運転が苦手な方も必見!運転が上手くなるコツも教えてもらった
今年のお盆も渋滞が凄かった。コロナ対策の行動制限が解かれ、3年ぶりの過ごしやすい夏。久々の渋滞に巻き込まれた人も多いのではないだろうか。
日本道路交通情報センターによると8月15日、中央道小仏トンネル付近で22km、関越道高坂SA付近で19kmの渋滞が発生したという。長時間、運転を担当された皆さん、本当にお疲れさまでした。
もはやこの時季は渋滞を覚悟して生きるしかないのか?「渋滞」が夏の季語なんじゃないかと思うほどその現象は毎年解消されず、毎年体験し、毎年耳に入ってくる。
誰もが思うであろう“いつかはあの地獄から脱出したい”と。
そんな我々に2022年、ようやく救世主が現れた。それは「渋滞を解消してくれる聖人」だ。すべては次の画像に集約されている。少々衝撃的だが覚悟してご覧頂きたい。
数々の「下手くそ」が登場する中、中央部に「渋滞を吸収しようとしてあえてゆっくり走る聖人」がいる。全員がとにかくぶっ飛ばしたい高速道路でゆっくり走る聖人が居るからこそ、渋滞の無い明るい未来がやってくるというのだ。
その聖人の技とは「渋滞吸収走行」。
はじめましての方も多いかもしれない。筆者も初見だった。実は「渋滞吸収走行」とは長きに渡り誰もが苦しんできた渋滞を解消し、高速道路上でのストレスから解放してくれる画期的な運転術なのである。
その運転術についてお盆前からSNSで紹介し日本渋滞解消計画に従事していた賢人がいる。バス運転士でYouTuberのかしけんさん(@Kashiken_N)だ。先ほどの画像も、かしけんさん作でツイッターでは2万いいねとバズりまくった。ここで先ほどの画像の補足をすると…
この画像で何が言いたいかというと、つまり
・ブレーキ踏ませる奴はもれなく下手くそ
・自分が先頭なら上り坂ではアクセル踏め
・追越車線を走り続けるな
・混んでる上り坂では車線変更するなこれだけ
— 🐸かしけん🐸 (@Kashiken_N) August 2, 2022
今回、プロドライバーで「渋滞吸収走行」を推奨するかしけんさんを直撃。渋滞吸収走行はどれだけ効果があるのか?運転が上手い人、下手な人の特長とは?運転のスペシャリストにたっぷり伺ったので是非未来の渋滞に向けて参考にして頂きたい。
ーー改めて「渋滞吸収走行」を教えてください。
「渋滞中、あるいは渋滞手前で周囲の車よりも極端に遅い速度で定速走行することで、新たな流れを作り、ブレーキ連鎖による渋滞の波を断ち切って流れの歪みを吸収する走法です。吸収車の後ろの車列は吸収車の速度に合わせて走行するため、吸収車がブレーキを踏まずに定速で走ることにより、後方の全ての車はブレーキを踏まずに走ることができるんです」
「なるべくブレーキを踏まないことによりブレーキの連鎖で完全に停止することが殆ど無くなります。渋滞の際、前の車がブレーキを踏むと減速しますが、逆に前の車が加速するとそれに合わせて加速するのでやがては徐々に全体の速度が上がり、最終的には全体の流れが渋滞前の元の速度に戻る、それが渋滞吸収走行の最大のメリットなんです」
かしけんさんのようなバス運転手を始め、長年職業ドライバーをやっている人なら知っていることだとか。加減速が少ない=ドライバー自身の身体の負担が少なく乗り心地も良い運転になる、といったメリットもありトラックでもよく見られる走法だという。
そもそも渋滞はなぜ発生するのか?原因はアイツだ
毎年のように起こってしまう渋滞はなぜ発生するのか?それが最も気になるのだが、かしけんさんが専門的な情報を交えて分かりやすく教えてくれた。
「高速道路における渋滞には、大きく分けてボトルネック渋滞と自然渋滞の2種類あり、前者は合流や事故・工事などの車線規制によるもの、後者は明確な渋滞要因が無い箇所で発生するものです。お盆などに見られるのは後者の自然渋滞。原因は無意識下による速度の低下ですね」
ーー無意識下による速度の低下とは?
「多くは下り坂と上り坂が連続するサグ部、トンネル入口、急な車線変更で発生するもので、車間が詰まっている状態で一台だけでも減速すると、その後ろの車はある程度車間が空いていたとしても条件反射でブレーキを踏んでしまう。するとさらに後ろの車はより強いブレーキを踏み、これが波となって連鎖してどんどん後ろの車が停止して行ってしまうんです」
ーー渋滞のすべての原因はブレーキ?
「ですね。無意識下に速度を落とすドライバーと車間を詰めて走るドライバー、後ろの車にブレーキを踏ませる車と前の車の減速に対応できず実際にブレーキを踏むドライバーの2つが揃うことにより、自然渋滞が発生すると考えられます。渋滞を引き起こすドライバーの特長は自己中心的で周囲の状況を把握しない、視野の狭いドライバーと言えると思います」
とはいえ、ブレーキをなるべく踏まない走行はかなり難しいと思ったのが、かしけんさん曰く「渋滞中であれば、なるべく前方の全ての車を見てそれらの動きを推測することで可能」だとか。
さらにブレーキを最小限に抑えて“聖人”になれるコツを伝授頂いた。
「まずは前の車との車間距離を50m(白線3本分)以上空けます。前が流れている状態であれば、前車より少し遅いくらいの速度をキープしてさらに車間を空けて定速で走る。前が止まっている状態であればアクセルを緩めたりエンジンブレーキを使うなどしてゆっくりと減速すれば大丈夫です」
「前が動き出したら、若干速度を上げつつもまた車間距離を空け直します。ゆっくり走ることで割り込まれたり煽られたりもしますが、自分が急いでは意味が無いので前に出たい衝動を抑えることが大切ですね」
ーー早く行きたい気持ちを抑えることが大事だと?
「どちらかといえば技術よりも心構え。遅れても良いという心の余裕があれば難しい事はありませんし、実際に遅れる時間も数十秒〜長くても数分程度です。やっていることは自己犠牲、殆どボランティアに近いですが渋滞中ゆっくり走ることによる効果は絶大です!」
プロのバス運転士が教える『運転が上手くなるコツ』がコチラ!
先にも紹介した通り、かしけんさんは現役のバス運転士。自身の仕事について「不特定多数の命を預かるという特殊な仕事であり自分自身を誇りに思える仕事」と語るほど仕事を愛し、バスを愛し、運転を愛している。
大きな達成感もある一方、責任感もプレッシャーもあるはず。そんな日々で丁寧な運転を心がけている彼が教えたい「運転が上手くなるコツ」とは?
「これはバス業界でよく言われることなんですが、運転が上手い人は車を殆ど揺らしません。速度変化もハンドル操作も非常に少なく、乗り心地が良い運転をします。これを実現するために大事なのは常に周囲の状況を把握して視界に入る全ての車の動きを予測すること」
「例えば、右前方を走る車を見て「あの車、左に寄ってフラフラ走ってるな〜そろそろ追越車線から走行車線に移動するだろうな」という予測を瞬時に立ててアクセルを若干緩める、といった行動をします。また、運転が上手い人はキレません(キレても顔に出しません)」
バスがほとんど走っていない地域で育ち、幼い頃からバスそのものに非日常的な憧れがあったという、かしけんさん。夢を叶えバス運転士になった今、お客様一人一人から「ありがとう」と声を掛けてもらえることに感謝し、今日も大きなハンドルを握っている。
現在、SNSでさまざまな情報を発信している彼が今後伝えていきたいこととは?
「今後もバス業界の現状や動向、バス運転士ならではの運転テクニックやライフハックなども伝えられたらなと考えています。バス運転士YouTuberとしてはあまり満足な活動はできていませんが、コロナ禍で早々に中断した路線バス乗り潰しやバスを使った交流会、会社の垣根を超えた交流会などもやっていきたいですね」
取材協力
かしけんさんTwitter
@Kashiken_N
かしけんさんYouTube
https://www.youtube.com/channel/UC8q-885PVoVE8ePdF5VLIDw/featured
文/太田ポーシャ