DACを使用すると、パソコンやスマートフォンの音楽を高音質で楽しめる上、ノイズを軽減できるというメリットもあります。DACとは何を指すのかの概要からメリット、実際に製品を購入する際の選び方について確認しましょう。
DACとは
DACとは、音楽をデジタル信号からアナログ信号に変換して再生するです。購入を検討している人のために、まずはDACの役割やアンプとの違いといった概要を解説します。
DACの役割
デジタル信号をアナログ信号に変換するDAC(Digital Analog Converter)には、パソコンやスマートフォンに保存されている各種音声ファイルを、高音質で再生できるというメリットがあります。
デジタル音源を再生機器に適した信号に自動的に変換するため、楽曲データの音質を最大限に引き出せる点が特徴です。
DACを使用せずにパソコンやスマートフォンから音楽を再生すると、楽曲が持つ音質を最大限に再現できなかったり、ノイズが混じったりする可能性があります。このようなトラブルを効果的に解消するためには、DACを取り入れるのが効果的です。
アンプとの違い
アンプとは、楽器やパソコン・スマートフォンなどの再生機器から受信した『アナログライン信号』を、スピーカーやヘッドホンに向けて増幅して送出するための装置です。
アンプには信号を増幅して大きな音をスピーラーやヘッドホンへ送れる他に、音量調整や音源の切り替えができるというメリットもあります。
アンプは信号を変換ぜずにアナログライン信号をそのまま増幅するのに対し、DACは信号の性質を変換するという点が大きな違いです。
DACを利用する上で確認しておきたい要素
DACを利用する際は、音声出力に使う機器の規格や対応フォーマット、単体型なのか複合型なのかなど、確認しておきたいポイントがあります。特に押さえておきたい3要素をチェックして、アイテム選定の参考にしましょう。
音声出力に使う機器の規格
DACを購入する前に、まずDACを使いたい再生機器は何かを明確にしておきましょう。デジタル音声を出力する機器はパソコンやスマホから、CDプレーヤーやテレビまで多岐にわたります。
DACが対応する規格によって利用できる再生機器の種類が変わる点に注意が必要です。音楽を再生したい機器に対応した製品を選ばなければ、そもそも再生ができません。
接続規格はパソコンであればUSBケーブル・Bluetooth・LANケーブル、Thunderbolt、PCI Express、スマートフォンであればLightningケーブルなど、適切なものを選ぶ必要があります。
対応しているフォーマット
購入に当たっては、DACが対応しているフォーマットにも注意を払いましょう。楽曲データのフォーマットで注目したいのが『量子化ビット数(bit)』と『サンプリング周波数(kHz)』です。
サンプリングレートが大きいほど生の音に近く、量子ビット数が大きいほどきめ細かい表現を楽しめます。現在、一般的に流通している楽曲データの中で最も音質が高いのは『ハイレゾフォーマット』です。ハイレゾ音源のbit/kHzは『24bit/192kHz』となっています。
しかし、DAC側がハイレゾフォーマットに対応していなければ、せっかくのハイレゾ音源を高音質で楽しめません。ハイレゾ音源を存分に堪能したい人は、『24bit/192kHz』に対応したDACに絞って製品を選ぶとよいでしょう。
DAC単体、内蔵型複合どちらを選ぶか
DACには、単体のものとUSB-DACとヘッドホンアンプが一体になったもの、オーディオインターフェースやCDプレーヤーなどにDACが内蔵された複合型の3パターンがあります。DACを購入する際は、購入するタイプを十分に検討することが大切です。
オーディオインターフェースにDACが内蔵されている製品は、基本的にパソコンやスマートフォンを利用した音楽制作を想定しています。アナログ音源をパソコンに取り込んだり、マイクをつないで録音したりしたい人にもおすすめです。
DAC内蔵のCDプレーヤーは、テレビの高音質化にも利用できます。複合型にはさまざまな特徴があるため、用途に応じてどのDACを購入するか検討するとよいでしょう。
DACのメリット
DACの導入を検討している人の多くが、音楽をより楽しみたいと思っているでしょう。再生環境にDAC取り入れたとき、具体的にどのようなメリットを感じられるのでしょうか?
音楽を高音質化できる
DACを利用することで、パソコンやスマートフォン内に保存されているさまざまな音声ファイルを高い音質で再生できます。
パソコンやスマートフォンだけでも音楽の再生は可能です。ただ、最初から内蔵されているDACは品質がそれほど高くないケースが大半です。
できる限り高音質でパソコンやスマホの音楽を聴きたいなら、音楽用に作られたDACを別途購入することをおすすめします。近年では据え置きタイプ以外にも、内臓バッテリーが搭載された持ち運びに便利なDACも増えており、スマートフォンでの利用も便利になりました。
ノイズの影響を軽減できる
パソコンやスマートフォンは音楽の再生に特化した機器ではないため、再生時にノイズが発生しやすいという特徴があります。そこでノイズを軽減できるタイプのDACを導入する方法が有効です。
DACの中にはノイズ対策機能を備えたモデルが多くあります。リスニング中の不快なノイズが軽減されれば、快適な音楽鑑賞を楽しめるでしょう。
例えば、オーディオ製品やソフトウエア開発を行う『Aurender』が提供するミュージックサーバーは、複数のバッテリーを搭載し、電力供給用と充電用を明確に分ける仕様です。これにより、高品質なノイズ防止とジッター低減を実現しています。
参考:W20 Special Edition|Aurender Japan
DACを購入するときの注意点
DACを購入する際には、サイズや費用面に注意して購入する製品を選ぶ必要があります。設置スペースやDAC以外にかかる費用を十分に考慮して、利用シーンに合った製品を購入しましょう。
サイズが大きいモデルもある
据え置きタイプのDACには、サイズが大きいものもあります。ある程度スペースに余裕を残しておきたい場合は、置ける空間の大きさをあらかじめ測っておきましょう。パソコンの周辺で使いたいなら、コンパクトに使えるタイプを選んだ方が空間を圧迫しません。
また、バッテリー非内蔵タイプのDACだと、USBやコンセントから給電する必要があります。置きたい位置をコンセントの場所を考慮して、給電が難しそう・配線が複雑になりそうな場合はバッテリー内蔵型を選びましょう。
DAC以外の費用もかかる可能性がある
DACを使用して音楽を再生するには、専用の再生ソフトが必要です。DAC本体だけでなく、再生ソフトの購入費用もかかる可能性には注意しましょう。
パソコンを使用してハイレゾ音源を再生する場合、据え置き型のDACならスピーカーやアンプの用意も必要です。
ポータブル型のDACの場合は、イヤホンやヘッドホンを購入する必要があります。すでに自宅に他のアイテムがそろっていれば追加の投資は不要ですが、不足しているものがある場合は、DAC以外の購入費用も予算に盛り込みましょう。
DACの選び方
実際にDACを選ぶときには、対応している再生機器やフォーマットの他にも着目したい要素があります。趣味で音楽を楽しむ人向けのチェックポイントと、用途によってDTMに使う場合に調べておきたいポイントを紹介します。
対応するファイルとビットレートを確認する
DACが対応しているファイル形式の種類とビットレートは、楽曲データの再生品質に影響します。音質にこだわって音楽を楽しみたい人にとって、特に重要な要素です。
多くのDAC製品がハイレゾ音源の再生が可能な『PCM系』と呼ばれる製品であり、24bit/96kHz以上に対応していてハイクオリティーな音楽体験ができるでしょう。
市場で販売されている製品の多くはPCMに対応していますが、一部には『DSD音源』に対応しているものもあります。
DSD音源とは、CD音源のサンプリング周波数の64倍という精度で記録され、1ビット単位で量子化を実行する音源のことです。『DSD2.8MHz』や『DSD5.6MHz』に対応する製品が展開されており、アナログ音源に近い再現性が楽しめます。
DACを選ぶときは、PCMだけでなくDSD音源が再生可能かどうかも確認しておくとよいでしょう。
据え置きかポータブルかを決める
DACの形状は『据え置き型』と『ポータブル型』の2種類に分けられます。
据え置き型は屋内利用を想定している方式で、室内に設置し外部から電源供給を受ける設計になっています。一方、ポータブル型は屋外での利用が想定されており、バッテリーを内蔵しているのが特徴です。
ただ、据え置き型の製品の中には、コンセントではなくUSBからの給電が可能なものもあります。室内利用が中心で給電に問題がないなら、USB給電に対応しているものがパワフルでおすすめです。
ポータブル型は外出先で音楽を聞きたい、室内でも置き場所を固定せずに音楽鑑賞を楽しみたいという人に適しています。
入出力端子に着目する
どのような入力端子を備えているかも、DACを選ぶときにチェックしたいポイントです。使用する機器によって、ケーブルに対応するDACの端子は異なります。
DACを導入したい再生機器でどのようなケーブルを使っているのかを事前に調べ、対応している入力端子を備えたDACを選びましょう。代表的な端子には『同軸・光ケーブル』『USBケーブル』『LANケーブル』『HDMIケーブル』などがあります。
DACの導入とともに新たなプレーヤーを買う場合は、ケーブルの種類までチェックしておくと安心です。
用途によってはアナログ音声出力もチェック
DACをDTM用に使ったりプロ仕様の機器とも接続したかったりする場合は、アナログ音声出力の有無をチェックする必要があります。アナログ音声出力には、『FIX』と『VARIABLE』の2種類があるため、どちらを利用したいのかも事前に決めておきましょう。
FIXとは『固定出力』のことで、一定の音量で出力されるのが特徴です。一方のVARIABLEは『可変出力』のことで、再生機器のリモコンを使用した音量調節に対応しています。
構成/編集部