キャンディメーカーとしてトップシェアを誇る「カンロ」は、2022年上半期過去最高益を記録した。飴は、10.6%の増収、グミは、なんと44.8%も伸びている。順調に伸長しているようだがこの秋には、3~10%順次値上げを予定している。材料費などのコストが急拡大する中、下半期では、それを吸収するのは困難という判断からだ。そこで、キャンディの新たなユーザー創出を視野にZ世代に向けた施策を行うという。どのような取り組みか、また、創業110周年の施策についても発表された。
ハードキャンディは、Z世代に人気がない
ハードキャンディは年代が下がるほど人気も下がっている。
1912年(大正元年)11月10日創業のカンロは、今年110周年を迎える。展開しているキャンディは、大きく分けて2種類。ハードキャンディである飴とソフトタイプのグミだ。飴は、関西出身の筆者にとっては、「飴ちゃん」と、ちゃんまでつけて大切にしているお菓子のひとつだが、Z世代は、ソフトキャンディであるグミを食べる人が圧倒的に多いとの結果がでている。
もちろん、昨今のグミブームも後押ししているのだろうが、これほどまで人気がわかれているとは、想像以上だ。もちろん、新たなキャンディも発売し、好評のハードキャンディもある。
そこで、2021年に発表した「KanroVision2030」達成のために、長期目線でのニーズの掘り起こしや市場を開拓するべく、4つの事業の取り組みをスタートする。なかでも、コア事業と位置付けているのが、Z世代への取り組みだ。
「KanroVision2030」達成へ向けた取り組みについて話すカンロ株式会社 代表取締役社長 三須和泰さん。
Z世代は、1996年以降に生まれた世代。キャンディのコアバリューを再発見するために、カンロはZ世代との共創をスタートさせる。Z世代の中でも、今回タッグを組むのは現役高校生だ。2022年8月初旬からスタートし、8月末には、進捗情報のリリースを出す予定だ。
また、2023年上期には、共創商品の発表会開催も視野に入れている。
「ひとつの商品ではなく、複数の商品を発表できるのではないかと考えています。Z世代向けのプロジェクトは、短期的ではなく行っていきたい」(カンロ株式会社 代表取締役社長 三須和泰さん)
見た目も印象的なPLANETキャンディなど、現在、Z世代にも好評のハードキャンディとはまた違った新たなキャンディが誕生しそうで、進化が楽しみだ。
新ブランド「アメージングカンロ」の第一弾が登場
ホシフリラムネ 2000円(消費税込み) 2022年8月30日発売。
キャンディの持つ可能性の提案として、キャンディが持つ本来の魅力を再認識し、キャンディの存在価値を上げる取り組みとして、「アメージングカンロ」をスタートさせる。
アメージングカンロでは、デジタルを活かし、味わいや食感だけでなく、見た目や楽しさなど、キャンディが本来持っている長所を最大化。ワクワクする体験を提供するという新シリーズだ。
第一弾として登場するのが、『満点の星空を閉じ込めて。』をコンセプトにしたラムネ商品「ホシフリラムネ」だ。星空をイメージした瓶に、星形のラムネを自分自身で入れることで完成する仕掛けで、自分だけの満点の星空を手元に集めるような特別な体験ができるラムネだ。
星型のラムネを入れた瓶を振ったときの軽やかな音でも、エモーショナルな世界観を体験でき、癒しやリラックスしてもらいたいと考えられている。発表会では、三須社長自らが、ラムネを入れた瓶を振って、その軽やかな音を聞かせてくれた。
インテリアにも合わせやすそうで、食べ終わったあとも再利用しやすく、これはギフトにしたら喜ばれそうだ。こちらは、おいしさや夢がギュッと詰まった自分だけのポケットのように、ここにしかない特別な製品や楽しい体験ができる「KanroPOCKeT(カンロポケット)」で販売される。
今後も、アメージングカンロの商品を定期的に発売し、キャンディを通して、アメージングな体験を提供していくという。第二弾は、2022年11月に登場予定。110周年の記念商品になりそうだ。
機能を訴求したキャンディを中国へ輸出
日本の工場生産で、中国で販売されるノンシュガーハードキャンディ。
グローバル事業の拡大として、日本国内の工場で生産するオリジナルの中国向け商品を、Amos社と総販売店契約を締結し、中国におけるブランド構築を拡充する。中国国内では、機能価値を訴求した飴商品に注目が集まっている。
飴といえば、糖が気になるところ。中国の糖尿病患者は、世界最多で国際糖尿病連合(IDF)の試算によると、中国の糖尿病患者の数は、2025年に3,2億人に達するという試算もある(36Kr Japan より)。中国市場では、当然のことながら糖化を気にし、ノンシュガーのニーズが高まっている。
日本におけるノンシュガーハードキャンディ市場で、カンロは、42%のシェアがあり、ノンシュガーなのに味わい深くておいしいと味にも定評がある。しかも、他社では味のために人工甘味料を使用している場合もあるが、カンロの場合は、一切使用していないそうだ。
日本製であること、100年以上の企業である信頼性を武器に、「『0糖1刻』ノンシュガーでくつろぎのひとときを」をコンセプトに、中国の人々がおいしいと感じるオリジナルフレーバーで展開する。コーヒーキャンディといっても、日本とは味が違うようなので、出張や旅行で訪れたときには、買ってみて、どのように好みの味が違うのか試してみたくなった。
飴を一粒誰かにあげるだけでコミュニケーションが生まれる。そんな、飴をあげる楽しさと、もらう楽しさをつくることをコンセプトにした「ヒトツブカンロ」。一粒というより、ちょっとしたお礼にも贈りたくなるプチギフトのシリーズだ。
そのサステナブルライン「ヒトツブカンロ earth」が、この秋スタートする。製造過程で発生する廃棄飴を原料にアップサイクルしたウェットティッシュなど、エコライン商品として9月から販売予定だ。
ハードキャンディは、現時点であまり若者には人気がないが、SDGsへの取り組みは、Z世代の方が積極的であることを考えると、より若者たちにキャンディを広める機会になるのではないだろうか。
・カンロ株式会社
https://www.kanro.co.jp/
取材・文/林ゆり