最低賃金が上がると労働者は助かる!最低賃金制度は労働者が賃金をもらう権利を法律で保護するルール
「最低賃金制度」という言葉がある。
これこそ雇用され、労働する全ての立場の人を守るための大切な制度である。
厚生労働省の公式ホームページに見る「最低賃金制度とは」という項目に、その説明が詳しく記載されている。この制度が何故労働者を守るものなのかについての分かりやすい記述の一部を、引用をさせていただきたい。
「最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。」
上記のように、最低賃金制度は、労働者が不当な賃金状況で労働を強いられることを法的に防ぐためにも、必須の制度なのである。
もしも雇用主が最低賃金以下の給与で労働者を就労させていたことが発覚した場合、雇用側には50万円以下の罰金が定められるなどのペナルティが課せられることとなる。
最低賃金制度とは、当たり前の権利を労働者が等しく享受するためには欠かせないルールと言える。その最低賃金制度で担保される給与が、間もなく全国的に増えることが決定した。
相次ぐモノの値上げ、消費者個々負担軽減のための最低賃金増額措置
厚生労働省・中央最低賃金評議会の小委員会は8月1日に最低賃金の全国加重平均31円引き上げ(平均時給961円)とする目安をまとめ、これがテレビやネットニュースなどでも広く報じられた。
この31円という増額は、過去最大の引き上げ額であるという。
昨今は物価の高騰により、モノの値段が短期間のうちに二度ほど引き上げとなるなど、消費者の財布を圧迫し続けている。
この家計の負担が課せられている現状を鑑み、31円もの増額となった。
NHKは2日に「最低賃金 過去最大“全国平均31円引き上げ”答申 厚労省審議会」という記事を配信している。
内容に関しては前述の概要をより詳しく説明するものとなっており、最低賃金の引き上げに関する昨今の経緯にも触れている。
その部分から一部を以下に引用させていただきたい。
「引き上げ額は昨年度の28円を上回り、最低賃金が時給で示されるようになった2002年度以降で最大です」
上記のように、すっかりモノの価格が上がったことでつい忘れがちではあるが、実は最低賃金は2021年時点で全国平均28円増となっている。
時給が平均で28円増えたぐらいでは、もはや消費者が消費行動を円滑に行えなくなっているほど、昨今の不景気は著しい。そこで2022年にはさらなる賃金の引き上げと相成ったわけである。
最低賃金の底上げ、いつから適用?
今回、全国平均でさらに31円の最低賃金引き上げが行われることで、全国の平均時給は961円となる。
当然地域格差はあるものの、これによってある程度、消費者の生活水準が向上する可能性はある。
気になる適用時期だが、前述のNHK記事によると「実際の引き上げ額は今後、都道府県ごとに設置されている審議会での議論を経て決まり、新しい最低賃金はことし10月から順次、適用される見通しです」と説明されている。
順調に行けばあと2か月少々で、昨年に続いて今年も時給がアップするため、労働者にとっては若干ではあるものの、これで確実に収入が増えることになる。
ちなみに地域別の最低賃金引き上げの目安は、A~Dの4ランクに分けられており、東京や大阪などの大都市がAランク。京都、広島などがBランクでどちらも31円。
北海道、宮城、広島などCランクと、青森、愛媛、沖縄などDランクが30円の賃金引き上げ予定となっているとのこと。
働いても働いても、収入と支出のバランスが悪い状況を少しでも下支えするための、今回の賃上げ。
これが奏功すれば労働者の生活は楽になるのだが、果たして…。
時給引き上げは嬉しいが、企業の体力は大丈夫なの?
ところで、労働者側として考えると相次ぐ最低賃金の上昇は、額面は微々たるものとは言え嬉しい措置ではある。
しかし一方で、雇用する側はこの賃金引き上げにどこまで対応できるのか、少し気になってしまう部分もあるところ。
先ほど紹介したNHKの記事には、厚生労働省の審議会において「長引くコロナ禍や原材料高に苦しむ企業も少なくないとして、答申では、生産性の向上や適正な価格転嫁など、引き上げ環境の整備に向けた政府の支援を求めました」という記述も見られる。
最低賃金の引き上げをするならするで、企業側の体力にも気を配らないとならない。
既に、賃金の引き上げが企業の負担となっている事例というものもあるようで、たとえば厚生労働省の福岡労働局は、そういった企業向けの相談窓口や支援制度などをアナウンスするホームページも用意している。
こういったものを適時頼って、雇用側も最低賃金の引き上げに対応しなければならないわけだから、不景気下では労働者もしんどいが、雇用主も似たような苦労があるということなのだろう。
10月以降、平均時給がさらに上がった折には、各自治体でこのような制度に頼る企業も、もしかしたら増えるのかもしれない。
それにしても、正直なところ、時給が30円ほど上がった程度では焼け石に水と思えるほど、モノの値上がりが著しいのも事実。
元々日本はもう30年以上不景気が続いているし、コロナ禍やウクライナへのロシアの侵攻など、情勢が厳しい理由は目に見えているので仕方がない事態ではある。
給与だけでは生活が苦しいものだから、マイナポイントの受給など、いわゆるポイ活に精を出すという人も年々増えてきているし、メディアでもポイ活のノウハウを指南する特集がたびたび組まれるようになった。
理想を言えば、労働以外の収益に頼らずとも、不自由のない消費行動を実践できるのが望ましいが、現状それもなかなか困難。
この10月の最低賃金引き上げが、果たしてどの程度労働者の消費行動に良い影響をもたらすのかについては、しっかり推移を観測する必要がある。
文/松本ミゾレ
編集/inox.
【参考】
厚生労働省「最低賃金制度とは」
NHK「最低賃金 過去最大“全国平均31円引き上げ”答申 厚労省審議会」
厚生労働省福岡労働局「賃金の引き上げが負担になっている」