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覚えておきたい相続税の配偶者控除を利用できる条件と節税のポイント

2022.09.12

配偶者が相続する際に使える『配偶者控除』とは、どのような制度なのでしょうか?適用される条件や注意点、二次相続を踏まえた対策を解説します。配偶者控除のメリット・デメリットの両方を知り、相続税の節税に役立てましょう。

相続税の配偶者控除とは?

配偶者には相続税の優遇措置があると聞いたことはありませんか?配偶者の優遇措置を代表するものが『配偶者控除』です。まずは、配偶者控除の概要について確認しましょう。

配偶者の相続税が一定額まで非課税になる制度

配偶者控除は、亡くなった人の配偶者が遺産分割・遺贈により相続した財産に適用される制度です。配偶者控除を使うと、『1億6,000万円』または『配偶者の法定相続分に当たる金額』のいずれか多い方まで相続税が課されません。

法定相続分とは、民法で定められている遺産の相続割合です。配偶者の法定相続分は、他に誰が遺産を相続するかによって以下のように変わります。

亡くなった人から見た相続人の間柄 それぞれの法定相続分
配偶者と子
  • 配偶者:1/2
  • 子の合計:1/2
配偶者と父母
  • 配偶者:2/3
  • 父母の合計:1/3
配偶者と兄弟姉妹
  • 配偶者:3/4
  • 兄弟姉妹の合計:1/4

亡くなった人が財産を形成する上では、少なからず配偶者の支えがあったと考えられます。残された配偶者が生活に困窮しないようにする目的もあり、配偶者の相続財産には優遇措置が設けられているのです。

参考:
配偶者の税額の軽減|国税庁
相続人の範囲と法定相続分|国税庁

配偶者控除を利用できる条件

配偶者控除書類

(出典) photo-ac.com

亡くなった人の配偶者が希望すれば、必ず配偶者控除を利用できるわけではありません。配偶者控除が適用される『配偶者』の条件や、必要な手続きについて解説します。

戸籍上の配偶者である

配偶者控除を利用できる配偶者の前提条件は、亡くなった人と『法律上の婚姻関係』にあることです。婚姻届を提出している戸籍上の配偶者であれば、たとえ婚姻の期間が短くても必要な手続きをすると配偶者控除を利用できます。

反対に長い間一緒に生活をしていても、入籍していない事実婚・内縁関係の場合は配偶者として認められません。配偶者控除を利用できないのはもちろん、法定相続人の対象からも外れることを覚えておきましょう。

期限内に相続税申告書を提出している

配偶者控除を受けるためには、『被相続人(亡くなった人)の死亡を知った日の翌日から10カ月以内』に、税額軽減の明細を記載した『相続税申告書』を提出することが前提です。亡くなったことを知った日が『相続開始日』とされ、多くの人は被相続人が亡くなった日が開始日になります。

相続税の申告には、被相続人と法定相続人全員との関係が分かる戸籍謄本か、図形式の法的相続情報(子どもは実子・養子を明記)の提出が求められます。

遺言がある場合には『遺言書』、ない場合には『遺産分割協議書』も必要です。遺産分割協議書の場合は、法定相続人全員の押印と印鑑証明書が必要という点に注意しましょう。

参考:
相続税の申告の際に提出していただく主な書類|国税庁

配偶者控除を使う際の注意点

印鑑を押す手元

(出典) photo-ac.com

メリットだらけに思える配偶者控除にも、適用する前に確認しておきたい注意点があります。メリットとデメリットになり得るポイントを比較して、配偶者控除を利用するかどうかを判断しましょう。

遺産分割が確定する前は適用できない

配偶者控除が適用される『正味の遺産額』は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産に基づいて計算されます。相続税の申告期限とされる相続開始の翌日から10カ月までに分割されていない遺産には、配偶者控除が適用されません。

ただ、相続税の申告書に『申告期限後3年以内の分割見込書』を添付した場合は例外です。申告期限から3年以内に遺産を分割して『更生の請求書』を提出すると、配偶者控除が受けられます。

参考:
相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続|国税庁

新たな相続財産が見つかると修正申告が必要

相続税の申告を無事に終わらせて配偶者控除を受けてから、新たな相続財産が見つかるパターンもあり得ます。

遺産がまだあったことが後から判明すると課税される相続税額も増えるため、『修正申告』をして相続税を追加で納めなければなりません。相続開始の翌日から10カ月を過ぎている場合には、追加の相続税とともに延滞税の支払いも必要です。

相続税の申告後、新たな相続財産が見つかったにもかかわらず修正申告をせずにいると、税務調査が入って税務署から指摘される恐れがあります。税務署から修正申告の必要性を指摘されると、配偶者控除が利用できなくなる可能性に注意しましょう。

参考:
【申告が間違っていた場合】|国税庁

二次相続で負担が増える可能性も

配偶者が含まれている『一次相続』で配偶者控除を使うと、配偶者が亡くなった際に発生する『二次相続』で課税される相続税額が増える場合があります。

父母と子どもの3人家族の場合、父親が亡くなったときの一次相続では、母親と子どもの2人が遺産を相続します。遺産の総額が8,000万円とすると、基礎控除を差し引いた課税遺産総額は以下の通りです。

  • 8,000万円−(3,000万円+600万円×2※)=3,800万円

法定相続分通りに計算すると、配偶者が相続する遺産額は1/2の1,900万円です。しかし、配偶者控除を使うと相続税は課されず、1,900万円の遺産はそのまま配偶者の財産になります。

一方、配偶者控除を使わなければ1,900万円に15%の税率をかけ、50万円の控除額を差し引いた『235万円』の相続税が発生します。配偶者が実際に手にする遺産額は、1,800万円から相続税額235万円を引いた『1,565万円』です。

配偶者控除で支払わなかった相続税の分だけ配偶者の財産が増えます。二次相続した子どもに課税される相続税額が上がる可能性があるのです。

※基礎控除の計算式

参考:
相続税の計算|国税庁
相続税の税率|国税庁

二次相続に向けて配偶者ができる対策

本を見ながらノートに書く

(出典) photo-ac.com

二次相続に向けて配偶者ができる対策のポイントは、実質的に手にする遺産を減らすことです。二次相続で多額の相続税を発生させないためにも、配偶者ができる対策をチェックしましょう。

配偶者居住権を利用する

『配偶者居住権』を取得して、高額になりやすい不動産の二次相続額を減らすという手もあります。配偶者居住権は、配偶者が住み慣れた自宅に居住できる権利です。原則として配偶者が亡くなると権利が消滅するため、二次相続の相続財産に含まれません。

亡くなった人の遺産が自宅4,000万円と預金4,000万円の合計8,000万円で、相続人が配偶者と子ども1人のケースで考えてみましょう。

遺産分割協議で配偶者居住権を取得し、4,000万円の自宅を所有権2,000万円・配偶者居住権2,000万円に分割したとします。すると、配偶者が相続するのは2,000万円の配偶者居住権と2,000万円の預金です。

配偶者が死亡すると2,000万円の配偶者居住権は終了するので、子どもが二次相続で相続する遺産は配偶者の固有財産と2,000万円の預金だけです。自宅4,000万円を配偶者が相続した場合と比べると、2,000万円分の財産を減らせることが分かります。

なお、子どもが別居しているときや配偶者の資産の額などによって、当てはまらないケースもあります。

参考:
残された配偶者の居住権を保護するための方策|法務省
配偶者居住権等の評価|国税庁

生前贈与で財産を分散させる

配偶者が生きているうちに二次相続をする子どもに『生前贈与』をし、遺産になる財産を分散させる方法のも一つの方法です。

贈与税の『暦年課税』の課税方式を利用すると、贈与を受ける人1人につき1年ごとに基礎控除が適用されます。『年間110万円までの贈与』に対しては贈与税が発生しないため、複数の相続人に年間110万円を超えない範囲で贈与をして、将来的に遺産となる財産を減らしていけるのです。

ただし、相続が開始する3年以内に亡くなった人から受けた贈与は、相続税の課税対象になります。また、毎年決まった額を贈与すると約束すると、『定額贈与』とみなされて全額に贈与税が課される点に注意が必要です。

参考:贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁

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