2023年度税制改正に向けて8月31日期限となっていた要望が出そろったようだ。実際には12月末に閣議決定される税制改正の大綱でほぼ確定するため、まだ未確定の要素が多いが、NISAの上限の増額、NISAの恒久化の要望が出ている。
現行制度と既に決まっている今後の改正点
NISAには現在3つの制度があり、そのうちジュニアNISAは2023年で終了する。
(一般)NISAは2023年に終了するものの、制度内容に少し変更点を加えて2024年に(新)NISAとして始まる。
3制度のうち、つみたてNISAは毎月定期的に金融庁指定の投資信託に積立購入することで資産形成ができ、非課税期間が20年と長いため人気となっており、2021年の買付金額が2020年の2倍超となっている。指定された投資信託の買付を行うことから、何に投資してよいのか分からない初心者の方に分かりやすいのだろう。
一方、(一般)NISAは、つみたてNISAの投資信託の同じ銘柄で積立購入が可能で、非課税期間が終了しても翌年の投資枠を使用して非課税期間を延長するロールオーバーができる。また、年間の投資枠も大きいため、わかりやすいという理由だけでつみたてNISAを選ぶのは適切ではないだろう。
2024年以降は(新)NISAとなるが、2023年に非課税期間が終了する資産においても(新)NISAにロールオーバーすることが可能となる予定だ。
(新)NISAの問題点
(一般)NISAでは、投資対象は株式、ETF、ほとんどの投資信託、証券会社が対応していれば外国株式までも対象となったが、(新)NISAでは、投資対象は国内株式やETF、投資信託のなかでも先物取引が内包されているような投資信託は除外される。国内企業への投資促進、国民の安定的な資産形成を促すという点ではこのような制限を設けることは適切だ。ただ、その制度内容が複雑であることが問題だ。2階部分である株式やETFに投資したい場合は1階部分の投資信託の積立が条件となる。一方、(一般)NISAでそれまで投資していた場合にはその1階部分の投資は必須ではなく2階部分の国内株式のみの投資ができる。ただ、2階部分のみ投資する場合には投資信託やETFの投資ができなくなる。
このような投資対象の縛りが分かりにくい点や、つみたてNISAの投資可能期限2042年に比べて期限が2028年と短いことから、やはり初心者に(新)NISAはつみたてNISAに比べて敬遠されてしまう可能性が高い。
2023年税制改正どうなる?
長期の投資を促すために、金融庁は2023年税制改正では、投資期限の恒久化、制度の簡素化されるのを要望している。
税制改正の内容は各省庁の要望をもとに作成され、12月末ごろにほぼ確定的な税制改正内容が大綱として発表される。
期限の恒久化や上限額の増額は、期限を気にせず投資でき非課税になる金額も増えることから投資家にとっては朗報だ。
ただ、実際には恒久化または上限額の増額となると今後の税収減につながることから、財務省がよしとするか分からない。また、投資が拡大してしまえば貯蓄から投資へ促すという目的は達成され、そのときには税収減となるNISA制度をなくすようにしておきたいのかもしれない。さらに、現状のような期限があること、または投資対象へのそれぞれの省庁の投資を促したい先も異なることから、簡素化もまた難しいのかもしれないと考える。
(参考)
2022事務年度金融行政方針について:金融庁 (fsa.go.jp)
2022年9月1日日経新聞朝刊 金融庁が方針「NISA」「教育」「販売」
文/大堀貴子
フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。