恋人を独占したい、思い通りにしたいなどの感情は、しばしば「デートDV」に発展します。
デートDVは、不法行為・ストーカー行為などの違法行為に該当するケースも多いです。もしご自身やご家族がデートDVの被害に遭っているようであれば、行政の窓口や警察へご相談ください。
今回はデートDVについて、問題行動の例・加害者の法的責任・相談先などをまとめました。
1. デートDVに当たる問題行動のパターン
デートDVとは、交際相手や元交際相手から受ける暴力のことです。
デートDVに当たる問題行動は、主に以下の4つに分類されます。
・精神的な暴力
・身体的な暴力
・経済的な暴力
・性的な暴力
1-1. 精神的な暴力
交際相手や元交際相手を人として尊重せず、暴言や行動制限などによって精神的なダメージを与える行為は、デートDVに該当します。
(例)
・大声で怒鳴る
・侮辱する
・交友関係を制限する
・無視する
・行動を監視、制限する
・メールなどをチェックする
1-2. 身体的な暴力
他人に対する暴力は、正当防衛などのごく限られた場合を除いて許されません。交際相手や元交際相手に対して暴力を働いた場合、デートDVに該当します。
(例)
・殴る
・叩く
・蹴る
・腕を掴む
・髪を引っ張る
・物を投げつける
・刃物を突きつける
1-3. 経済的な暴力
交際相手に不合理な経済的負担を強いる行為や、自分に対して経済的に依存させようとする行為などは、デートDVに該当します。
(例)
・借りたお金を返さない
・不本意に仕事を辞めさせる、働くことを禁止する
・お金があるのに、デート費用を全く払おうとしない
・(同棲中の場合)お金があるのに、生活費を渡さない
・貯金を勝手に使う
1-4. 性的な暴力
恋人同士であっても、相手と性的な行為をするかどうかは、自分自身で決めるべき事柄です。交際相手や元交際相手に対して、性的な行為を強要した場合はデートDVに該当します。
(例)
・性行為を強要する
・避妊に協力しない
・アダルトビデオなどの視聴を強要する
・嫌がっているのに裸体などを撮影する
・人工妊娠中絶を強要する
2. デートDVが該当し得る違法行為
デートDVは、以下に挙げる各種の違法行為に該当する可能性があります。
2-1. 不法行為
デートDVによって精神的なダメージを受けたり、うつ病や急性ストレス障害に罹患したりした場合は、加害者に不法行為が成立します(民法709条)。
被害者は加害者に対して、デートDVにより被った損害につき、不法行為に基づく賠償を請求することができます。
2-2. つきまとい等・ストーカー行為
恋愛感情などを充足する目的で、交際相手や元交際相手に対して以下のような行動を取った場合は「つきまとい等」に当たります(ストーカー規制法2条1項)。
・つきまとう
・待ち伏せする
・家の付近をうろつく
・行動を監視している旨を告げる
・拒否されているのに面会を要求する
・著しく粗野、乱暴な言動をする
・無言電話をかける
・拒否されているのにメールを送り続ける
など
つきまとい等は公安委員会による禁止命令等の対象となるほか(同法5条)、繰り返した場合は「ストーカー行為」に該当し、刑事罰の対象となります(同法2条4項、18条)。
2-3. 各種の犯罪
デートDVは、以下に挙げる犯罪に該当するケースもあります。
①侮辱罪
公の場で交際相手や元交際相手を侮辱した場合、侮辱罪として「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」に処されます(刑法231条)。
②暴行罪・傷害罪
交際相手や元交際相手に暴力を振るった場合、暴行罪として「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処されます(刑法208条)。
また、暴力によって交際相手や元交際相手にケガをさせた場合、傷害罪として「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます(刑法204条)。
③窃盗罪・横領罪
交際相手や元交際相手のお金を勝手に盗んだ場合、窃盗罪として「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます(刑法235条)。
また、交際相手から管理を任されていたお金を、委託の趣旨に反して使い込んだ場合、横領罪として「5年以下の懲役」に処されます(刑法252条1項)。
④強制わいせつ罪・強制性交等罪
交際相手や元交際相手に対して、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合、強制わいせつ罪として「6か月以上10年以下の懲役」に処されます(刑法176条)。
また、交際相手や元交際相手に対して、暴行または脅迫を用いて性交・肛門性交・口腔性交のいずれかを行った場合、強制性交等罪として「5年以上の有期懲役」に処されます。
3. デートDV被害の主な相談先
ご自身やご家族がデートDVの被害に悩んでいる場合、すぐに「DV相談ナビ」や警察へご相談ください。
①DV相談ナビ
全国共通の電話番号(#8008)にダイヤルすれば、最寄りの相談機関の窓口に相談することができます。
参考:DV相談について|男女共同参画局
②警察
犯罪に当たるデートDVについては、警察に相談すれば取り締まってもらえる可能性があります。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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