長野県駒ケ根市には日本一高所の「駅」があります。標高2612m。中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイの千畳敷駅です。こんな高いところにあるのに通年営業していることに、まず驚かされます。しかも、目の前に広がるのは桁外れの絶景。一生のうち一度は見ておくべき景色だと、強くオススメします!
天上の遊歩道を気軽に散策
千畳敷駅は中央アルプス宝剣岳(2931m)の山頂を間近に望み、目の前には氷河期に削られたお椀型の地形「千畳敷カール」が目前に広がっています。しかも、カール内は高山植物の宝庫としても知られ、夏から秋なら遊歩道をハイキング気分で散策できるのです。
ちなみに国土地理院の資料によると、日本でカールと呼ばれる地形は北海道、新潟、富山、山梨、静岡、岐阜、そして長野の7道県に計17か所。いずれもそこに行くだけで大変なところばかりですが、千畳敷はロープウェイが整備されているので、例外中の例外といえます
バスとロープウェイを乗り継ぎ2612mへ
さて、そのロープウェイの麓側乗り場は、標高1662mのしらび平駅から。列車利用で行くなら、JR飯田線駒ヶ根駅から路線バスに乗り、菅の台バスセンター経由で約45分。マイカーなら中央自動車道駒ケ根ICから菅の台バスセンターまで約3分。ここで前述の路線バスに乗り換えます(しらび平駅までの山道は指定車・許可車以外通行止のため)。
旅の醍醐味は、バスに乗ったところから始まります。出発してしばらくすると、道はかなり細くなり、曲がりくねった道をもろともせず、ぐんぐん高度を上げていきます。バス同士のすれ違いは難しく、上下の運行スケジュールを確認しつつ、対向車を待機所でやり過ごしながら進みます。安全運行とはいえ、初めて乗る人はかなりスリルを感じることでしょう。
景色を楽しむ余裕があれば、山の上から次第に降りてくる紅葉の様子を観察したり、途中の檜尾橋付近の滝などがポイントになります。
もうひとつ、マニアックな楽しみ方としてバス前方に陣取り、運転士さんの高度なドライブテクニックを拝見するのもアリです。
紅葉前線と滝のコントラスト
ロープウェイからの景色は圧巻。本格的な秋が近付くにつれダケカンバやナナカマドを中心に山がきれいに色づきます。景色を楽しむという点では前方の窓からの眺めが最高です。また、途中の日暮の滝、大滝、そして日本最大級の連瀑・中御所三十八滝の眺めも、それに花を添える形で楽しめます。
ロープウェイを降りたら即、絶景!
クライマックスは千畳敷駅に到着し、建物の外に出た瞬間です。目の前に広がる千畳敷カールは夏には天気が良ければ澄み切った青空と緑のコントラストが眩しいほどに広がります。
それが秋になると一変、カール内の高山植物の草紅葉が始まり、赤や黄色に彩られていきます。夏と秋の天気の良い日なら、カール内の遊歩道(1周約40分)を運動靴でも歩くことが可能なので、ぜひとも体験していただきたい。
ただし、最高気温は真夏でも18~20℃ほどなので、防寒着はしっかり準備しておくことを忘れずに。
また、強い日差しや天気の変わりやすさに対応するため、レインウエアや帽子などを携行すると、安心安全な散策になります。
地質学に興味ある方は、中央アルプス国定公園のHPが参考になりますよ。
紅葉の時期は混雑必至。お得なきっぷも利用しよう
参考までに紅葉の目安は、千畳敷カール付近なら9月中旬~10月上旬、ロープウェイ周辺は10月上旬~下旬、バス路線は10月中旬~11月上旬。
もちろんこれだけの絶景を気軽に楽しめる分、人も押し寄せるため、バスやロープウェイに乗るための待ち時間も十分に考慮する必要があります。混雑を避けたい場合は、早朝に出発し、昼までに降りるのがオススメ。中央アルプス観光では、
・菅の台バスセンターで並ぶ必要なく
・ロープウェイは始発から3便以内の乗車
・オリジナルグッズプレゼント
を確約した「早朝指定ロープウェイきっぷ」を1日40組限定でネット販売しています。待つのが嫌いな方は要チェックです。
(催行日:9月17日(土)~10月10日(月・祝)の土日祝)
なお、日帰りでなく千畳敷駅併設のホテルに宿泊することも可能なので、じっくり滞在したい方、夜の星空観賞に興味がある方はぜひ!
取材・文/西内義雄
協力:中央アルプス観光