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SNSマーケティングの専門家に聞くTikTokの上手な活用法

2022.08.23

気鋭のメディア研究者が一番注目するSNS

筆者とTikTokとの出合いは一瞬のことであった。

2年前、つきあいのある編集者が、担当するメディアのPRにと、TikTokを活用し始めた。自作の動画が好評だったようで、興奮気味にTikTokの可能性を説いてきた。

それまでの自分はInstagramなどのアカウントを持ち、SNSにはそれなりにコミットしている方であった。しかし、TikTokに関してはなんとなく敬遠していた。

とはいえ、その編集者の「TikTok愛」にほだされるかたちで、アプリをダウンロードした。起動すると、一般のユーザーが作成したごく短い動画が次々と現れた。

そのときの印象は、「動画のプロではない若い人が作成した、若者向けの動画プラットフォーム」というもので、結局関心は持てずじまいに終わった。

2022年の今も、筆者に限らず、ある程度以上の年代の人たちのTikTokへの距離感は、まだ遠いのが大勢かと思う。

だが、ことマーケティングに関わっている人にとっては、TikTokは無視しえない巨大なトレンドになりつつある。

“TikTok売れ”なる言葉を持ち出すまでもなく、感度の高いマーケッターなら、TikTokは外せない。

そう確信させたのは、『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる ショートムービー時代のSNSマーケティング』(世界文化社)という分厚い1冊の書籍。

著者は、電通メディアイノベーションラボ主任研究員の天野彬さん。気鋭のメディア研究者の労作となる本書には、マーケッターなら目から鱗の知見が満載だ。

■クリエイターとのコラボも一般化

先に進む前に念のため、TikTokについて簡単に説明しよう。これは、短尺の動画(ショートムービー)を気軽に作成し公開・シェアできる無料アプリで、運営会社は北京に本拠を置くByteDance(バイトダンス)社。

同社が米国でTikTokを立ち上げたのは2017年のことだが、翌年にはその年に最もダウンロードされたアプリとなり、「歴史上最速で10億人ユーザーを突破」するなど、いくつもの記録を打ち立てている。

2022年春期の時点で、ダウンロード数の累計が35億件を超えているが、この数値を達成したアプリはInstagramなど5つにすぎない。

TikTokの日本での月間アクティブユーザー(MAU)は、2千万人ほどとされている。ユーザーの年齢層は、20代までの若年層で過半数を超えるのは、筆者の第一印象の頃から変わらない。つまり、Z世代をターゲットとするマーケティングには、TikTokはある意味“主戦場”となっている。

ここから天野さんの著書の言葉を借りていこう。天野さんは、「企業/ブランドがTikTokを活用する方法もリッチになってきている」と前置きした上で、既に実施されている4つのアクティビティを紹介している。

その1つに、「クリエイターとのコラボレーション」というのがある。この「クリエイター」とは、TikTokの動画を作成する人を指す。

手法としては、著名クリエイターのチャンネルの中で、コラボする企業やブランドにさりげない形で言及するのが主体のようだ。天野さんは、次のような実例を挙げる。

“英会話のレッスンを面白く発信するKevin’s English Roomが、ドミノ・ピザとコラボレーションして、誇張した英語を話す客を演じた動画。日常系Vlogを発信する現役大学生の修一朗が大学生活の中に溶け込む「クラフトボス」(サントリー)を描く動画。

こんな人いるいるモノマネが得意ないわたまあり(@iwatamaari)が、癖の強い店員のモノマネをしながら「ブルーレットデコラル」をオススメする動画(これはブランドのPRだが、オーガニック投稿を含めて月間で最も見られた動画のひとつになった)。それぞれクリエイターの背景を知るファンから、そしてファン以外からも違和感なく受け止められる。”

ドミノ・ピザとコラボしたKevin’s English Roomの一コマ

天野さんによれば、クリエイターとのコラボ型広告で成功する秘訣は、1つには「そのクリエイター自身の持つパーソナルな文脈やストーリーがオーバーラップし、広告として届けたいメッセージ性がぐっとリアリティを持って受容される」ことだという。

その例が、今ではフォロワー数1千万人を超える人気クリエイターの景井ひなさんが、将来スポットライトを浴びるために、実際にアルバイトを頑張っている姿が織り込まれたタウンワークとのコラボ。

単に人気があるからと、ブランドイメージとマッチしないクリエイターを起用するのは、逆効果となるリスクをはらむ。

■広告に好感を持つTikTokユーザー

マーケティング視点からみたTikTokの特徴に、広告に対してユーザーがおおむね好意的である点が挙げられる。普通、SNSや動画プラットフォームでは、広告は歓迎されているとは言い難いが、TikTokの場合は逆なのである。

象徴的な例として、TikTokの広告形態に「TopView」というものがある。これはユーザーがアプリを起動したときの15秒間、最初のインフィード動画として配信される音声付き動画広告。

強制的に視聴させられる動画であるにもかかわらず、ポジティブなコメントが数百件ついて盛り上がることも頻繁に起こると、天野さんは述べる。

もちろん、広告主からの一方通行的な投稿に対しては、ユーザーからのレスポンスは芳しくないという点は、ほかのSNSと同じ。

それを回避するための一方策として、「ツッコマビリティ」、つまりユーザーが思わずツッコミたくなる要素を仕込むメリットを、天野さんは力説する。

さらに、ユーザーが二次創作の意欲をかき立てる仕掛けも有効。その一例が、AGCに社名変更した旭硝子が、若者層への認知度を広げようと、テレビCMと連動して制作したAGCチャレンジだ。

“ブランド側が楽曲を入稿して、ユーザーがN次創作するというハッシュタグチャレンジのフォーマットで広瀬すずが「A」「G」「C」の3文字で会社名AGCを紹介するように、ユーザーも自分ならではのアルファベット3文字を使って自分を表現した動画を投稿するという仕組みだ。実際にブランドリフト調査を行なうと、特に若い人々の間で認知が向上していたようだ。”

AGCチャレンジの1例(@sumiponpより)

そして、見落としてならないのは、音楽や踊りの重要性。心を動かす楽曲や、自分もしてみたいと思わせる振り付けが伴うことで、ユーザーの「参加」が増え、商品の認知度拡散につながる。

■意思決定者への粘り強い説得がカギ

最近は、独立したマーケティングの部署を設けていない中小企業でも、SNSマーケティングに力を入れ始めているところが増えている。しかし、そのような企業でも、TikTokまでは食指を伸ばせてないところが多いようだ。

これは、ユーザーに若年層が多いTikTokに好感・共感を持ちやすい現場の若手社員に対し、年長の意思決定者は、なかなかその有効性を理解できていないというのが、少なからず影響している。

天野さんも、そうしたボトルネックの存在を認識しており、TikTokを大活用するコーセーの宣伝担当者にヒアリングして得た、現場の知恵を紹介している。

“まずは各ソーシャルメディアのMAUと特徴をまとめた資料を作る。その上で、インスタグラムやユーチューブ、ツイッター…と既に活用しているサービスとTikTokがどう違うのか――2軸のマッピングでTikTokが独自のポジションにあることを示した。

さらには、プロジェクトのクリエイティブは、他のサービスとどう異なるのかというアウトプットの見え方も写真を貼って解説したとのこと。チームメイトへの説明にも有効であるし、TikTokのことをほぼ知らない人でも、自社のマーケティング施策にどう活かせるのかがわかるこうした丁寧な資料は、部門を超えて承認を取らないといけないときに絶大な効果を発揮するのだ。”

コーセーの場合、基礎資料を出して一発で了承されたわけでなく、その後も日常的に上司にレクチャーするなどして、説得を繰り返したという。意思決定者の「若者しかやってないでしょ」といった先行イメージを崩すまでの粘り強さがカギのようだ。

近年、InstagramのReelsやYouTubeのShortsなど、既存の大物SNSでも短い動画の投稿機能が充実してきており、ショートムービー戦国時代の様相を呈している。

その中でもTikTokは、頭一つ抜き出た存在感でマーケティング界から熱視線を送り続けられることになるだろう。

天野さんも本書の終わりで、「ショートムービーではじめに認知を拡大して、そのあとメイン投稿や長尺コンテンツでよりエンゲージメントを高めてファン化」させる流れが当たり前になると説く。にわか流行しているSNSだと見くびらず、ちょっと本気出して活用を検討する価値はあるはずだ。

天野彬さん プロフィール
1986年生まれ。学際情報学修士(M.A.)。SNSのマーケティング活用や若年層のトレンドについての研究開発・コンサルティングを専門とする。最新著に『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる ショートムービー時代のSNSマーケティング』(2022年、世界文化社)。その他、『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』(2017年、宣伝会議)、『SNS変遷史~「いいね!」でつながる社会のゆくえ~』(2019年、イースト新書)、『情報メディア白書』(共著、2016~2022年、ダイヤモンド社)、『メディアリテラシー 吟味思考を育む』(2021年、時事通信社)など。経済番組でのコメンテーターや各種講演でのスピーカーなど経験多数。

文/鈴木拓也(フリーライター)

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