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TikTok、YouTube、Instagram…なぜ「縦型動画」に夢中になってしまうのか?

2022.08.15

TikTokやYouTubeのショート動画、Instagramのリールなど、縦型のコンテンツが身近な存在となったと感じている人は多いのではないだろうか。動画だけではなく、漫画やAV、ドラマなど縦型のものが次々と作られている。ここまで縦型のコンテンツが普及した背景とはいったいなんなのだろうか。そして、コロナ禍で縦型コンテンツは私たちの生活にどう影響したのか。消費文化やマーケティングに詳しい、ニッセイ基礎研究所の廣瀨涼氏に話を聞いた。

2017年以降スマートフォンのためのコンテンツが増加

AppleがiPhoneを2007年にアメリカで発売し、2008年には日本でも販売開始した。ここからスマートフォンが身近な時代となっていった。このスマートフォンの使い方の変化と、縦型コンテンツの増加が関係しているという。

「スマートフォンが発売された当初は、インターネット上のコンテンツを消費する手段の主流はパソコン。スマートフォンの役割は、横画面のために作られているコンテンツを見せていただいているという位置づけでした」

「令和3年度情報通信白書」によると、個人の「スマートフォン」の保有者の割合が、2018年には79.2%、2020年では86.8%と9割近くなっている。また、2020年のインターネット利用率は83.4%であるが、その中でもスマートフォンによるインターネット利用率は68.3%となり、パソコンやタブレット型端末などと比べても、もっとも利用率が高い。

「2017年くらいから、縦型動画がマーケティングに有効であるという声が出始めました。2018年以降にはスマートフォンの普及率が8割を越え、コンテンツ側もパソコン用とスマホ用のサイトを別に作るなど、縦型のコンテンツが増加していったのです。特に、ここ数年は、大手キャリアが3G終了を発表したことで、携帯からスマートフォンにぐっと流れが変わりました」

縦型の魅力は、スマホをシームレスに使えることと没入感

スマートフォンの普及という社会的な背景があったうえで、縦型コンテンツというのは私たちにとって、どういう点が魅力的なのだろうか。

「現在、縦型コンテンツが好まれるいちばんの理由は、スマートフォンをシームレスに使えるということです。パソコンと相性のよい横型のコンテンツをスマートフォンで観ると、縦から横にわざわざ持ち替える必要があります。昔に比べインターネット上の情報も増え、我々が浴びている情報量が圧倒的に多くなったことで、処理しないといけない情報も増えました。同時にいろいろなアプリを開き、適宜切り替える人がスムーズに使うためには、縦で持ち続けられる画面が理想的です。

それ以外の理由として、没入感を得られやすいというメリットも二番目に挙げられます。横型コンテンツだといろいろな情報が画面に映り込みますが、縦型コンテンツだとポイントとなるものがフルスクリーンに映されます。これにより、情報のインパクトが大きく、情報がストレートに伝わったり、集中しやすかったりします。また、ドラマであれば登場している人物に共感しやすいという側面もあるでしょう」

コロナ禍の人恋しさを縦型動画が埋めた

忙しい日々の中、スマートフォンを少しでも効率よく扱いたいというニーズにより、縦型コンテンツは次々と増えていった。そんな中起こった新型コロナウイルスの蔓延は、縦型コンテンツの増加にどういう影響を与えたのだろうか。

「コロナ禍で通勤や通学時間も減り、ゆとりのある時間が増えた人も多くいると思います。Netflixなどのサブスクリプションの加入者も増加したことで、効率よく見られる縦型コンテンツの需要は落ち着くかと思われました。しかし、実際は逆でした。時間が生まれた分、世界的にTikTokを中心に縦型動画コンテンツが多く生成され、供給過多の状態となり、慌ただしくコンテンツが消費されていったのです」

当初、日本でTikTokといえば、若い世代を中心に踊りなどを披露するものというイメージが強くあった。しかし、海外の事情は少し違っていたという。

「特に北米などでは、かつて存在したVineのようにおもしろ動画や実験動画、商品レビューなど短い時間で娯楽性を得られるプラットホームとして幅広い層で利用されてきていました。そのため、ステイホーム中において、暇つぶしに家でできる娯楽性の強い動画を発信する人々が増え、動画数も総じて増加していきました。日本でも、この海外の動画を観て、その中から再現が可能な動画をマネして投稿する層が増えていったのです。

また、YouTuberも、TikTok を大いに活用するようになりました。YouTubeで発信している動画のハイライトを投稿したり、TikTokのmeme(ミーム)を投稿したりすることで、YouTubeへの導線的な役割として利用する人が増えていきました」

Netflixなどのサブスクリプションが増えたこと自体も、縦型コンテンツが好まれる流れに少なからず影響を与えたという。

「サブスクで契約している動画に関してはパソコンやテレビで観て、スマートフォンを手元でいじるという、“ながら見”という使い方が増加したのです。スマホを縦で持ち、シームレスに使うという形は毎日が忙しくなくとも重宝されました」

誰しもが発信者になることができる場があることで、多くのコンテンツが生成。その生成されたコンテンツを時間があるからこそ次々と消費することができた。そして、その行動の裏には、自粛ならではの心理もあるという。

「コロナ禍では人と触れあうことができませんでした。そういう状況だと、人を消費したいという心理はかなり大きかったはずです。実際、ポコチャや17LIVEなど配信動画アプリの需要はぐんっと高まりました。また、アイドルの握手会などがオンラインで行われるようになるなど、推し活の側面でも画面上での接触や動画配信は、推しとコミュニケーションをとる上での重要なツールになっていました。

没入感のある縦型コンテンツをプラットホームにする配信サービスは、疑似対面コミュニケーションができるものとして、人との距離を近くに感じたい、親近感を得たいというニーズを満たしてくれるものになっていたと思います」

推しは縦型動画、グループ全体は横型動画で観る時代に

現在、コロナウイルスの流行はまだまだ落ち着いていないものの、通勤通学は当たり前のように行なわれ、慌ただしい生活は戻りつつある。コロナ禍で一気に増えた縦型コンテンツのニーズは今後どうなるのだろうか。

「隙間時間でコンテンツを消費したいというニーズは継続してあるため、縦型は今後も重宝されるでしょう。特に、Z世代は“タイパ(タイムパフォーマンス)”というものを大事にしていて、流行りや気になるものに対して、時間をかけずに情報を得たいという心理があるようです。TikTokでレビューを見たり、横型のロングの動画の面白い部分を縦型のショート動画で観たりして、自分にとって時間やお金をかけて得る必要があるものか否かの取捨選択をしています」

今後は、縦型に向いているコンテンツ、横型に向いているコンテンツと、より住み分けもされて発信されていく可能性も高いという。

「縦型は横型に比べて没入感があるからこそ、集中して観ると疲れるという側面があります。そのため、縦型はショート動画との相性がいい。逆に横型は、画面上にいろいろな情報があることで長時間観ていても負担が軽減される。映画やテレビのように、いちどに多くの情報が発信されているものは横型の方が相性がいい。それぞれにメリットがあるため、コンテンツ自体も横向きが向いているか、縦型が向いているかというのをより見極めながら発信していくようになると思います。

また、ひとつのコンテンツから2種類の動画が配信されるということもあり得ます。日本テレビの“MUSIC BLOOD”という番組は、アーティストのライブ映像を縦型でも出しています。グループ全体のライブを見るのであれば横型がいいですが、推し一人をずっと追いかける動画を観るのであれば縦型の方が向いている。こういう風に、今までは横型しかなかった動画のなかに、特化した使われ方で縦型が参入してくるという形もあるでしょう」

廣瀨涼さん
ニッセイ基礎研究所生活研究部研究員。専門は現代消費文化論。マーケティングやブランド論、サブカルチャーなどにも精通。「オタクの消費」を主なテーマとする。若者(Z世代)の消費文化についても、講演や各種メディアで発表を行う。NHK「BS1スペシャル-『“Z世代”と“コロナ”』」、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、TBS「マツコの知らない世界」などで製作協力。

文/田村菜津季

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