世界でもっとも大きい海を指す「太平洋」と2番目に大きい「大西洋」。どちらも海を指す言葉ではあるが、「たい」と読む字が「太」と「大」と別の漢字になっていることに気づいていただろうか。その由来について調べてみたら、意味が全く違っていたのだ。
「太平洋」は冒険家・マゼランが命名した名前から和訳された
まずは太平洋から見てみよう。キッズジャポニカ(小学館)で太平洋を調べてみると以下の様に記されている。
「大西洋、インド洋と並ぶ三大洋の1つ。世界最大の大洋で、地球表面のおよそ3分の1を占める。北から東にかけてを南北アメリカ大陸、南を南極大陸、西から北にかけてはオーストラリア大陸、インドネシア、アジア大陸東部に囲まれる。大陸や島のそばに海溝が多く、アリューシャン海溝、日本海溝、マリアナ海溝などがある。マリアナ海溝のチャレンジャー海淵は水深1万920mで、世界でもっとも深い海である。面積1億6624万1000km2。平均の深さは4188m。」
日本でいうと、20の都道府県(北海道、青森件、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡件、愛知県、三重県、和歌山県、徳島県、高知県、愛媛県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)が太平洋に面している。
太平洋の名前の由来は、誰もが歴史で学んだことのあるポルトガルの冒険家・マゼランが初めて太平洋を航海したときの経験に基づいたものであるそうだ。
マゼランが1520年、南大西洋を南下して南米大陸最南端の海峡(今で言うマゼラン海峡)を命からがら抜けた後、マリアナ諸島やセブ島などに着いたのだが、その間時化(しけ)もなく、穏やかな航行ができたことから、マゼランは「Mare Pacificum」と命名。
英訳にすると「Pacific Ocean」となるが、穏やかな、平和なという意味を持つこの言葉を、日本語では「太平」と訳した。そのため「太平洋」と名付けられたのだ。もともとはマゼランが航行した海域や南太平洋を指すのに使用されていたが、18世紀のJ・クックの世界周航あたりから、現在の太平洋全体を呼称するものとして定着したという。
大西洋は“大きな西の海”が由来
大西洋を同じく『きっずジャポニカ新版』(小学館)で調べてみると…
「太平洋、インド洋と並ぶ世界三大洋の1つ。ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸、南北アメリカ大陸の間にある。中央部を南北に海嶺が連なっている。北東部ではタラやニシンを中心とする漁業がさかんだが、乱獲などのため漁獲量は減っている。メキシコ湾や北海では石油や天然ガスなどの採掘が行われている。面積8655万7000km2。」
つまり、ヨーロッパの西側に位置し、ヨーロッパとアメリカの間にある海のことを指している。日本とは面していない。
古代ギリシアでは、大西洋南部のことをアフリカ大陸の北西端に立っている巨神アトラスが支配すると考えていたため「Atlanticos」と呼んでいたそうだ。日本語の「大西洋」の由来は、古代ローマでの大西洋全体の呼び名Oceanus occidentalis「西の大洋」を日本語訳にしたものだ。
つまり「太平洋」は穏やかな海、と言う意味から太平の「太」が使われ、「大西洋」は大きな西の海、と言う意味から「大」が使われていた、ということがわかった。
漢字ひとつずつに、実は深い意味があることを改めて知ったのであった。
参考:『きっずジャポニカ新版』『日本大百科全書(ニッポニカ)』(ともに小学館)
文/編集部