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「人的資本情報開示」の必要性が高まる今、人事担当者が意識すべきこと

2022.08.24

岸田政権の「新しい資本主義」の成長戦略の中核である「人的資本投資」。国内ではますます人的資本への意識が高まる中、先日、総理によって開示ルール作りが表明されたのを受け、企業は、人的資本情報の開示についての準備を急いでいる。

人を資本と捉える「人的資本」の考え方が浸透する中、今後は情報開示という新たな取り組みを推進していく必要がある。今後、企業及び人事は何を意識するべきか、有識者に話を聞いた。

人的資本に関する情報開示の国際規格「ISO30414」とは

人的資本の情報開示の必要性から、人的資本に関する情報開示のガイドラインの国際規格「ISO30414」への関心が高まっている。この認定を受けることにより、企業は投資家、従業員等のステークホルダに対し国際基準に基づいた客観的な情報公開を行うことが可能となる。

人事コンサルティング支援を行うPeopleTrees合同会社は、COOである中谷真紀子氏が「ISO30414 リードコンサルタント/アセッサー」の認定を取得したことを2022年6月末に発表した。ISO30414 リードコンサルタント/アセッサーは、ISO30414の認証取得・情報開示に向けたコンサルティングを専門的に行うことのできる認定資格だ。

PeopleTrees合同会社 COO 中谷真紀子氏

中谷氏は、ISO30414 リードコンサルタント/アセッサーを取得した背景について次のように話す。

「過去に人事や経営企画に所属して複数企業の中で仕事をし、現在もPeople Treesとして約80社の人事課題の解決に伴走させていただく中で、さまざまな場面に遭遇してきました。例えば、人事が経営の方向性を決める重要な議論に参画できない場面や、各種人事制度の運用・研修の実行・給与の支払いなど目の前の業務に忙殺され、企業価値の向上や、企業を変革していく活動に十分な時間を割けない場面なども見てきました。

その中で、2年ほど前にこのISOの規格を知り、人事が、投資家や経営陣との共通言語を持つことで、もっと企業価値の向上に貢献できるのではないかと思い、その領域について知見を深めたいと考えました」

●ISO30414認定取得のメリット

企業はISO30414の認定を取得することで、国際基準に基づいた客観的な人的資本の情報公開が可能になるという。

ISO30414の認定を取得すると、情報公開にどのような違いが出るのだろうか。中谷氏は、スピードと信頼性の2点を挙げる。

1.開示スピードの向上

「何かのKPIを決める際に、その定義を決めるということを、1社1社が社内で議論をするとなると、とても時間がかかるのではないかと思います。『女性管理職比率』一つとっても、自社にとっての『管理職』という定義は何か、どの期間の数値を取得するのかなど、多くのことを社内で合意形成をしなくてはなりません。ISO30414のような基準があることで、企業はスピーディーに数値の取得・開示に時間を使うことができます」

2.信頼性の向上

「たいていの企業は、人的資本についてどのような数値の出し方が正しいか、という答えを持っていません。これまで人事の領域はファイナンスなどの領域と比べて、数値化が進まず、ゆえに評価が曖昧になりがちだったのではないかと思います。その点、ISO30414の規格による数値化と、認証制度の存在は、これまでブラックボックスになりがちだった領域に対する信頼性を高めるのではないかと考えます」

●ISO30414の認証取得の難易度

ISO30414の認証取得の難易度はどのくらいなのだろうか。

「これまで、人事の領域で定量化をしてPDCAを回すということをやってこなかった企業にとっては、難易度が高いと感じられるでしょう。自社の目指す方向性を明確にする、必要な領域の項目を数値化する、その数値の意味や解釈を明らかにする、施策を考える、開示レポートにまとめる等、やることが多くあります。ただ、人事領域における定量化に未着手な企業が多い今の時期から、本格的に取り組み始めることで、人的資本を強みとするリーディングカンパニーになれる可能性があります」

●「人的資本」を軸とした人事のこれから

今後「人的資本」が人事戦略のキーワードになっていくといわれている。企業の人事はどのような意識・姿勢で取り組むと良いか、アドバイスしてもらった。

「『人的資本』が重要視されているから何かやらないと、という思考になってしまう企業が多いような気がしています。しかし、自社にとってなぜ必要なのか、こういった考え方を取り入れると何ができるのかを議論の出発点として、まずはこの機会をチャンスと捉えて、“人”を活かす方策について議論するきっかけにすると良いのではないかと思います。

そうすれば、人事は自ずと経営陣と話す必要が出てくると思いますし、人事戦略についても見直しを図る必要性に気付くかもしれません。また、定量化をしようとすると、新たな仕組み(システム)の導入を検討する必要が出てくるかもしれません。

未来に向け、“人”を起点にして変えていく対話を、人事からの発信で社内に仕掛けていくための枠組みとして、人的資本経営に多くの企業が取り組み、“人”を強みとする企業がもっと世の中に増えることを願っています」

人材管理ツールと「人的資本経営」の関係とは

人的資本経営において欠かせないのが、従業員のスキルなどのデータ活用だ。すでに多くの企業が、データ活用のために人事システムの一つである人材管理ツールを導入している。

その一つが、タレントマネジメントシステムである。タレントマネジメントシステムとは、企業の人材情報を一元管理し、社員の顔や名前、経験、評価、スキル、才能などの人材情報を可視化することで、最適な人材配置や抜擢などの戦略的なタレントマネジメントの実現を支援するツールだ。

そのタレントマネジメントシステムの一つ「カオナビ」は、すでに多くの企業に導入されている。

●タレントマネジメントシステムと人的資本経営の関係性

タレントマネジメントシステムは、人的資本経営にどのように活かすことができるのだろうか。「カオナビ」を提供する、株式会社カオナビの執行役員 CEO室長 内田壮氏に意見を聞いた。

株式会社カオナビ 執行役員 CEO室長 内田壮氏

「『カオナビ』などのタレントマネジメントシステムは、人的資本経営の基盤となるサービスと言えます。まず、人材情報データベースとしての機能があります。社内の人材情報を各人の頭の中や紙面で保存していても、有効活用することはできません。デジタル化し一元化することでマネジメントに活用できる可能性が大きく広がります。これは人的資本経営実施の第一歩です。

他にも 『カオナビ』には、人事評価・社員アンケートなどの業務を回しながら人事データを収集する機能や、データ分析、配置シミュレーションなど収集した人事データを用いて施策検討、意思決定するための機能などを備えています。これらを活用することで人的資本経営を効率化することが可能です」

今後、必要となる人的資本の情報開示についても対応が可能であるという。

「人的資本の情報開示については、現在の機能でも対応はできるのですが、さらに自由度と使い勝手を改善することで、より多くの企業が簡単に人的資本情報の開示をできるようにしたいと思っております」

●人的資本情報の開示のポイント

人的資本情報の開示は、比較的、新しい潮流である。今後、企業はどのような意識・姿勢で取り組んでいけばいいだろうか。内田氏は、多くの企業に「カオナビ」を導入してきた実績をもとに、次の2点を挙げる。

1.「人事情報は隠すもの」という意識を変える

「従来、人事情報は機密情報であり、オープンにするものではありませんでしたが、企業を取り巻く環境は変化しています。株主はもちろんのこと、求職者や消費者も各社がどのような人材マネジメントをしているか、関心が増してきています。また、そうした要請に応え、すでに多くの企業が人的資本情報の開示を始めつつあります。そうした中で、かたくなに情報開示を拒む場合、『隠したいくらいに酷い状態なのか』という目線で見られることは避けられず、事業活動の足を引っ張ってしまう恐れがあります」

2.開示の目的を整理する

「目的を整理することも重要です。手段に関するキーワードが先行し、目的を見失うのは、企業が陥りがちなことです。人的資本情報の開示は、株主を意識して行われることが多いですが、求職者、消費者、社員なども開示情報に触れる関係者です。誰に何を伝えるための開示なのか、きちんと目的を定めて取り組むことが重要と考えています」

●従業員「個人」の実現から多様な働き方ができる社会を目指して

「カオナビ」は、単に顧客に対してツールを提供することを目的としているのではない。最終ゴールは、「個人のキャリア形成や働き方が多様化される社会を創造する」ことだという。つまり、顧客企業の従業員「個人」から、世の中の働き方をより良きものにするということをゴールに据えている。

今後、一般企業にはどのような姿勢を期待しているか、内田氏に意見を聞いた。

「今後、企業に期待したいのは『個の活用』です。これまで企業は『○年入社の営業』などの乏しい情報だけで配属を決めることが多々ありました。これにより、必要性の低い遠方異動、職種変更などが生じ、従業員の生活や企業の生産性に大きな損失が生じていました。

しかし、従来『○年入社の営業』として同じように見えていた一人一人は、実際にはそれぞれに異なる性格、希望、スキル、趣味を持つ個性豊かな人々です。そして、ITの発展がこうした一人一人の個性を把握することや個別対応を容易にしました。

これからは、そうした一人一人の個性を企業やマネージャーが理解した上で、細やかで一人一人に合ったマネジメントをすることが、従業員のベネフィット、企業の成長の両面において重要と考えられます。マネジメントとは、異動、昇格、研修などだけでなく、日々の業務分担や声がけの仕方なども含んでいます」

人的資本情報の開示は、企業の人事にとっては新たな対応が必要になる分野といえる。そうした中、うまくこの機会を利用することで、新たな人事の活躍が期待できそうだ。ISO規格取得やタレントマネジメントシステムの活用も一助となるだろう。

取材・文/石原亜香利

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