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「変化に対応できるものだけが生き残る」日本最古の遊園地・浅草花やしきの西川豊史社長が紡ぎ出すアミューズメント施設の新たな価値

2022.08.25

東京有数の観光地・浅草といえば雷門があり、仲見世を通って浅草寺へ。これが定番の観光ルートだろう。そして浅草寺からさらに足を延ばすと見えてくるのが、日本最古の遊園地「浅草花やしき」だ。開園はなんと嘉永6年(1853年)。あのペリー来航があった年までさかのぼる。

浅草花やしき全景。敷地面積は東京ドームの約8分の1の5800m²程度だ。

苦手分野の飲食店を手放して、得意分野のキャラクタービジネスを強化

2022年8月7日、花やしきは開園169年を迎えている。日本の激動の時代とともに歩み、さまざまな試練や転換期を経て、2004年にはバンダイナムコグループが事業を継承した。これをきっかけに花やしきは古くなった施設の建て替えや整備に取り組み、入場者数は順調に伸びていたという。さらに2010年代には、インバウンド消費によって浅草全体の経済が活性化したこともプラスにつながった。

だが順調だった花やしきの経営は、新型コロナウイルスの影響によって大きくブレーキがかかる。そして2020年4月には後に現社長となる、バンダイナムコアミューズメントの西川豊史氏が花やしきの非常勤取締役に就任する。当時は初めての緊急事態宣言が発令されており、花やしきをはじめとする日本全国のアミューズメント施設は一斉休業中。大きなマイナスからのスタートだった。

西川豊史氏●ナムコ入社後はアーケードゲームなどの営業を担当。株式会社花やしきの非常勤取締役を経て、前社長の退任によって2021年4月より代表取締役に就任する。

「社長に就任して、まず取り組んだのは経営の立て直しでした。コロナ禍で厳しい状況が続いているわけですから、収益性が上がっていないところはやめていかなきゃいけない。例えば飲食は花やしきの得意分野ではないので、直営で経営していた飲食店は手放しました。

また以前だとゲートにお土産店舗を併設していましたが、今はグループコンテンツの『ガシャポンのデパート』と『一番くじ公式ショップ』に変えています。コロナの影響で遠方からのお客様が減っていることもあり、現在は近場に住んでいる若い層の来客がすごく多いんです。そうなると広いお土産屋さんはニーズに合ってない。またキャラクタービジネスはバンダイナムコグループのストロングポイントでもあるので、そういった部分を活かしていければいい」

花やしきの出口に直結している「ガシャポンのデパート」

浅草の街を回遊する着物姿の若い女性を呼び込むための秘策

西川氏が語った“近場に住んでいる若い層”という言葉。実は現在の花やしきを語るうえで、重要なキーワードとなっている。現在、遠方からの客が減っている浅草の街で大きな影響力を持つのは、都内近郊から訪れる若い世代。中でも最近は着物や浴衣を着て浅草のグルメスポットを探索しながら、浅草の街を回遊する女性客の存在感が強くなっているのだ。そんな彼女たちが重視するのはやはり、インスタを中心とした“映え”の要素。日本最古の歴史を持つ花やしきは、唯一無二の映えスポットとしてのポテンシャルを秘めていた。

「浅草には、着物や浴衣を着て写真を撮る若い女性がたくさん訪れています。そういった方々を花やしきにも呼び込むためには、どうしたらいいのか? そこで縁日コーナーをリニューアルしました。また平日限定ですが、メリーゴーランドなど営業をストップする時間を設けて、好きに写真を撮ってもらえるようにしました。今は昭和レトロブームと言われていますが、花やしきには開業169年の歴史による、つくられたものではない本物のレトロ感がある。そういった写真をSNSにアップしてもらえれば、花やしきにとっても有効なPRになります。花やしきにお客様が来ていただくことで、地域の貢献にも繋がりますから」

花やしきのメリーゴーランド

ちなみに、花やしきの一番人気アトラクションは日本に現存する最古のコースターといわれる「ローラーコースター」。浅草の建物をスレスレで走り、昭和をモチーフにした民家のお茶の間をすり抜けていく。その独特な世界観は、決して他では味わえない唯一無二のものだ。こちらのローラーコースターでもメンテナンス期間を利用して、すり抜ける民家のお茶の間で自由に写真撮影ができる『ローラーコースターお茶の間フォト』を企画。こちらも大きな話題となった。

ローラーコースターお茶の間フォト
※現在は終了しています

「やはり遊園地の大きな課題は平日の集客です。これまでは修学旅行などの団体客が来てくれましたが、コロナ禍でそれも少なくなりました。そこで平日にお客さんが少ないことを利用して、フォトスポットとしてお客様を呼び込む。ローラーコースターも本来メンテナンス時期はマイナス要素なのですが、それを逆手にとってフォトスポットとして打ち出しました。実はこれらのアイデアは現場からのものですが、すごくいいと思いますね」

浅草寺に寄った後に花やしきで遊ぶ、新たな定番コースを目指したい

西川氏のこのような取り組みが功を奏し、コロナ禍で落ち込んだ収益は現在回復しつつある。だがアフターコロナを見据えて、やらなければいけない改革はまだまだあると語る。

「ここの強みは東京の観光地の一角にあること。浅草に観光にきたら雷門と仲見世を通って浅草寺に行って、その後花やしきで遊ぶ。それが定番になるのが、我々の目指すところだと思っています。現状ですとまだまだ浅草寺で終わっちゃう人も多いので、そういった人が足を運んでみたいと思うような、バンダイナムコの強みだけではなく花やしきとしてのアイデンティティを活かした価値を提供できれば、花やしきはこれからも生き残れる。その価値を提供するために、さまざまな変化が必要だと考えています。もちろん地域の方々からも愛される施設になりたいですね」

ナムコ創業者、中村雅哉氏はバンダイとナムコの経営統合時に「強いものでも賢いものでもなく、変化に対応できるものだけが生き残れる」という言葉をよく口にしていたという。

もともと花やしきも菊細工などの花園(かえん)からスタートし、動物園や見世物小屋を経て、現在の形へと変化した。花やしきの長い歴史は、時代に応じた進化そのものなのだ。

2023年の8月7日、花やしきは記念すべき170周年を迎える。バンダイナムコのイズムを持つ西川氏は、時代に変化に適応したどんな仕掛けを用意しているのか? 今から楽しみに見守りたい。

取材・文/高山 惠

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