家庭の照明をLED電球に交換すると、電気代を安く抑えられます。ただし交換にはコストがかかるため、本当にお得になるのか、気になる人も多いでしょう。LED電球の特徴や、交換後の電気代の比較、購入時の注意点を解説します。
LED電球の消費電力は?
LED電球の最大の特徴は、消費電力の低さにあります。他の電球よりもずっと少ない電力で、同じ明るさを出せるのです。LED電球の消費電力が低い理由や、消費電力と明るさの関係を見ていきましょう。
明るくても消費電力は低い
電気製品の消費電力を表す単位は『W(ワット)』です。Wの数値が高い(消費電力が高い)製品ほど、強いパワーを持っていることになります。
電球の場合は、Wの数値に比例して、明るくなると考えてよいでしょう。ただしLED電球と他の電球では、同じ明るさでもW数が大きく異なります。例えば、40Wの白熱電球と同じ明るさを持つLED電球の消費電力は、5~6W程度です。
実は、電球に電気を通したとき、全てのエネルギーが『可視光線(目に見える光)』になるわけではありません。エネルギーの一部だけが可視光線となり、残りは赤外線や紫外線などの見えない光や、熱に変わります。
エネルギーが可視光線に変換される割合を『変換効率』といい、白熱電球で約10%、蛍光灯で約20%です。一方のLED電球は、30~50%の変換効率を実現しています。LED電球は、エネルギーを効率よく可視光線に変えられるため、消費電力が低い割に明るいのです。
消費電力と明るさの関係
変換効率が同じ電球の場合は、W数を参考に明るさを判断しても特に問題はありません。消費電力が40Wの白熱電球よりも、60Wの白熱電球の方が明るいことは、ひと目で分かります。
しかし変換効率が明らかに高いLED電球の場合、他の電球との明るさの比較が難しくなります。40Wの白熱電球と、6WのLED電球が同じ明るさといわれても、ピンとこない人もいるでしょう。
変換効率が異なる電球間で、明るさを比較するためには、消費電力ではなく実際の明るさを示す数値『lm(ルーメン)』が参考になります。
ただしW数での比較に慣れている人が、lmの数値を見ただけで明るさを判断することは困難です。混乱や間違いを防ぐため、LED電球のパッケージにはlmと共に『40W相当』のように、同じ明るさを持つ白熱電球のW数も記載されています。
購入の際は、実際の消費電力だけでなく、白熱電球に相当するW数も参考にするとよいでしょう。
LED電球への交換で抑えられる電気代
自宅の照明をLED電球に交換すると、どのくらい電気代が安くなるのでしょうか。白熱電球と蛍光灯、それぞれのケースを見ていきましょう。
白熱電球からLED電球に変える場合
照明にかかるおおよその電気代は、以下の計算式で求められます。
- 『消費電力(kW・キロワット)×1日の使用時間×電力単価(円/kWh・キロワットアワー)』
この式を基に、電球の個数や使用日数などをかけ合わせれば、1カ月当たりや1年当たりの電気代が分かります。
電力単価とは、「公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会」が定める、電気代計算の目安となる数値です。消費電力が1kW(キロワット)の電気製品を、1時間使用したときの電気代を表します。2022年7月22日に改定され、従来の27円から31円になりました。
計算式を基に、40Wの白熱電球を6WのLED電球に交換したと仮定して、1年間の電気代を比べてみましょう。1日の点灯時間は6時間とします。
- 白熱電球:0.04kW×6時間×31円/kWh×365日=2715.6円
- LED電球:0.006kW×6時間×31円/kWh×365日=407.34円
小さな電球を1個交換するだけでも、年間の電気代を約2,300円減らすことが可能です。
参考:カタログなどに載っている電気代はどのようにして算出するのですか?|公益社団法人 全国家庭電気製品 公正取引協議会
蛍光灯からLED電球に変える場合
蛍光灯は白熱電球よりも変換効率が高いため、同じ明るさで比較すると、消費電力が低く抑えられています。40Wの白熱電球に相当する蛍光灯の消費電力は、約10Wです。
上記と同じ条件で計算すると、1年間の電気代は約680円となります。
- 0.01kW×6時間×31円/kWh×365日=678.9円
白熱電球ほどではありませんが、LED電球の約407円と比べるとやや高いことが分かるでしょう。もし家中の蛍光灯をLED電球に交換したら、節約効果はより大きくなります。
消費電力の他にもあるLED電球のメリット
LED電球には、消費電力以外にもさまざまなメリットがあります。交換してよかったと思える、主なメリットを紹介します。
寿命が長く電球交換の手間も省ける
LED電球は、他の電球とは比べ物にならないほど、長持ちします。経済産業省の資料によれば、各電球の寿命の目安は以下の通りです。
- 白熱電球:1,000時間
- 蛍光灯:6,000~1万時間
- LED電球:4万時間
LED電球は白熱電球の約40倍、蛍光灯の約6.5~4倍も寿命が長く、1日10時間点灯したとしても10年以上は交換の必要がありません。電球の購入費用や交換の労力を減らせるうえに、ゴミの削減にもつながるでしょう。
白熱電球や蛍光灯より紫外線が少ない
白熱電球や蛍光灯を使っていると、照明のカバーの中に虫の死がいが付くことがあります。照明に虫が寄っていくのは、明るいからだけではなく紫外線が出ていることが原因です。
LED電球の紫外線量は、蛍光灯と比べて1/200と、ごくわずかです。紫外線を出すタイプもありますが、用途が限定されているため、家庭用の製品はほとんど紫外線を出さないと考えてよいでしょう。
紫外線を出さないことで、虫が寄りにくくなる他、衣類や壁紙などの色あせを軽減する効果も期待できます。
導入コストは消費電力の削減で元を取れる
LED電球は高価なため、交換をためらう人は少なくありません。経済産業省の資料を見ても、価格に大きな開きがあることが分かります。
- 白熱電球:100~200円
- 蛍光灯:700~1,200円
- LED電球:1,000~3,000円
LED電球1個の値段で白熱電球が10個買える計算になり、ためらうのも無理はありません。ただし、今後の電気代や寿命を考えると、早めにLED電球に交換する方がお得です。
先述の通り、白熱電球を1個交換するだけでも、1年で約2,300円電気代が安くなります。1,000円の電球代を払っても、1年もたたないうちに元が取れるのです。
LED電球のデメリットは設置場所の工夫でカバー
LED電球は他の電球と発光の仕組みが異なるため、使い方に注意が必要です。LED電球ならではのデメリットと、弱点をカバーする方法を見ていきましょう。
放熱できる場所を選ぶ
LED電球には、半導体などの電子部品が含まれています。一般的に電子部品は熱に弱いため、熱がこもりやすい場所で長時間使用すると寿命が短くなるおそれがあります。
家の中で熱がこもりやすい場所といえば、浴室です。入浴時には室内の気温が急に上がるうえに、湿度も高いので熱を下げられません。浴室でLED電球を使用する場合、他の場所で使うときよりも早めに寿命がくると考えておくとよいでしょう。
なおLED電球自体は熱くなりにくいため、気温が上がらない場所や放熱できる場所で使う分には、特に問題ありません。
できるだけ照らしたい場所の真上へ
LED電球は、設置場所によっては白熱電球や蛍光灯より暗く感じることがあります。白熱電球や蛍光灯は全方向に光を照射しますが、LED電球は光の照射角度が狭く電球の真下以外の場所では明るさを感じにくいのです。
クローゼットの中やトイレなどの狭い空間を照らすときには適していますが、リビングルームのような広い空間では部屋の隅が暗くなることもあり注意が必要です。
LED電球を使った照明器具を新たに設置するときは、最も照らしたい場所の真上に持ってくるとよいでしょう。
参考:光の広がり方(配光)と使い分け| JLMA 一般社団法人日本照明工業会
広範囲を明るく照らすタイプも
近年はLED電球の改良が進み、白熱電球と同等の照射角度を持つ『広配光』型の製品も登場しています。広範囲を明るく照らせるので、リビングルームの照明器具としても十分使えます。
自宅の照明全てをLED電球に交換すれば、大幅な節電が可能です。無理のない範囲で構わないので、LED電球の導入を検討してみましょう。
構成/編集部