日本の伝統技術を詰め込んだ犬殿
コロナ禍で在宅時間と寂しい時間が増えたからなのか、ペットを飼う人が増えているとよく耳にする。調べてみると確かだ。特に『一年以内新規飼育者の飼育頭数』。初めてペットを迎えたり、久々に犬や猫を飼い始めた人がコロナ前の2019年に比べ、2020年、2021年ともに増加している。
そんな中、ペットといえば犬が人気の頂点だったはずが犬の飼育頭数は減少の一途。その一方で猫の飼育頭数は2013年以来緩やかに増加しているという。
ワンちゃんが王座陥落して早や数年。しかし、ペット界を牽引していたのはずっと犬だった。
筆者も幼い頃に「フランダースの犬」に涙し、女優の西野七瀬さんも大好きなマンガ「銀牙 -流れ星 銀-」に心打たれ、ドラマ「マルモのおきて」の喋る犬にワクワクしていた。
犬は、尊い。今こそ、犬を崇めたい。やさしくしてあげたい。そんな真の犬好き達の想いを叶えてくれるアイテムがついに誕生した。
コレだ。
驚くなかれ、これは犬小屋だ。でも、ただの犬小屋じゃない。これは宮大工が職人魂を注ぎ込んだ、一年に一つしか作れない高貴で精緻な犬小屋。その名も『犬殿(いぬどの)』。
この犬殿は文化財修理を数多く手掛けてきた修理技術者監修のもと、現役の宮大工と経験豊富な板金職人、彫刻師によって製作されたかつてない最高級の犬小屋。
鎌倉時代に禅宗とともに伝わった建築様式である禅宗様の様式を基本デザインとし、良質な材料と精密な加工、繊細な彫刻など、美しい日本の伝統と技がこの犬小屋に凝縮されている。
とにかく凄いとしか言いようが無い。今まで簡素な犬小屋で暮らしていたワンちゃんにプレゼントしたら、突然の伝統建築に引いてしまうんじゃないかと心配するほど。
一体なぜこんな最高級犬小屋が誕生したのか?
手掛けたのは文化財建造物の保存修理活用設計・耐震補強設計を行なっている株式会社文化財構造計画。犬殿誕生の経緯からこだわりまで、代表取締役の冨永さんに話を聞いた。
ーー「犬殿」製作のきっかけから教えて下さい
「20年前に社寺建築の設計の練習として、身近な題材である犬小屋を設計したことがきっかけです。友人や家族に図面を見せたとき『世の中にはこれが欲しい人が絶対いる』と皆が言っていたので、いつか作ってみようと考えておりました。その想いが仕事を通じて知り合った職人さん達の力によって、今回実現した次第です」
ーーデザインや機能性でこだわった部分は?
「禅宗建築のデザインの中でも、軒が反りながら先端にむけて徐々に太くなっている納まりなど、実際の社寺で使用されている技法を用いております」
「屋根の銅板葺きは実際の銅板を用いながら滑らかな曲線になるようにと、下側だけを折り返し一枚ずつはんだで留められております」
「ただ残念ながら、機能性は普通の犬小屋とほとんど変わりません(笑)」
犬殿完成まで1年。どうやったら買える?
1棟が完成するまで1年を要したという犬殿。木造建築の接合部分を曲尺などで作り上げていく木造大工の技術「規矩術」に詳しい専門家と冨永さんが設計を担当し、それを宮大工、銅板職人、彫刻職人、石工の4人が仕上げたという。
ちなみに犬殿の販売開始は9月1日からだが、8月31日まで事前申込み受付中。9月1日以降に抽選を行ない購入交渉の順番を決定する。
ただし!犬殿は受注生産のため、運良く抽選に選ばれても手元に届くのは早くて一年後。その間、愛犬も飼い主も歳をとる。なるべくなら早めに欲しいのだが8月中旬現在、「犬殿の予約はまだありません」とのこと。
「犬殿発売の記事は世界中のメディアに取り上げられており、英語、中国語、ドイツ語、ギリシア語など様々な言語で紹介されているので近いうちに予約が入ってしまうかもしれません。お急ぎください!」(冨永さん)
犬殿は日本だけのものではない。世界が狙っている。最高級犬小屋に凝縮された日本の社寺建築技術は海外でこそ高く評価されるかもしれない。
そのため、犬殿購入サイトでは値段がドル表記になっている。冨永さん曰く「日本だけでなく海外からも広く購入頂けるようにドルで価格を設定いたしました」とのこと。
犬好きの諸君、すぐに予約すべきだ!
ちなみにここでお値段を紹介しよう。
販売価格 $150,000(税別)(約 2025 万円:1 ドル135 円換算)
犬殿のイチ押しポイント、そして一番気になるあのハナシ
写真や動画では本当の魅力は伝えきれないと冨永さんも語る究極の犬小屋「犬殿」。イチ押しポイントを聞いてみた。
「本物の技術を使ったことによる美しさと迫力ですね。模型などでは出すことができない、職人が丹精込めて手仕事で作り上げた本物としての魅力です」
「これは、製作にあたった宮大工さんをはじめとする職人さんの技術がそれぞれの分野の中でもかなり上手な技術を持つ方々の手によることで緊張感のある製品が完成したと自負しております」
ーー犬殿に続く新作の予定は?
「現状、まだこの犬殿の魅力をどう伝えるかの模索中なので、新しいものは計画しておりません。みなさんから色々なご要望をいただける段階になれば、それをもとに取り組んでいきたいと考えております」
もはや犬殿は犬の住処の用途を超えている。圧倒的な存在感の美しすぎる日本建築を身近に所有できる事実は、異次元の幸福感を実現してくれる。
愛する犬のために絶対に欲しい人も多いはず。
わかる、その気持ち。
ただ、今更いうことではないが、筆者は、
生粋の猫好きだ。
申し訳ない。
だからあえて聞いた。代表は優しく答えてくれた。
ーーちなみに猫のための作品を作る予定はありますか?
「猫殿や鳥殿はないのかとよく聞かれますね。犬殿に猫を入れたいという方がおられれば、正面の扁額を「猫殿」に替えさせていただきます(笑)」
取材協力
株式会社文化財構造計画
https://bunkoukei.co.jp
犬殿公式HP
https://inudono.com
文/太田ポーシャ