最近の食品業界の潮流について和田美野さんに聞いた。
「中長期的なトレンドとして、SDGsによる社会課題への関心の高まりがあります」
代替食やアップサイクルフードは環境配慮や動物保護という世界観を打ち出している。しかし、現状について和田さんは「日本で代替食を積極的に食べているのは、健康配慮の意識が高い人が多く、環境意識に共感して購買に至る消費者はマジョリティーといえない」と指摘。環境という理念の裾野はまだ狭いのが実情だ。
一方、『ヤクルト1000』のヒットが示すように「健康」の裾野は広い。代替食などが普及するか否かは、SDGs的な世界観に、幅広い年齢層に支持される価値を付与できるかにかかっていると言えるだろう。
「消費行動は、単に商品に価値を感じるだけでなく、企業が目指す世界〝観〟に共〝感〟し、その仕組みに参画する意識に基づいた“カン消費”に代わり始めています」
消費を大きく変える可能性のある環境意識の高まりを注視したい。
日本総研
リサーチ・コンサルティング部門 マネジャー
和田美野さん
食農を中心とした事業開発・業態変革、食品ロス削減といった社会課題解決ビジネスの創出に注力。民間企業・行政などの事業開発のプロジェクトに多数従事する。
ぷるぷる代替食
市場成長率は20%超植物性フードが多彩に
肉や乳製品など動物由来の食品を植物由来に置き換えた代替食品が増えている。国内の市場は、ここ5年、年平均20%の成長分野だ(データ元:TPCマーケティングリサーチ)。人気の理由を日本総研の和田美野さんに聞いた。
「健康志向の高まり、味の向上が挙げられます。分析が進み、おいしさが備わってきています」
代替食といえば大豆を肉に近い食感に仕上げた大豆ミートが目立ったが、今年は卵や魚にも広がっている。代替卵は昨年、キユーピーが業務向けに発売、今年3月に市販され、予想以上の反響を呼んでいる。
代替シーフードには水産資源の保全といった意義も加わり、成長が必要とされる食品だ。
代替シーフード
魚介類の価格高騰で注目
あづまフーズ『まるで魚シリーズ』各990円
先行するヨーロッパ市場ではサーモンが人気。国内では20~40代男性の購入者が多く、同社は「ぷるんとした食感もウケているのでは」と見る。イクラやウナギ、イカワサビなどの代替製品も考案中。
代替卵
待望の市販化!
キユーピー
『HOBOTAMA加熱用液卵風』182円
『HOBOTAMAスクランブルエッグ風』214円
日本の食品メーカー初の代替卵で、「ほぼたまご」のような食感を実現。昨年、業務用を発売し、今年3月に市販。卵アレルギーがある人も食べられる。現在、市販エリアは首都圏の一部だが順次拡大予定。
4時間で目標金額達成
2foods『Ever Egg(エバーエッグ)』
390円(店頭販売)、5個セット2400円〜(オンライン)
〝ヘルシージャンクフード〟がコンセプトのプラントベースフードブランド。白インゲン豆とニンジンを原料にした代替卵は、先行予約販売を行なったMakuakeで開始4時間で目標額を達成。最終的に6倍超の金額を集めた。
アップサイクルフード
SDGsで注目廃棄食材をおいしく!
ハギレで作ったシャツ1万円、廃タイヤを使ったバッグ3万円など、アップサイクルはファッション界が先行していた。
食品業界では以前から廃棄物を飼料や肥料に加工してきたが、より高価値のアップサイクルフーズが注目される。おいしければ企業ブランドもアップ!
百貨店イベント大盛況!
オイシックス・ラ・大地『ここも食べられるチップス ブロッコリーの茎』430円
今春、東京・有楽町マルイで開いたイベントが話題に。食品ロス削減を目指すブランドUpcycle by Oisixは立ち上げ1年で廃棄食材を約40t削減。目標は2024年度に500t。
人気定着で近々、缶も登場!?
アサヒビール『蔵前WHITE』700円〜
近所のサンドイッチ店から出るパンの耳を利用したクラフトビール。ほかに廃棄予定だったコーヒー豆や茶を使ったビールも醸造。
容器まで食べられるスイーツ
〝脱プラ〟を実現販売店で連日完売!!
容器まで食べたい! そんな要望を50年以上かけて実現させた『桔梗信玄餅 極』。もったいない精神がゴミ削減や脱プラという時代のニーズにマッチし、大ヒット。おいしく食べながら楽しくSDGsに貢献できると、注目されている。
桔梗屋『桔梗信玄餅 極』3個入り700円
容器は最中で、残ったきな粉や黒蜜も余すことなく食べられる。昨年末発売されるや、開店と同時に売り切れる店が続出するほど。