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大手チェーンで続々投入される配膳ロボット、飲食店が無人運営になる日はやってくるのか?

2022.09.01

配膳ロボットが動き回る姿が当たり前になりつつある!?

つい先日のことだ。しゃぶしゃぶを食べに行ったら、お店に“ネコ”がいた。「お前は一体何を言っているんだ?」と思われそうだが、本当に“ネコ”がいた。皆さんも見かけたことはないだろうか?

実は最近、レストランなどに“ネコ”が増えているのだ。

これは中国の大手ロボットメーカー「Pudu Robotics」が開発したネコ型配膳ロボット、その名も「BellaBot」。自律的な位置やナビゲーション、3次元障害物回避、案内などの機能が搭載されたスグレモノ。

可愛らしい表情とAI音声などにより接客もバッチリ!近年、新型コロナの感染拡大で多くの飲食店が大きく売り上げを落としている中、人手不足や非接触ニーズも高まり大手外食チェーンを中心に配膳ロボットの導入が相次いでいる。

ネコ型ロボットがチェーン店で続々導入。日本ロボット化計画! 

今年5月、しゃぶしゃぶ食べ放題ブランド・しゃぶ葉では全276店舗のうち、272店舗でネコ型配膳ロボット「BellaBot」を導入した。運営する株式会社すかいらーくレストランツは今年末までに「ガスト」「バーミヤン」などを含め合計3000台を配備する予定だという。

しゃぶ葉のスタッフからは「ロボット導入後は従業員が料理を運ぶ時間が削減しその時間を食材の補充や清掃の時間に費やせるようになった」と喜びの声も。さらに…

「お客様との会話の時間も増えサービス強化につながりました。また、小さなお子様は猫ロボットに会いたくてご来店頂くという機会も増えて好評です」と語る。

そして、首都圏駅前の名店「熱烈中華食堂日高屋」でも50店舗に見習いスタッフとしてロボットを配属。大好評だという。

配膳・運搬ロボット「KettyBot(ケティボット)」40台と「BellaBot」10台を採用。実際にインターンシップを開始したところ「ロボットの停止場所が非常に正確で動きもスムーズ。ラーメンや飲み物を安定して運んでくれるので結果的にお客様にも喜んでいただける」と担当者が語るほど即戦力として大活躍しているという。

さらにこちらは『バーチャル店員』という日本初の接客が話題に!

高品質な焼肉をリーズナブルに提供する「焼肉の和民」では配膳ロボット「KettyBot」のスマート案内機能を活用し、ロボットに搭載された大画面のサイネージ越しに接客を行う「バーチャル店員」を6月から期間限定で展開。バーチャル店員との接客が人気を博した。

このように、今や幾多の飲食店で採用されている配膳ロボットだが、飲食業界だけでなく医療業界や工場でも荷物の運搬などに使われ、様々な業界で我々人間をサポートしている。世の中はロボットの可能性を密かに求めているのだ。それはこんなアンケートでも如実に現れている。

日本トレンドリサーチが全国の男女計420名を対象に「配膳ロボットに関するアンケート」を実施したところ、45%以上の人が「どちらかといえば普及してほしい」と回答している。

そのメリットとして「人手不足でも店を運営できる」「一度にたくさんの料理が届く」など、新たな時代のシステムに期待する声が多く見られた。幅広い世代にロボットとの共存への意識が浸透しているのかもしれない。

配膳ロボットメインのレストラン&ロボット研究施設が羽田にオープン!

今年4月、羽田空港に隣接する大規模複合施設「羽田イノベーションシティ」内にオープンイノベーションを目指した「Future Lab HANEDA」が開設された。手掛けたのは川崎重工だ。

施設は2つのエリアで構成され、調理・配膳などレストランの作業をすべてロボットで行なうことを目標とした実証実験スペース「AI_SCAPE(アイ・スケープ)」とロボットの研究開発に活用できる場「YouComeLab(ユーカムラボ)」が併設されている。

一般でも体験できる「AI_SCAPE」は、まさに未来の空間を描いたかのような夢のロボット三昧レストランだ。

利用者は専用のアプリで料理を注文。それを受けたロボットが調理を行ない、席まで運んでくれる。店内では配膳ロボットはもちろん、ロボットアームのある調理ロボットの動きまで生で体感できるのだがこれが子供ウケ抜群らしい。ぜひご家族で行って欲しい。

ただ、気になるのは料理だ。大抵このような施設では料理がどうしてもチープになりがち。しかし!「AI_SCAPE」はメニューへのこだわりもイノベーティブだった。

味わえる料理の数々は食作家・園山真希絵氏が監修した、身体への「愛」が溢れるメニューばかり。国産野菜たっぷりのカンガルーミートソースや玄米麺、千葉県香取市産のマッシュルームを使用したスパイスカレーなどを堪能できる。

ロボットに詳しくない人でも満喫できるスポット「Future Lab HANEDA」はいかにして誕生したのか?今回、川崎重工業株式会社のロボットディビジョン・合田一喜さんに誕生秘話、ロボットの魅力を聞いた。

ーー「Future Lab HANEDA」「AI_SCAPE」誕生の経緯、狙いなどを教えてください。

「そもそもFuture Lab HANEDAは従来の公開施設とは違い、一般の人や研究者、企業関係者などが一体になってロボットに触れ、学び、活用し、進化を促そうとするオープンイノベーションの場です」

「その中のAI_SCAPEというレストランはロボットが配膳しやすいロボットフレンドリーな家具をレイアウトすることで、人とロボットが共生する社会の実証実験を行なっています。また、協働ロボットの作業時間や動作範囲など実装に必要な各種データの採取を目的としています」

ーー配膳ロボットの特長は?

「双腕、人間サイズ、コミュニケーションフェイスが特長です。特にサービスロボットのアームは可搬重量が低いことが多いですが、当社は長年産業用ロボットの開発に携わっているため一般的なサービスロボットと比べて重いものも持ち上げ、配膳までを行うことができます」

ーー今後、目指していることは?

「現在ロボットの下げ膳動作を開発中で、そこまでできると調理・配膳・下げ膳とレストランでウェイターが行う一連の流れの自動化が完成します。それを目指していきたいです」

ちなみに、もう一つの施設「YouComeLab」ではヒューマノイドロボット「Kaleido」や自走ロボット「Nyokkey」など、開発中のロボットも含めた最先端のロボットを設置。スタートアップや研究機関が開発したプログラムを実証することができる。

「こちらは一般の方の体験はできないのですが、ベンチャー企業や大学、研究機関の方々が開発のために利用頂いております。現在の取り組みの一例としてはNyokkeyの画像認識動作の開発を行っています」(合田さん)

ロボットは思った以上に進化している。夢にまで見た未来に現実が追いついているかもしれない。

とはいえ、完全ロボットのレストランにはまだ到達していない。サラダの補充や掃除は人力でやるしかない。しかしそれが不完全だからといってロボットの意味が無いワケではない。

共に活躍できる場所で共に力を発揮できる仕事に従事すればいいのではないだろうか。人間もロボットも適材適所、それだ。

川崎重工は2030年にロボット関連事業全体で売上高4000億円を目指しているという。壮大な目標に向かって邁進する川崎重工の未来とは?

「これまで川崎重工は2つのロボット関連施設を運営してきました。一般の人を対象にロボットを知ってもらう『Kawasaki Robostage』と産業用ロボットの導入を計画する企業を対象にした『西神戸ショールーム』。これに施設の性格がまったく異なる『Future Lab HANEDA』が加わりました」

「人々がロボットと出会い、社会課題の解決に活用できるようにするために試行錯誤を繰り返す。できないことを恥じるのではなく、できないことを見極めて明日のためのアイデアを得る場が『Future Lab HANEDA』だと思っています」

「いつかは大空港やショッピングセンターのフードコートをロボットレストランにしたい。そのために必要な課題をAI_SCAPEで明らかにし、改善に着手していく予定です。ロボットができることはロボットに任せ、人は人にしかできないことに取り組んでいく。川崎重工のロボット関連施設で人とロボットの共存のあり方を実感してもらえると嬉しく思います」

取材協力
川崎重工ロボットディビジョンHP
https://kawasakirobotics.com/jp/

「AI_SCAPE」
https://ai-scape.jp/

文/太田ポーシャ

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