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5G通信のメリットを実感しているユーザーはどれくらいいるのか?

2022.08.13

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、5Gの現在地について話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策を行っております

ソフトバンクの5Gが快適!

房野氏:ドコモが、5G通信の国際ローミングを開始しました。5Gはグローバルでもかなり広がっている印象で、一旦、ここで総括してみたいのですが、とはいえ、5G本来の実力通りに使われているかは疑問ですよね。

房野氏

石川氏:先日、ラジオの収録でクアルコムジャパン社長の須永順子さんに来てもらってお話したんです。エリア的には5Gと表示される場所が増えたけれど、やっぱり4Gの延長線上でしかないというか、4Gと変わっていないよねと。周波数は4Gの転用だったり、サブ6GHz帯だったりして、5Gとして求められるものにはなってないよねと。5Gの真価を発揮するのはミリ波なんですが、ミリ波ってどれくらい広がっているのかとか、ミリ波の対応端末って19万円だよね、とか(笑)。5Gが始まってもうすぐ2年半になろうとしているけれど、5Gらしさが活かされているかというと、何もないかなぁと。今のところ、あんまり体感できてないなっていうのが正直な感じですよね。

石川氏

石野氏:5Gをユーザーが体感できる一番のアプリはスピードテストですね(笑)

石野氏

石川氏:キラーアプリがスピードテストしかない。

法林氏

石野氏:まだスピードテストですよね。動画をスムーズに視聴できるようになっていますが、エリアがまだまだ狭い。ソフトバンクとKDDIは、転用周波数とはいえ頑張って5Gエリアを広げていて、安定して高速通信ができるようになったかなと思うんですが、逆にドコモは歯抜けのように5Gを入れたせいで、パケ止まりが起こったり、転用も始めたばかり。ドコモに関しては5Gが始まってから、ネットワーク品質が、落ちたと断言まではできないんですが、「地下で入りにくい」といった声をよく聞くことがあります。5Gは総括するほどにもなっていないというか、道半ばというか、これからという感じが強いです。

 ドコモの場合、5G対応端末で5G契約になってるSIMに対しては3Gを打ち切っちゃっているんですよ。それもあって、電波の入りが悪くなっていると感じてる人がちょいちょい出てきている感じがします。僕だけじゃなくて、何人か「ドコモ、入りにくくなってるよね」っていう声を立て続けに聞くので、ちょっとなぁって気がします。

法林氏:思い込みもあるかもしれないし、障害を起こしたばかりの状況下で言うのもアレだけど、ネットワークの作り方はKDDIの方が上手かなってちょっと思っている。ドコモは、エリアに関しては、見せ方も含めてあまり上手じゃないなと感じる。ただ、主要駅はすごいよね。僕の故郷である神戸の三ノ宮駅周辺はもうバリバリ5G。大きい駅は絶対サポートしているし、JRの駅、新宿駅周りなんかもすごく良いけれど、住宅街に入ると途端にあれ? という感じになる。みんなはどう?

石野氏:ウチはすごく近くに基地局があるのでいいです。

法林氏:家の横に石川家専用の基地局が建っているんでしょ?(笑)

石川氏:いやいや(笑)、ダメですよ。家の中に5Gが入るのはソフトバンクくらいですね。

石野氏:そう、ウチもソフトバンクは5Gが入るんですよね。

石川氏:明確に考え方が違っていて、ドコモは最初から「瞬速5G」といって「新しい電波で5Gのエリアを作ります」と。KDDIとソフトバンクは4Gの周波数転用とかサブ6GHz帯で、「とりあえず5Gと表示されるところを増やしましょう」という感じ。そこは明確に違うのかなぁと。

石野氏:ソフトバンクの場合、転用の5Gでも繋がるとそこそこ速いんですよね。700MHzを4Gで使ってないってことは、5Gユーザーでそこを専有できるので、その分、速くなっているんだと思います。転用の5Gは4Gと変わらないと言われつつも、意外と速度が出ることがあったりするので、転用に関してドコモは裏目に出たなって感じがします。

石川氏:ソフトバンクは、ウィルコムを吸収して得たノウハウが生きている気がします。

石野氏:“パケ止まり”しない。

法林氏:そうね。5Gで繋がっている場所に行って、普通に快適に使える。auは使っていると、「スピードが上がらないなぁ、転用なんだろうなぁ」みたいな感じがする。ドコモはそもそも同じ場所で5Gになることがあまりなく、繋がっても詰まる。僕がドコモの5Gで快適で速いなと思うのは駅だけ。

グローバルベンダーの知見やノウハウが活きている

石川氏:ソフトバンクが典型ですけど、思うに、エリクソンと一緒にやっていて、そういったベンダーとがっつり組むことで、海外キャリアが持つエリア展開のノウハウを活用できていたりもするのかなと。KDDIもそうだけど、その辺の知見が活かされているような気がしなくもないです。その点、ドコモはドコモだけで頑張っているのかなっていう気がする。

石野氏:NECと富士通、でしょ。

法林氏:まぁ、国内メーカー陣営をメインで使っていると思いますね。

石川氏:そういうところがあると思うんですよ。

石野氏:それはありますよね。パケ止まりの時も、KDDIは同じことを事前に韓国キャリアなどの海外勢から事情を聞いていて対策を打っていた。ソフトバンクもやっぱり海外からの情報として、こうなることはあらかじめわかっていたから、パラメータを細かく設定したと聞いています。

石川氏:周波数を転用する時も、セルエッジ(基地局のエリアの境目)のところで速度が下がることがあるらしくて、そこをちゃんと調整するまでは表に出さないようにするらしいです。ネットワークの欠点がちゃんとわかった上で展開しつつ、言う時にはちゃんと言う、みたいにしているようなんです。

石野氏:パケ止まりが騒がれるまで、ドコモがそこに気づいてなかったのかなという感じがあるので、ちょっとどうなの? とは感じたところです。もっとグローバルの知見を活かした方がいいんじゃないかなと思う。

法林氏:経験値的に足りないのかなっていうのは少し感じるかな。自前の技術陣+ファミリー企業でなんとかしようとしてる感があって、なんかちょっとなぁと。

石野氏:第2世代のPDCは日本にしかなかった規格だし、日本が先行していったところもあったので、それでも良かったのかもしれないですけど、4G、5Gになってくるとグローバルなベンダーが強いし、開発も進んでいるので。

法林氏:やっぱり“LTEの父”はいるけど“5Gの父”はいなかった、みたいなところかな。

房野氏:LTEの時はドコモ、評価されましたよね?

石野氏:LTEは作ったけれど……

法林氏:エリア展開とは別だから。

房野氏:なるほど。でも、ドコモのLTEのエリア展開で問題を感じたことはなかったと思うんですが。

法林氏:当時とは環境が変わってきているからね。

石川氏:ドコモは「Xi(クロッシィ)」で4Gを始めた。その後、「iPhone 5」がLTEに対応して、ドコモも取り扱うようになった「iPhone 5s」の時に、各キャリアでバンバン、ネットワーク比較されたんです。あの時のドコモのスタンスは、「いやいや、3Gネットワークがまだまだ速い。全然3Gで行けるから」って感じで結構3G推しだったんですよ。一方、auは当時CDMA2000だったので、もうとにかく4Gに行かなきゃいけないということだったし、ソフトバンクはiPhoneをずっとやっていたってこともあったりして、やっぱりドコモは展開が遅かった。

3キャリアで扱いを始めた「iPhone 5s」

房野氏:そうでしたね。思い出してきました。

石川氏:ドコモは元々ユーザー数が多いから、新しい周波数へ移行しにくいってこともある。今回の5Gもなかなか転用できなかったっていうのは、そういう理由もあるんですよね。

法林氏:ドコモは昔からクオリティ重視でみんな作っちゃうんですよね。3Gサービス開始当初も品質を大事にしていた。KDDIは定額制を狙っていたので、それに見合うようにネットワークを構築した。その延長線上が今の状況じゃないですかね。

楽天モバイルの5Gや5G SAはどうなっている?

房野氏:楽天モバイルの5Gについてはどう思いますか? 私は同社の5Gエリアを体験したことがないんですが。

法林氏:二子玉川にありますよ。

石野氏:以前よりは広がっています。

法林氏:世田谷区の二子玉川の楽天本社付近の通りは、最初から5Gのまま移動できますから。他キャリアは5Gに繋がるのはスポット的ですが、楽天モバイルのあのエリアは移動できますからね。

石野氏:渋谷も結構、楽天モバイルの5Gが繋がるようになってきたかなって思います。が、他の3社に比べるとエリアは狭いですね。

石川氏:本来、楽天モバイルが一番5Gに力を入れて、バンバンデータを流して、ARPUを上げて通信料収入を上げていかなくてはならないんだけど、4Gの展開にリソースがさかれていますね。

石野氏:あと、5G SA。各社ともコンシューマ向けが弱い。

石川氏:KDDIが最初に5G SAを始めるかと思ったんだけど、多分、このまま行くとしばらく始められない感じもしますね。

石野氏:ソフトバンクはもう始めているんですよね。

房野氏:CPE(Customer Premises Equipmentの略。通信事業者のネットワークに直接接続されるブロードバンドルーター)じゃなくてですか?

石野氏:スマホでも始めているんですよ。5G SAに対応したスマホに、対応するSIMカードやeSIMを入れるとSAを使えるようになる。「Xperia 1 IV」とかが対応しています。

「Xperia 1 IV」

房野氏:5G SAが使える場所はピンポイントですよね。

石川氏:ソフトバンクの「AQUOS R7」の製品情報に最大通信速度が記載されていて、但し書きがあるんだけど「※7 埼玉県さいたま市中央区上落合一丁目の限定エリアで提供中です。」と書いてあった……

房野氏:ピンポイントですね。本当にコンシューマ向けとして幅広い地域で提供されるのですよね?

石野氏:KDDIはやる気、満々ですよね。

法林氏:ゲームとかではやろうとしているけれど、日常生活でどうこう変わることはないですよ。

房野氏:法人には嬉しいんでしょうか。

法林氏:切り売りができる。

石野氏:法人が嬉しいのと、キャリアとしては設備がシンプルになるというメリットがある。4Gのコアネットワークを使うNSA(ノンスタンドアローン)はシステムが複雑なので、それをシンプルにできるのは、通信障害の発生を抑えるのにも効果があるかなと。

法林氏:「これができるようになりますよ。それができるのは5G SAだから」という話に持って行ければいいんだけど、今はそうならないんですよ。

石川氏:結局、技術の話ばかり。「SAだからこうなりますよ」といっても、そこにはニーズがないよねとか、IOWNが導入されると薔薇色の世界みたいなことが言われますけれど、こういうことをやりたいからIOWNが必要だとか、これにはSAが必要という方向の話になっていない。何も変わっていないなと。

石野氏:4Gの時は結果オーライというか、たまたまスマホが出てきて、たまたまSNSが流行り、たまたまそれがミックスされてインフラの需要が爆発的に伸びた。意外とキャリアが思っていないようなところで、誰かが勝手にサービスを考えて、ドンと広がるってこともある。

房野氏:これ以上、速くなっても今のスマホでできそうなことが思い浮かばないですね。

石川氏:ビデオ会議とかオンライン記者会見がもっと安定して、もっときれいに伝わってほしいなって気がします。

法林氏:テレビでゲストが電話で話すことがあるじゃないですか。あの音声、全然良くないよね。昔から悪いと思う。5G SAになるから音がすごく良くなるとかだったら、SAにしようかって話になるかもしれないけど、そんな話はかけらもない。その辺りの見せ方も考えなきゃいけないかなと。

石川氏:昔、PHSは音が良いと言われていて、我々は評価していたけれど、一般の人は音が良いからPHSに変えるってことにはならなかった。たぶん、なかなか響かないんだろうなぁっていうのは理解しているんですけど、一方でこれだけ毎日ビデオ会議をしていて、音が聞こえなかったりブツブツ切れたりする中で、ミリ波に繋いだら画質が上がるとか、SAだったらもっと安定しますとかっていうことをやってほしいなぁって気がします。

法林氏:見せ方を含めてね。やっぱり体験が良くなる方向に行ってないんだよね。技術だけが先行しちゃっているんだよね。

石川氏:遠隔医療だ、自動運転だとかの前に、もっとリッチなコミュニケーションを提供してよっていう気がする。まぁ、キャリアの通信ネットワークが落ちても自動運転は関係ないですけど。

石野氏:そこまで任されていない(笑)

……続く!

次回は、キャリアショップのオンライン化について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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