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【深層心理の謎】将来を確実視することに潜むリスク

2022.08.17

 こう暑いと北海道の道東あたりが羨ましくなってくる。真夏の時期でもきっと涼しいのだろう。しかしかつての釧路旅行での残念な思い出もよみがえってきた。すべて思ったようにはいかないのが旅というものではあるが…。

大久保駅で降りて熱帯夜の街を徘徊

 三鷹駅で乗った中央総武線を大久保駅で降りた。今夜も熱帯夜であまり歩き回れないが「ちょっと一杯」をしに訪れてみたい立ち飲みの店があったのだ。

※筆者撮影

 駅の南口を出て小滝橋通りに通じている飲食店が多く立ち並ぶ通りを進む。若干人通りが少なく感じられるが、やはりコロナ禍の影響だろうか。今は飲食店への時短要請などは出されていないが、一部では外食を自粛している人々も少なくないのだろう。

 コロナ禍によっていろんなことが当初の計画や想定通りに進まなくなっていたりする。ネットで見かけたニュースでは旅行の「キャンセル保険」の契約数が急増していることを報じていた。

「キャンセル保険」は予定していた旅行に際して交通機関の遅延や運休や欠航、あるいは当人の急な病気や感染などによって発生する宿泊施設をはじめとする各種のキャンセル料を補償する保険である。

 コロナ禍で先行きが見えず、予定を立て難いことが「キャンセル保険」の増加からも明らかになっている。まったく厄介なことになってしまったものだ。ひと昔前までは国内線の旅客便はよほどのことがない限り欠航にはならなかったと思うが、今やわりと簡単に欠航が決められているような感も受ける。

 通りを進む。風もなく暑い。こう暑いと北国が羨ましくなってくる。何度か訪れたことのある北海道の東側、つまり「道東」だが、この真夏でもきっと涼しいに違いない。

 気づけばコロナ禍の数年ほど前から空の旅はしていないのだが、かつては年に10回前後、旅客機を利用していた時期もあった。そして幸いにも欠航に見舞われたことは1度もない。

 道東で思い出したが、かつて羽田から釧路空港へ向かった際、濃霧で場合によっては女満別空港に着陸するかもしれないというアナウンスがあったが、その後に霧の状態が良くなったようで予定通り釧路空港に到着したことがあった。釧路市内のホテルは予約していたので、女満別空港に着陸していたなら少しばかり厄介なことになっていただろう。

 その意味では幸いだったのだが、しかし旅のメインイベントと考えていた釧路湿原の散策が、生憎の天気で断念せざるを得なくなってしまったのは残念だった。朝にバスに乗って釧路湿原展望台まで向かったものの、けっこう雨が強くなってきてしまい、傘を差して少しばかり周囲を歩いて写真を撮って後、帰るしかなかったのだ。

※筆者撮影

将来を確実視することにある危険なリスク

 通りを進み目当てのお店が近づいてきたのだが、店の明りがなく様子がおかしい。どうやらやっていないようだ。休日は確認したはずなのだが、何らかの不測の事態で臨時休業になったのだろうか。特に貼り紙などもない。

 仕方がない。残念だが引き返すとしよう。運が悪かった。当てが外れることが最近は多くなったと思いたくもなる。

 ほんの数分先のことも含めて近い将来のことが確実視できなくなっているという文字通りの“不確実性の時代”が到来しているともいえるのだが、それは一概に悪いことばかりではないようだ。最新の研究では、未来を確実視することで起きる弊害が特定されている。考えている通りのことが起きるという確信は、より貧弱な情報探索行動と反社会的傾向に関係しているというのだ。いったいどういうことなのか。


 過去の研究は、確実性と将来の思考の概念を独自に調べてきました。ここでは社会的不確実性の期間中の将来についての確実性の認知的および行動的結果を調べることにより、これらの概念を組み合わせます。

 3つの研究では、COVID-19パンデミックと2020年のアメリカ大統領選挙という2つの主要な社会的イベントの際に、将来のイベントまたは結果について確信を持っていると定義される将来の確実性を調べました。

 これらの調査結果は、将来の確実性が社会の不確実性の重要な時期における知的盲目および反社会的行動に関連していることを示唆しています。

※「ScienceDirect」より引用


 米ニューヨーク大学をはじめとする研究チームが2022年4月に「Personality and Individual Differences」で発表した研究では、不確実性の中で未来について確信を持つことの危険性が実験を通じて報告されている。

 研究チームは一連の3つの実験を行い、将来についての確実性がさまざまな好ましくない結果に関連している証拠を見出した。

 296人が参加した最初の研究では、今回のコロナ禍において「すべてがすぐにうまくいくことを知っている」、「すぐには良くならないことを知っている」などのステートメントにどの程度同意、または反対したかが報告された。

 収集した回答を分析したところ、コロナ禍の先行きについてそれが肯定的なものであれ否定的なものであれ、より確信を持っている参加者は、医療専門家の話を聞く可能性が低く、COVID-19に関する陰謀論を支持する可能性が高いことを発見した。将来を確実視している人は、新型コロナウイルスに関する一般的な知識を問うクイズでも成績が悪かったのだ。

 298人が参加した2番目の調査では、コロナ禍に関する将来の確実性が、約1週間後の予防的健康行動の不遵守と関連しているかどうかが調べられた。研究チームは将来についてより確信を持っている参加者は、より多くの他者と直接的接触をしていた傾向があることを発見した。さらにコロナ禍の先行きについての肯定的な確信は、低いマスク着用率と関連していた。

 そして975人が参加した3番目の調査では2020年のアメリカ大統領選挙に際し、選挙の結果についての確信、および投票した候補者が敗北した場合の暴力への支持が示されたのである。つまりトランプに投票し、トランプが勝つと確信していた有権者は、選挙が「不正」であると信じる可能性が高く、それに続く2021年1月6日のアメリカ国会議会議事堂襲撃事件において、暴力を支持する可能性が高かったというのだ。

 こうした研究結果から将来を確実視することは、不十分な情報探索と反社会的行動に関係していると結論づけている。今後はこの関係の根底ある認知プロセスの解明が課題になるということだ。今のこのご時世の中、旅行を計画するうえで「キャンセル保険」を検討するのはある意味で懸命な態度ということにもなりそうである。慎重に旅の計画を立てたとしても何が起こるかわからないのだ。

ベトナム料理店で初めて「ブンチャーハノイ」を賞味

 再び駅の南口までやって来て、ガード下の通りを進む。高架線を支える防波堤のようなコンクリート壁が続く通りは所々けっこう殺風景だ。それでも左側のほぼ住宅地エリアにはいくつかの飲食店の明りが点在している。

※筆者撮影

 ガード下沿いに歩き、ラーメン店を過ぎて少し進んだところに、明らかに最近オープンしたであろう新しい看板と煌々とした照明のお店が見えてきた。

 看板の店名には見覚えがある。高田馬場にもあるベトナムのフォーのお店だ。食事というよりも飲みたい気分であったのだが、フォーは食べたい気がする。ここで見かけたのも何かの縁だ。入ってみることにしたい。

 ガラス張りの店先から中の様子は丸見えでなかなかお洒落なインテリアなのだが、中に入ってみるとさらにスッキリした東南アジアのカフェのような店内だ。フードコートをもう少しお洒落にしたといった感じだろうか。

 入口から少し入ったところにタッチパネル式の券売機があり、今まで食べたことがないつけ麺スタイルの「ブンチャーハノイ」のアイコンをタッチしてみた。画面のビジュアルで見る限り、けっこうな量の焼肉もあってボリュームがありそうだ。

 お店の人に食券を渡し、調理場の前にカウンター席もあるのだが2人掛けのテーブル席に着く。店内の席は半分ほど埋まっているのだが、見たところほぼベトナム人の若者ばかりである。

 今の東京の一部の飲食店はなかなかすごいことになっていて、このようにお客がベトナム人ばかりのベトナム料理店もあれば、中国人ばかりの中華料理店もある。さらにムスリム系や、インドやパキスタン、ネパール、ミャンマーなどの料理店でも、お客は同郷人ばかりというお店は少なくない。

 その意味ではニューヨークやロサンゼルスのように“人種のモザイク”化が日本の都市部でも進んでいるのかもしれない。多国籍の人々が交わる環境がある一方で、同郷人でコミュニティを作りがちになるのは相互支援の面からも無理もないことなのだろう。

※筆者撮影

 料理がやって来た。ヘルシーで美味しそうなビジュアルなのだが、よく見ると麺も焼肉もかなりの量である。食べきれるだろうか。

 日本のそうめん状のライスヌードルを箸でつまみ上げてスープに浸してから啜る。文句なしに美味しい。見た目は薄くて淡白に思えるつけ汁だが、しっかりと魚醤の風味が効いていて甘じょっぱい。肉団子もゴロゴロ入っている。

 焼肉はしっかり焼かれた豚肉で香辛料が効いている。量もたっぷりある。完食すればきっとお腹いっぱいになってしまうだろうが、この味付けならば飽きることなく最後まで食べられそうだ。

 訪れたかった立ち飲みの店に行けなかったのは残念だが、“不確実性の時代”であるからこそ、偶然にこうした珍しく美味しい料理にありつけたりもするのだろう。

文/仲田しんじ

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