2022年10月1日から改正育児・介護休業法が施行され、新たに「産後パパ育休(出生時育児休業)」が導入されます。
特に男性にとっては、制度の柔軟化によって育児休業を取得しやすくなります。近いうちに子どもの誕生を控えている方や、将来的に子どもを持ちたいと考えている方は、新たな育休制度の内容を確認しておきましょう。
今回は、2022年10月から開始される産後パパ育休制度のポイントをまとめました。
1. 産後パパ育休(出生時育児休業)とは?
「産後パパ育休」とは、子どもが誕生した直後の時期に、主に男性労働者が取得できる特別の育児休業です。育児・介護休業法では「出生時育児休業」と定義されています(改正育児・介護休業法9条の2第1項)。
通常の育児休業とは別に、より柔軟な形で取得できるのが産後パパ育休の大きな特徴です。産後パパ育休の導入により、男性労働者の育休取得率向上が期待されています。
1-1. 産後パパ育休を取得できる期間・取得可能日数
産後パパ育休は、子の出生後8週間の期間内に限り取得できます(改正育児・介護休業法9条の2第1項)。
産後パパ育休の取得可能日数は、最長で4週間(28日間)です。
1-2. 産後パパ育休の申出期限
産後パパ育休の取得は、原則として休業開始日の2週間前までに申し出なければなりません(改正育児・介護休業法9条の3第3項)。ただし事業主の判断により、期限経過後の申出を受け入れて産後パパ育休の早期取得を認めることは可能です。
なお労使協定により、産後パパ育休の取得申出が円滑に行われるようにするための雇用環境の整備など一定の措置を定めている場合には、申出期限を休業開始日の1か月前まで繰り上げることが認められます(同条4項)。
いずれにしても、休業直前の申出は認められない可能性が高いので、産後パパ育休の取得を検討している方は、早めにスケジュールを計画しておきましょう。
1-3. 産後パパ育休は分割取得可能
産後パパ育休は、2回まで分割して取得することが認められます(改正育児・介護休業法9条の2第2項第1号)。
家庭の事情に応じて取得時期を調整できることに加えて、休業1回当たりの離脱期間を短くすることにより、仕事への影響を抑えやすい点も産後パパ育休の特徴です。
ただし、産後パパ育休を分割取得する場合には、初回の取得時に分割取得をする旨および取得期間をまとめて申請しなければならない点にご注意ください。
1-4. 産後パパ育休期間も就業できる
労使協定で指定された労働者に限り、産後パパ育休期間中も就業することも可能です(改正育児・介護休業法9条の5第2項)。実際に就業する日程は、事業主と労働者の間で調整を行ったうえで決定されます(同条3項~5項)。
育休期間中の就業を認めれば、休業による仕事への影響を抑えられるため、さらに育休取得を促進する効果が期待されています。
2. 産後パパ育休は「出生時育児休業給付金」の対象
産後パパ育休を取得した労働者は、申請により「出生時育児休業給付金」を受給できる場合があります。
2-1. 出生時育児休業給付金の支給要件
出生時育児休業給付金を受給できるのは、産後パパ育休の取得者のうち、以下の2つの要件を満たす方です。
①休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業時間数が80時間以上の)月が12か月以上あること
②産後パパ育休期間中の就業日数が一定日数※以下であること
※休業期間に比例して変動
(例)28日間の休業→10日(10日を超える場合は80時間)、14日間の休業→5日(5日を超える場合は40時間)
2-2. 出生時育児休業給付金の支給額
出生時育児休業給付金の支給額は、以下の計算式によって求められます。
出生時育児休業給付金=休業開始時賃金日額※×支給日数×67%
※休業開始時賃金日額:原則として、休業開始前6か月の賃金を180で除した額
なお支給日数は、育児休業給付の支給率67%の上限日数である180日にカウントされる点にご注意ください。
(例)
出生時育児休業給付金を28日間受給した場合、支給率67%の育児休業給付を受給できるのは残り152日
2-3. 出生時育児休業給付金の申請期間
出生時育児休業給付金を申請できるのは、子どもの出生日の8週間後の翌日から起算して2か月後の月末までです。
(例)
子どもが2022年10月5日生まれの場合、2023年2月28日までに申請
※「出生日の8週間後の翌日」は2022年12月1日
※2022年12月1日から起算して2か月後の月末は2023年2月28日
会社を通じて申請ができますので、人事担当者などに手続きをご確認ください。
3. 出生時育児休業給付金は非課税、社会保険料も免除
出生時育児休業給付金は、額面の金額は通常の給与より減るものの、所得税・復興特別所得税・住民税が非課税となります。
また、産後パパ育休の取得期間中は、健康保険・厚生年金・国民年金の保険料が免除となります。
そのため、産後パパ育休を取得しても、実際の手取り額は通常の給与から大きく変わらないというケースが多いです。公租公課に関する優遇措置があることも踏まえて、2022年10月以降は、ぜひ積極的に産後パパ育休の取得をご検討ください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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