たハードボイルドを感じる作品をご紹介しましょう。
1.マジでめちゃくちゃ面白い!「KLEO」
<あらすじ>
1987年。東ドイツ屈指のスパイのクレオは、あるシュタージ (秘密警察) 工作員の代わりに、西ベルリンで一人のビジネスマンを暗殺します。ところが、彼女はたちまち逮捕され、シュタージからも糾弾され、実の祖父にも裏切られることに。
やがて刑務所生活も2年が過ぎた頃、ベルリンの壁が突然崩壊し、クレオは釈放されます。間もなく彼女は、自分に対して仕組まれた陰謀は考えていたよりずっと複雑で、不吉な赤いスーツケースがすべての鍵を握っていることに気づきます。
復讐に乗り出したクレオは、混沌としたベルリンや一夜限りのエレクトロクラブから、マヨルカ島のファームハウス、果てはチリのアタカマ砂漠へと導かれていきます。人生を懸けてこの事件に挑む西ベルリンの警察官、スヴェンもまた彼女の後を追うことに…。(filmarksより引用)
(c)Netflix
これはマジでめちゃくちゃ面白いドラマです。ドイツっぽいギャグが最高だったり、90’s の音楽や美術の取り入れ方も魅了されるので、おしゃれってだけの理由でも見られる。
サスペンスとしての要素が強いと思いますが、作り方がうまくて飽きない。主人公のクレオはとにかく己に降りかかった災いの真実を知るために強く逞しく突き進んでいく。国家の秘密を突き詰めていく際に暴かれていく家族、恋人、友人、そういう人々の真実がなんとも苦い。
途中で彼女が苛まれる問題で時代背景も感じつつ、爽快なアクションをかましたり、ハードボイルドながらも人間らしい感情で選択肢を選んでいったり、全方位で大満足な作品になっている。あと今回これを見て、国家に家族の運命を左右されることの歯痒さは一番ハードボイルドになる理由なんじゃないかとふと思いました。
『KLEO』https://www.netflix.com/jp/TITle/81216677
2.哀愁とやるせなさに浸りたい「模範家族」
<あらすじ>
金銭問題を抱え、崖っぷちに追いこまれた一家の主。ある日偶然、途方もない額の現金を見つけたことをきっかけに、危険な麻薬取引に手を染めることになる。(filmarksより引用)
(c)NARDA/Netflix
主人公のお父さん、出てくるヤクザ、追ってる警察、結局みんな愛していた人や家族や、それに近い繋がり、人間関係を理由にどうにかしようとしている沼物語。
救いが絶妙になかったり、わからないとこばかりで2期に続くのか? と思うところも多いが、哀愁とノワール感を全力で追求した結果だと思う。
訳わからないままの崩壊とか、理由が釈然としない感じはむしろロードムービーとか邦画にある独特な謎に近くて、ちょっと作り手のリアルも見えつつ。
ハードボイルドはとにかく“強い”という印象があるので、非現実的だからこその憧れがあるのですが、この作品は最終的にはハードボイルドだなあと思いつつも、途中の判断力の鈍さや、ハードな理由がすごく小さかったり、あり得ない設定の中にリアルな人間が垣間見えたのが結構好きでした。
韓国ドラマは全てを回収してどんでん返し!サイコー!みたいな良くできた話が当たり前なので、それを求めるとなんだかつまらん!となる方も多いかもしれないですが、私はその感じも好きでした。
『模範家族』https://www.netflix.com/jp/title/81349413
文/Licaxxx
Licaxxx
東京を拠点に活動するDJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。2010年にDJをスタート。マシーンテクノ・ハウスを基調にしながら、ユースカルチャーの影響を感じさせるテンションを操り、大胆にフロアをまとめ上げる。2016年にBoiler Room Tokyoに出演した際の動画は50万回以上再生されており、Fuji Rockなど多数の日本国内の大型音楽フェスや、CIRCOLOCO@DC10などヨーロッパを代表するクラブイベントに出演。日本国内ではPeggy Gou、Randomer、Mall Grab、DJ HAUS、Anthony Naples、Max Greaf、Lapaluxらの来日をサポートし、共演している。さらに、NTS RadioやRince Franceなどのローカルなラジオにミックスを提供するなど幅広い活動を行っている。さらにジャイルス・ピーターソンにインスパイアされたビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰。若い才能に焦点を当て、日本のローカルDJのレギュラー放送に加え、東京を訪れた世界中のローカルDJとの交流の場を目指している。また、アンビエントを基本としたファッションショーの音楽などを多数制作しており、近年ではChika Kisadaのミラノコレクションに使用されている。
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