巫女さんが新たなコミュニティーを形成
コロナ禍は奇しくも「シン・働き方改革」を敢行してしまったのかもしれない。今やリモートワークも定着し柔軟なワークスタイルが支持されるようになった。さらに注目されているのが副業。
就職・転職などの研究調査を行なうJob総研によると、コロナ禍を機に副業を始めた社会人は4割超、今後始めたいと思っている人も約9割いるという。
しかも、2022年7月には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」改定を発表し、副業・兼業の普及促進を進めている。
さまざまな副業の中でもPCやスマホだけを使い、在宅で稼げる仕事が特に人気らしいが、巷では意外な副業を始める人が急増中。その副業とは…
皆さんご存知の『巫女さん』だ。
ここ数年、副業として挑戦する方はもちろん、アーティストや個人事業主が本業の幅を広げる為に巫女の精神や文化・所作を学ぶことも多いという。
そんな巫女さんの卵をサポートする学校が大阪にある。一般社団法人巫女文化伝承協会が主催する、その名も「巫女さんスクールつむぎ」。
短期間で巫女さんの所作や歴史なども学べるほか、巫女資格も得ることができる。今回、協会代表理事の桃山きよ志さんに巫女さんスクール、巫女さんの副業人気について話を聞いた。
ーースクールはどういう経緯で誕生したのでしょうか?
「以前はインバウンド向けもあり巫女体験をやっていたんですが、コロナ禍によりすべてがストップ。しかし、兼ねてより構想していたスクール化の企画が再度浮上し、昨年3月に正式に立ち上げることとなりました。今年の5月には一般社団法人巫女文化伝承協会を設立し、今に至ります」
ーースクールではどのような授業をおこなっているのでしょうか?
「スクールは初級、中級、上級とあり、初級は巫女の初歩、中級はお祓事が形の上でできるところまで、上級は巫女を育てる側になれるように教えています。どれも座学と所作があり、巫女や神道の歴史から神棚の祀り方などを学び、所作では歩き方、装束の着方、祓詞の奏上、鈴祓いなど多岐に渡ります」
いわゆる茶道や華道のような習い事と同じような形式。生徒の年齢層は下は中学生から、上は75歳までいらっしゃるとか。また、アメリカ人や中国人、芸能関係の方からもアプローチがあるという。
去年の倍のスピードで増えている巫女さん志望者
巫女さんを副業にしたいという方はどれだけいるのか?その人気ぶりを桃山さんにお聞きすると…
「スクールをスタートして約1年半ですが総生徒数は110名ほど。去年より今年の方が多い印象です。現在全国に5ヶ所のスクールがあるんですが東京校は前年の倍のスピードで増えていると思います」
ちなみにスクールには本業や趣味を活かすコミュニティもあり、農業好きチームは巫女さんが作ったお米という付加価値を付けてイベントで販売したり、お針子チームは捨てる着物をお祓いしてエレガントなワンピースに作り替える「MIKOSAN」ブランドを立ち上げ、宮大工とのコラボで神棚コーディネーターとして活躍するなど多岐にわたる活動を行なっている。
巫女さんの中には良縁を願う保護猫・保護犬の譲渡会を企画し、ボランティア活動をしている方も。
つかねこ動物愛護環境福祉事業部(@tsukaneko222)
巫女さんスクールは副業として稼ぐだけではない、新たな趣味や人生の楽しみ、お互いを助け合うコミュニティを提供する場としても存在している。
ーー受講生が増えている要因はなんだと思われますか?
「風の時代と言われています。自由に選択して生きていく時代であると同時に、根無し草では風に吹き飛ばされてしまいます。日本の文化を大切にし、巫女という学びの共通点をもつ仲間で集うコミュニティを軸足とし、奪い合う関係ではなくお互いを応援し分け合うような関係を求められているのかもしれません。コロナ禍によってそれがより顕著になっているのかもしれません」
ーー修了後は巫女資格を与えられるそうですが?
「はい、巫女の資格があるということをご自身のプロフィールに書いて頂き、巫女×本業でどんどん活動して頂きたいと思います。ただ、すぐに神社で雇われることを目的としておりません。人手が足りないから手伝ってほしいという神社さんからの要望に応え、活動の先に新しい仕事が生まれることを望んでおります」
ーースクールに通う生徒さんに期待することは?
「現在、地方へ行くほど無人の神社が増えています。神主さんひとりで20神社を管理されている方も。それほど地方は疲弊しております。当然、巫女を雇える神社は数えるほどしかありません」
「スクールでは地方にも拠点を置き、巫女として学びながらも経済が回っていくような形を考えています。副業としての巫女もありつつ、無人の神社や人手の足りない神社のお手伝いをボランティアでできたらと考えております。大きな神社ではなく、名もなき神社を大切にしていきたいと思っています」
話題の「日本酒巫女ナンバーワン総選挙」とは?巫女の未来を語る
巫女さんの副業を調べていたら気になるワードが目に飛び込んできた。「日本酒巫女ナンバーワン総選挙」。
これは日本酒文化を世界へ発信する「nahorahi なおらい」が主催した企画で「巫女さんスクールつむぎ」で学ぶ方々も立候補している。投票自体は既に終了しているが、桃山さんに総選挙にかけた想いについても聞いてみた。
「日本酒が好きな巫女で集まり、nahorahiという日本酒を文化ごと世界へ発信していくことを目的としているビジネスチームとのコラボ企画です。ナンバーワンになった巫女さんにはモデルとしてイベントやチラシなどで活躍して頂き、日本酒巫女BARでお客様にお神酒を注ぐこともあるかもしれません」
ーー総選挙は今後も行なう予定ですか?
「今後も日本酒文化を国内外に広めていきたいと思っていますが、総選挙は未定です。しかし、文化を広めるために必要であり引き続きオファーがあれば今後も続けてまいりたいと思っています」
最後に「巫女さんスクールつむぎ」が目指す未来について聞いた。
「10年かけて世界にもスクールを展開していきたいと考えております。日本の国の素晴らしさを伝え、日本へのリスペクトがさらに増えていく活動をしていきたいと考えています」
「まずは今までにない新しい巫女像をつくり、お互い助け合うコミュニティをつくる。文化を学ぶだけでなく、経済活動もする巫女さんのコミュニティ活動をしていきたいと思っています。そして一番の目的でもある『日本を守る』というところへ、すべての活動を結び付けていけたらと考えています」
取材協力
巫女さんスクールつむぎHP
https://momoyama-shachu.com/miko/
文/太田ポーシャ