2022年4月27日に、改正道路交通法が公布されました。2024年4月までには全面施行される予定となっています。
今回の改正道路交通法において、レベル4自動運転の解禁とともに大きなポイントとなっているのが、電動キックボードに関する規制緩和です。
公道で電動キックボードが利用しやすくなるため、今後さらなる普及が期待されます。
今回は、電動キックボードに関する道路交通法改正のポイントをまとめました。
1. 電動キックボードは「原動機付自転車」|現在のルールは?
現行の道路交通法では、電動キックボードは「原動機付自転車」に該当します。つまり、いわゆる「原付バイク」や「スクーター」と同じです。
電動キックボードは原動機付自転車であることに伴い、現行法上以下の規制が課されています。
・原動機付自転車の免許証が必要(道路交通法84条1項)
・自転車道、歩道、路側帯の通行は原則不可(同法17条1項~3項、17条の2)
・ヘルメットの着用義務あり(同法71条の4第2項)
など
今回の道路交通法改正では、電動キックボードに適用されている上記のルールなどが変更される予定です。
2. 道路交通法改正により、電動キックボードの位置づけが変更予定
改正道路交通法では、電動キックボードの位置づけが「原動機付自転車」から「特定小型原動機付自転車」に変更されます。それに伴って一部の規制が緩和され、同時に新たなルールが適用される予定です。
2-1. 電動キックボード=「特定小型原動機付自転車」になる
「特定小型原動機付自転車」とは、原動機付自転車のうち、車体の大きさ・構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれがなく、かつ運転に関して高い技能を要しない車として、内閣府令で定める基準に該当するものをいいます(改正道路交通法17条3項、2条1項10号ロ)。
「特定小型原動機付自転車」という新たなカテゴリーは、主に電動キックボードを想定して設けられました。
詳細な要件は、今後内閣府令(道路交通法施行規則)にて整備されますが、主に以下の事項が盛り込まれる予定です。
<特定小型原動機付自転車の要件(予定)>
・電動であること
・最高速度が時速20km以下であること
・長さ190cm以内かつ幅60cm以内であること
・必要な保安部品が装着されていること
2-2. 電動キックボードに対する主な規制緩和の内容
特定小型原動機付自転車に該当する電動キックボードについては、主に以下の3点について、従来原動機付自転車として適用されていた規制が緩和されます。
①自転車道・路側帯の通行が可能になる
特定小型原動機付自転車は、無条件で自転車道を通行できるようになります(改正道路交通法17条3項)。
また、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、路側帯も通行できるようになります(同法17条の3)。
②条件付きで歩道・路側帯の通行が可能になる
特定小型原動機付自転車は、以下の要件をすべて満たす場合に限り、歩道を通行することができるようになります(同法17条の2)。
(a)他の車両を牽引していないこと(遠隔操作可能な車両を除く)
(b)歩道を通行する間、特定小型原動機付自転車が歩道を通行できるものであることを、内閣府令で定める方法により表示すること(「歩道モード」に切り替えること)
(c)歩道モードの間は、最高速度が時速6km以下であること
(d)車体の構造が、歩道における歩行者の通行を妨げるおそれのないものとして内閣府令で定める基準に該当すること
(e)道路標識等によって歩道の通行が認められていること(自転車通行可の歩道など)
③原動機付自転車の免許が不要になる
特定小型原動機付自転車の運転には、従来必要とされていた原動機付自転車の免許が不要となります(同法84条1項)。
④乗車用ヘルメットの着用が努力義務に緩和
従来の電動キックボードは乗車用ヘルメットの着用が義務付けられていましたが、特定小型原動機付自転車へと変更されることに伴い、乗車用ヘルメットの着用は努力義務に引き下げられます(同法71条の4第3項)。
2-3. 電動キックボードを運転する際に注意すべき主な規制内容
電動キックボードについては規制緩和が行われる一方で、以下の新たな規制が設けられる点にご注意ください。
①16歳未満の者は公道での運転不可
16歳未満の者は、公道で特定小型原動機付自転車を運転することが禁止されます(改正道路交通法64条の2第1項)。
また公道で運転されるおそれがあるにもかかわらず、16歳未満の者に対して特定小型原動機付自転車を提供する行為も禁止です(同条2項)。
違反した者は「6か月以下の懲役または10万円以下の罰金」に処されます(同法118条)。
②何度も交通違反を犯すと講習の受講が命じられる
特定小型原動機付自転車の運転に関して、一定の危険な交通違反を反復して犯した場合、3か月以内に講習を受けるべき旨を公安委員会から命じられる可能性があります(同法108条の3の5)。
命令に反して講習受講しなかった者は「5万円以下の罰金」に処されます(同法120条1項17号)。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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