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巻きスカートでパリコレに参加する大学准教授が男性にスカートをすすめる理由

2022.08.13

ありまままの自分を表現し心躍るファッションを追求する大学准教授と、広島の高等学校に話を聞いた

今年9月、男性も女性も、障がいのある人もない人も穿きこなせる巻きスカート「ボトモール」でパリ・コレクションに参加する准教授がいる。

兵庫教育大学准教授の小川修史(ひさし)先生。「bottom’all(ボトモール)」というユニセックススカートで「パリ・コレクション2023ss」の期間内にファッションショーを実施するという。

「スカートは女性が穿くもの」「男性のスカート着用はハードルが高い」そんな風潮がまだまだ強いが、小川先生は40歳を超えてからスカートと出会いスカートを愛している。

「スカートは年中穿いているわけではありませんが、大学で講義をする際や街歩きはほとんどスカート。夏は涼しいですし、冬はパンツの上に穿くとかなり温かいです」(小川先生)

ファッションに無頓着だった小川先生はいかにしてスカートに魅了されたのか?スカートの魅力、そして「ボトモール」とは?パリコレ直前の貴重な時間を頂戴し、話を伺った。

スカート一つでおしゃれの扉が開くなんて思いもしなかった

そもそも大学での小川先生の専門は特別支援教育。特別支援教育とは学校教育において障がいのある幼児や生徒の自立、社会参加への主体的な取り組みを支援するための指導・支援を行なうもの。

その研究をしている経緯から、現在「一般社団法人日本障がい者ファッション協会代表」を務める平林景さんと出会い2019年に協会の副代表に就任。それがスカートと出会う、そもそものきっかけだった。

「協会を立ち上げた理由は『障害の有無や性別に関係なく、誰もが心躍るファッション』を世界に流行させることでした。『障がいのためデニムの着脱が困難で諦めた』という男性の声に出会い、着脱簡単なボトムスを追求する中で、スカートの魅力に気づいたんです」

「巻きスカートなら車椅子に置いて座って巻けば障がいがあっても簡単に着脱できますし、男性でも穿けるスカートを開発すれば性別に関係なく楽しむことができる。こうした経緯で『男性でも気軽に穿けるスカート』を追い求め、自分も穿くようになりました」

ーー開発でこだわった部分は?

「やはりスカートはフェミニンのものが多く、自分も試してみたのですがコーディネートが難しかった。そこで男性でも穿きやすいようにフェミニンな要素はなるべく避けて、ワイドなものではなくストレートなラインを意識しました。生地もダークなテイストのものを使用。トップスとの合わせやすさに配慮しています」

腰回りはマジックテープを採用。車いすでも一人で着脱できる。

それは全ての人が愛用できるボトム「ボトモール」と名付けられた。スカート、パンツに続く「第三の選択肢」として広めるべく、また病気や障害でおしゃれを諦めてしまう社会を変えようと活動している。ちなみに「ボトモール」とは『ボトム』と『オール』の造語だとか。みんなが穿けるボトムってことだ。

ボトモールを発表した途端、SNSで拡散され、取材も殺到。大きな話題に。しかし小川先生は当初、周りの目が気になったという。

「元々、おしゃれに興味が強い人じゃなかったですし最初は『どう見られるのだろう?』という不安もありました。でも、スカートを穿いていると今までほとんど言われたことがない『オシャレですね!』と声をかけていただく機会が多くなり、それ以降は気にならなくなりました」

それでも抵抗がある男性が多いのは事実。小川先生は「大切にしているのは『選択肢』。パンツという選択肢に新たに『スカート』という選択肢を加えることが大切で、そのためには両方をシーンに合わせて使い分けることが必要だと考えています」とも語ってくれた。

性別による制服の区分をやめる!大きな決断をした広島・加計高校

こんな調査がある。日本全国の高校生を対象にしたアンケートで「性別に関係なく制服のタイプを自由に選べる制服の選択制を実施しているか?」を聞いたところ、57%の高校生が「実施している」と回答。「実施していないが今後する予定」を含めると60%だった。

さらに、制服の選択性を支持している高校生は9割近くという結果に。SNSなどの影響もあり、若者たちの間でも多様性、ジェンダーレスといったテーマが身近なものになっているという。

2019年、学校の制服を一新した学校がある。多様性を尊重し制服のズボンもスカートも性別に関係なく選べるようにしたのが広島県立加計高校だ。

「高校生は社会人になる一歩手前。なので、上下を揃えたスーツタイプに変えると同時に性別による制服の区分をやめました」

そう語るのは加計高校の二川一成校長。山間にある小さな高校がなぜそのような取り組みを決断したのか?

「中山間地域にある本校は冬季の寒さが厳しくパンツも選択できるほうが良いと考えたのがそもそものきっかけです。当然、性的マイノリティーの生徒への対応も考えてのことです」

現在、スカートを選んで穿いている男子生徒は全体の5%ほど。各学年で一名の男子生徒がスカートを着用しているという。スカートを選んだ男性生徒の言葉で印象に残っていることを聞いてみた。

「最初にスカートを穿いた生徒は『スカートを穿いた男性がかっこよく見えたので自分らしさを求めて着用した』と話していました」

「しかし、男性がスカートを穿くことに抵抗感を抱く人もいるということに気づかされたといいます。彼はその経験を踏まえて『性別を色眼鏡で見るんじゃなくて、誰もがありのままの自分を表現できる社会が一番いい』と話してくれました」(二川校長)

加計高校は全国から生徒を募集しているだけでなく、世界募集も行ないベトナムからの編入学生もいる。グローバルな環境作りを心がける中、選択自由の制服にして良かったこととは?

「最初にスカートを穿いた男子生徒の影響もあり『彼の行動を機に生徒会に入ったり学校行事に積極的に参加することができた』という生徒や『彼の姿を見て自分も自由にやっていいんだなという感情が芽生えてきた』という声もありました」

「個人の色が出て、たくさんその色が出てきたらもっとおもしろい学校になると思います。多様性を認め、自由な発想で挑戦しようとする校風になってきたように感じます」

現状、各学年でスカートを着用している男子生徒はたった一名だけ。今後どのようにして選びやすい環境作りをしていくのか?

「正直、最初にスカートを穿いた生徒は、今は穿いていません。彼の目的は達成できたのでしょう。彼の行動をみて現在スカートを穿いている男子生徒は『この学校でなら穿ける』とスカートを選んだようです。自由に選ぶことの雰囲気はできていると思います。校内では特に違和感などはありませんし、生徒達はむしろ枠にはめようとしない学校に安心感を抱いているように思います」

性別や障がいの有無にかかわらず心躍るファッションを世界に! 

巻きスカート・ボトモールを引っさげ、間もなく開催されるパリコレに挑む兵庫教育大学准教授の小川修史先生。スカートを穿いて良かったことは?

「カッコいいと言われる機会が増えたのも嬉しいのですが、何より学生から『先生、応援してます!』と声をかけていただく機会が増えたことが嬉しいです。『障害の有無や性別に関わらず誰もが心躍るファッションを世界に流行させる!』という自分の活動が学生に影響していること、加えて『先生を見て,私も自分の夢に挑戦してみることにしました』と言われることも。教師としてこれほど嬉しいことはありません」

ーーパリコレへの意気込みをお願いします!

「パリコレで伝えたいことは私達の活動の根幹にある『ネクストUD』の考え方です。障害のある方やジェンダーの悩みがある方が当たり前にファッションを楽しめる世の中を作るためには、障害の有無や性別に関わらず誰もが「楽しむ」ことを目指した次世代のユニバーサルデザインが必要になります」

「私達はパリコレを成功させることが目標ではなくパリコレを通してネクストUDの魅力を世界中に発信したいと思っています。2022年9月27日、フランスのパリで開催されるパリコレでの我々の活動にどうぞご期待ください。そして誰もが楽しめる社会を一緒に作っていきましょう!」

取材協力
小川修史准教授ツイッター
@ogatti21

一般社団法人日本障がい者ファッション協会HP
https://jpfa-official.jp/

広島県立加計高校HP
http://www.kake-h.hiroshima-c.ed.jp/

取材・文/太田ポーシャ

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