白、ロゼ、赤ワインに次ぐ、第4のワインとして話題なのがオレンジワイン(スキンコンタクトワインまたはアンバーワイン)。お店でもよく見かけるようになりましたが、白やロゼ、赤ワインとは何が違うのでしょう?
オレンジ入りワイン?オレンジワインの基礎知識と、美味しい味わい方について、シニアソムリエのまみちゃんこと植田真未さんにレクチャーしていただきました!
オレンジワインって何?【まみちゃんのオレンジワイン講座】
――オレンジワインの基礎について教えてください。
まみちゃん はい!では、最初にオレンジワインは、果物のオレンジとは関係ありません。
2004年に開催された自然派ワインの祭典に、白でもロゼでも赤でもないワインが年々増えてきているのを見た、イギリスのワイン輸入業者のデヴィット・A・ハーヴェイ氏が新しいカテゴリーとして広めた造語です。
オレンジワインの代表的生産地であるジョージア(グルジア)ではアンバーワイン(琥珀色のワイン)と呼ばれていて、その製法は、一説には“世界で最古”と言われています。
造り方がシンプルだから素材が命!
まみちゃん ワインはブドウからできたお酒ですが、ほかのお酒に比べると、造り方は案外シンプルです。あらゆるアルコールは糖を酵母が分解すると生成されます。ブドウはもともと甘く、最初から分解されやすい果糖やブドウ糖なので、ぶどうの果皮に付着している酵母がブドウの糖分を分解してワインへと変化します。
つまりぶどうを発酵させるだけで、ワインになるので、ワインの仕上がりはブドウの品質にかかってくるのです。「ワイン作りは8割までブドウで決まる」とも言われます。
オレンジワインの造り方の前に、赤・白・ロゼのワインの造り方を解説しましょう。ワインは、ものすごく大雑把に言えば、白ブドウから白ワイン、黒ブドウから赤ワインができます。
白ワインは白ブドウを収穫したら、すぐに絞って、ぶどうジュースだけを発酵させれば白ワインになります。
赤ワインは、黒ブドウを粒ごと、ときには房ごと、果皮も種も一緒に発酵させます。発酵後、絞って、果皮と種を取り除き、ステンレスタンクや樽で熟成し、下に沈んだ沈殿物を取り除く作業を行った後、濾過処理をしてビンに詰めればできあがりです。
ロゼワインについては製造法がいくつかありますが、一般的には、赤ワインを作るときと同じように黒ブドウを粒ごと発酵タンクに入れて、数時間~数日間、好みのロゼ色や味になったところで発酵中のジュースをタンクから出し、絞って果皮と種を取り除いて、もう一度発酵を続けるとロゼワインになります。果皮や種と一緒に置く時間が短いので、赤ワインのように濃い色、渋い味わいにはなりません。
さてさて、お待たせしました!オレンジワインの造り方ですが、使うのは白ブドウ、造り方は赤ワインと同じです。
白ブドウの果皮や種も一緒に発酵させるので、皮や種からの抽出物も多く、色や香りが強くなり、一般的な白ワインとは違った渋味を伴う複雑な味わいのワインになるのです。それがほとんどの場合オレンジ色に近いので、オレンジワインという名称になりました。
どうして今、オレンジワインなの?
――オレンジワインがブームになるきっかけは何だと思いますか?
まみちゃん 毎月お薦めワインを@DIMEでご紹介させていただいていますが、「自然派」とか「エコ」という言葉が良く出てくると思います。ワインの世界でもオーガニックとか、自然を求める傾向があり、その中でオレンジワインが注目されはじめました。
オレンジワインの発祥の地はジョージアで、8000年前から造っていますが、現在のオレンジワインのブームのきっかけを作ったのはイタリアの生産者です。
世界的ブームのきっかけはイタリアから
イタリア、フリウリ州のヨスコ・グラヴナーが自分の理想とするワイン造りを探し求め、知人に紹介されたジョージアの伝統的なワイン造りに感銘を受けて、ジョージアからアンフォラ(現地語ではクヴェヴリ)を取り寄せてワインを造ったのが1998年です。
その後、すぐ近所に住むスタニスラオ・ラディコンとともに、一世を風靡するオレンジワインを世に送り出したところ、ジャーナリストから高い評価を受け、イタリアの自然派ワイン生産者たちに瞬く間に広まります。
ちょうど同じころ、ジョージアワインが世界に流通し始め、元祖オレンジワインが手に入りやすくなり、世の中にオレンジワインが知られるようになって、ヨーロッパの国々はもちろん、さまざまな国でもオレンジワインが造られるようになり、一気にオレンジワインが一般的になった、という感じです。
ついでに言うと、オレンジワインの製法は、アンフォラという素焼きの甕にぶどうをそのままいれて、自然に発酵が進んで、オレンジワインになります。果皮も種も一緒に発酵しているおかげでワインが強くなり、酸化防止剤の使用量もかなり少なくてすみます。
ワインに使われる酸化防止剤は、人間の身体に影響のないもので、安全が保障されてはいますが、一般の方へのイメージがあまり良くありません。酸化防止剤が少ない点も、流行を後押しした理由の一つだと思います。
オレンジワインの代表的な産地とその特徴
――代表的な産地やブドウの品種とその特徴を教えてください。
まみちゃん オレンジワインといえば代表的なワイン産地はジョージアですが、ジョージアの歴史がワインの歴史ともいえます。
今から8000年近く前、コーカサス地方、現在のジョージアでは、土中に埋めたアンフォラ(現地語ではクヴェヴリ)という素焼きのかめにブドウを入れ、ワインを発酵させていました。このワインの醸造法は、一時衰退しますが現在は復活し、2013年にユネスコの無形文化遺産に指定されています。
ジョージアの代表的な産地は、最大産地である東部の「カヘティ」地方と、西部の「イメレティ」地方です。
代表的なブドウ品種は、
①ルカツィテリ……ジョージアで最も広く栽培されているブドウ品種。「梗が赤い」という意味。香りは控えめですが、力強いワインになります。
②ムツヴァネ……果実のアロマが特徴的なアロマティック品種。心地よい酸があるので、ルカツィテリにブレンドされることもあります。
ジョージア以外では、イタリア、フランス、オーストラリア、南アフリカ、日本でも作られています。ブドウ本来の香りの高いヴィオニエやゲヴェルツトラミネールや、日本では甲州種からもオレンジワインが造られています。
白と赤のよいところ取りの「魔性?」のワイン
まみちゃん ナチュラルブームもありますが、あの輝くオレンジ色の美しさがとても魅力的ですし、味わいも個性があって、新しいタイプのワイン!という面白さがオレンジワインブームをけん引したと思います。
オレンジワインはさわやかな白ワインの魅力と同時に、赤ワインのような渋みや苦みも併せ持っている、味わい深いワインです。生産地やブドウ品種によってさまざまなタイプのオレンジワインがありますが、とにかく、美しさにひとめぼれして、アロマティックな香りに酔いしれ、スパイシーさや苦みの虜になる、魔法(魔性?)のワインです。
よく、オレンジワインは「フードフレンドリーなワイン」と言われますが、白と赤の両方の良さがあるので、前菜からメイン、食後のデザートまで、楽しんでいただけます。カレーとかにも合うんですよ。
――カレーにワイン!ほかにまみちゃんお薦めの食べ物はありますか?
まみちゃん 一般的にワインに合わせることの少ない料理が面白いと思います。酸っぱい料理や最近はやりの辛い料理など。たとえば韓国料理とか、酸辣湯とか、激辛チキン!などはいかがでしょうか?
――冷やすのと常温とどちらがお薦めですか?
まみちゃん 温度を下げるとフルーティーさが増して白ワインのように、温度を上げると渋みが出て赤ワインのように楽しめるのも、オレンジワインの面白さなので、ぜひお試しください。
――まみちゃんが提案するオレンジワインならではの楽しみ方はありますか?
まみちゃん ブームとは言えまだまだ飲んだことがない人は多いと思うので、パーティなどで白ワインと一緒にオレンジワインを冷やしておくと、話題にもなるし、美しくて絵になるので良いのではないでしょうか。
――最後にお薦めオレンジワインを紹介していただけますか?
まみちゃん では下記3本をご紹介します。
シャトー・メルシャン 笛吹甲州グリ・ド・グリ
一番好きなオレンジワインです。リンゴのコンポートのような甘美な香りとふくよかな味わいが最高です。
セドライア・オーガニック・オレンジワイン
フランスの高級ワイン産地ボルドーがあるアキテーヌが産地。セミヨン種を100%使用した贅沢なオーガニック・オレンジワインです。
ジョージアン・サン・ムツヴァネ
お値段もお手頃ですし、優しいタイプのオレンジワインなので、初めてジョージアのオレンジワインを飲む方にオススメです。
――ありがとうございました。
オレンジワインの魅力を聞いていたら、飲みたくなってしまいますね!ワインデマミでは上記お薦めオレンジワインの通販も行っているそうです。価格はシャトー・メルシャン 笛吹甲州グリ・ド・グリが3010円、セドライア・オーガニック・オレンジワインが2068円、ジョージアン・サン・ムツヴァネは1861円、(税込・送料別)です。週末は少し気分を変えて、オレンジワインで乾杯しましょう!
Wine des Mami(ワインデマミ)代表取締役 植田真未
平成30年度 優良経営食料品小売店等表彰事業最優秀賞 農林水産大臣賞 受賞 (茨城県初、ワインショップとして日本唯一)
日本ソムリエ協会前茨城支部長、日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ、ワインインストラクター、利き酒師、マスター・オブ・チーズ、パーティーコーディネーター、インターナショナルバーテンダーの資格を取得。WebやFacebookなどでワインを楽しむイベントなどを随時開催中。
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文/植田真未・柿川鮎子
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