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アップルという会社は〝あるべきものをなくす〟ことで進化してきたといえるかもしれません。
例えば、パソコンに使うマウス。Macに使うと便利な「Magic Mouse」はツルンとした一体型。実際は左右クリックもできますが、多くのMacユーザーは〝ボタン1つ〟での操作に慣れているので、シンプルな操作に違和感がないはずです。「右クリック? 左クリック? クリックなんてそもそも1つあれば十分でしょ……」というのがオールドスタイルを知るMacユーザーの本心ではないでしょうか。
「Magic Mouse – ホワイト(Multi-Touch対応)」
ところで、2008年1月に〝世界で最も薄いノートブックコンピュータ〟という触れ込みで華々しくデビューした初代「MacBook Air」を覚えていらっしゃる方も多いかと思います。
このモデル、LANポート(Ethernet)がなくなってしまったのです。まあ、どうしてもLANケーブルを使いたい人用に「Apple USB Ethernetアダプタ」が用意されてはいましたが……。その驚きは、3.5 mmヘッドフォンジャックを廃したiPhone 7の比ではなかったと思います。
みなが度肝を抜かれる中、知り合いのカメラマンが購入し、「Wi-Fiにつなげればいいから、問題ないよ」と言われたのを昨日のことのように覚えています。〝パソコンはLANケーブルでネットにつなぐもの〟と思い込んでいた自分が、2022年の今では懐かしいです。
電話のできるiPod
iPhoneの登場には、iPodの存在が不可欠でした。そもそもiPhoneは〝電話のできるiPod〟でした。iPhoneが世界中で売れまくった結果、本家であったはずのiPodの存在意義は徐々に薄れていき、ついにiPodはアップルの歴史から姿を消すことになりました。
最後のiPod。2019年5月に登場した「iPod touch(第7世代)」
iPhone 14シリーズはLightningコネクタを廃止する?
前置きが長くなりました。
ところで、「早くUSB-Cに切り替えて〜」と一部のユーザーから責められがちなLightningコネクタですが、iPhone 5の誕生とともにデビューした当時は、従来の30ピンコネクタに慣れていたアップルユーザーにとって、神のように小さいインターフェイスでした。
Lightiningコネクタを搭載した「iPhone 5」
天地どちらに向けても接続可能で、固定するボタンがないためスッと抜き差しできる快適さは格別でした。ただし、接触面が傷みやすく、しばしケーブルの交換を余儀なくされたのには、やや閉口しましたが……しかし、耐久性をのぞけば大きな不満が出るような存在ではなかったのも事実です。
欧州議会の決定によりiPhoneも欧州ではUSB-Cに替える必要が
アップルの隠れた収入源!? と噂されたLightningコネクタ、Lightningケーブルですが、大きな変化の時を迎えようとしています。それは、欧州議会が2024年秋までにEU圏内のすべてのスマートフォンやタブレット、デジカメ、ヘッドホン、イヤホンなどを共通の充電ポートにすると決定、USB-Cが用いられることになったのです。
【参考】Common charger: Council and European Parliament reach a provisional political agreement
グローバルモデルのiPhoneを欧州で販売する場合、いずれUSB-Cに変更する必要があります。もちろん、南北アメリカ、アジア、アフリカ、オセアニアなどで販売するには規制外ではありますが、アップルにとって重要な経営判断を迫られるのは間違いありません。
USB-Cへの変更はいつから? iPhone 14シリーズは初のUSB type C対応モデルになる?
欧州議会が施行する新規則により、Lightningコネクタ、Lightningケーブルはいずれ、消滅するのでしょうか? そこには2つの考え方があるはずです。
1つは、iPhoneやiPadといった世界中のApple製品でLightningコネクタ、Lightningケーブルを廃して、USB-Cにすべて切り替えるという未来。
もう1つは、欧州向けのiPhoneやiPadを製作して、地域ごとに異なる製品を販売するという未来です。
USB -C- Lightningケーブル(1m)
iPhoneはグローバルで販売することで大量生産を可能にしています。その量産効果でほかのスマホメーカーがうらやむ、高い利益をあげることが可能です。欧州とそれ以外のエリアという〝ダブルライン〟での製品ラインアップは、量産効果を落とす可能性があります。しかし、iPadにLightningコネクタのモデルとUSB-Cコネクタのモデルが混在するように、iPhoneの中で2種類に分けることがまったく不可能だとは思えません。
12.9インチiPad Pro(第5世代)、11インチiPad Pro(第3世代)、iPad Air(第5世代)、iPad mini(第6世代)はUSB-Cコネクタを採用、iPad(第9世代)のみLightningケーブルを採用することから、iPhoneも上位モデルとなるProシリーズはUSB-Cに対応、数字のみのiPhone、iPhone SEはLightningケーブルを継続する可能性があります。
2024年秋を期限とすることから、2022年9月と噂される新型「iPhone 14 Pro/Pro Max」がiPhone初のUSB-C対応モデルになるかもしれませんね。もしくは、iPhone 14シリーズ全体がUSB-C対応になり、iPhone SEのみLightningコネクタ搭載となるかもしれません。
次期型iPhone 14のコネクタがUSB-CになるかLightningのままか……その答えは新モデルの発表が行われて初めてわかることです。最近では2022年9月7日あたりに新型iPhoneの発表があるのではないかという噂で盛り上がっています。新型にどんな進化が待っているのか、発表のその日まで、楽しんでいきましょう。
※データは2022年8月中旬時点での編集部調べ。
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文/中馬幹弘