完全ワイヤレスイヤホンは、オーディオメーカーだけでなく、アップルやサムスン電子といった、多くのスマートフォンメーカーなどからも発売されている、競争の激しい市場。近年のスマートフォンには、イヤホンジャックが搭載されないことも多いことから、一気に普及していったともいえます。
もちろん、スマートフォンとの接続性に優れ、専用アプリから様々なカスタマイズが行える、スマートフォンメーカーのイヤホンも魅力的ですが、音のチューニングやバランス、耳への装着感を突き詰め、開発を続けるオーディオブランドの完全ワイヤレスイヤホンにも、魅力的な製品が多くラインアップされています。
そこで本記事では、日本有数のオーディオブランド「final」から、2022年7月28日に発売、1万4800円(公式ストア価格)の「ZE2000」を紹介していきます。
finalの完全ワイヤレスイヤホンとしては、2021年に発売された「ZE3000」に次ぐ2モデル目。型番が“2000”となり、販売価格も約1000円下がっていることから、ZE2000は廉価モデルのようにも見えますが、採用されているドライバーや本体のデザインは共通。では、両モデルの違いについても注目しながら、装着感や音質について紹介していきましょう。
デザイン・装着感
ZE2000は、ZE3000と同じく角ばったデザインを採用。一見、着け心地が悪そうな印象も受けますが、耳に接する面が3点のみになるデザインのため、軽快な装着感で利用できます。フィット感も高く、歩行中に使う程度であれば、ずれ落ちる心配もあまりありませんでした。イヤーピースも5サイズ同梱されているので、多くの人が耳に合わせやすくなっているのも、うれしいポイントです。
本体、充電ケースともに樹脂筐体を採用しており、軽量なのもZE2000の特徴。充電ケースはかなりコンパクトなので、ポケットに入れて持ち運んでもあまりストレスがありませんでした。こちらもZE3000から踏襲されている部分となっており、デザイン的にはほぼ違いがないといえます。ただし、ZE2000はアッシュグレーとマットブラックの2色、ZE3000はホワイトとブラックの2色展開となっています。
音質
ZE2000には、電気信号を音に変換する過程で発生する、音の歪みを低減する「f-Core for Wireless」というドライバーが採用されています。
また、バッテリーやアンテナといった、細かいパーツを内蔵しながら、イヤホン筐体内部の圧力を最適化する「f-LINK ダンピング機構」を採用。ソフトウエアでの音質チューニングでなく、イヤホンの設計、構造から音質にアプローチされているのは、オーディオブランドならではのこだわりかもしれません。
実はこの「f-Core for Wireless」や「f-LINK ダンピング機構」は、ZE3000でも採用されているのですが、ZE2000とZE3000では、音のチューニングに明確な違いがあります。ZE3000では、低音域から高音域までを、バランスよく精細に再生することに注力されていましたが、ZE2000では、低音と高音がより強調されています。
また、ボーカルの声も近い距離に感じられるため、ZE2000ではポップスやロックといったジャンルの音楽を再生するのがおすすめ。キック感も強く、EDMのような近年流行りの音楽でも、強みが存分に発揮されます。一方、多くの楽器が使われている、クラシックのような音楽の再生であれば、ZE3000のほうが長けている印象です。
もちろん、低音、高音が強調されているとはいえ、音楽全体のバランスが損なわれるほどではありません。全体のディテールを保ちながら、強調する音域を作ることで、より“音を楽しむ”ことができる製品です。
機能
コントロール機能としては、完全ワイヤレスイヤホンの定番ともいえる、本体側面のタッチ操作に対応。タッチ操作は、イヤホンを着け外しする際に触れてしまい、誤操作の原因となることも多いのですが、ZE2000では側面にある段差の外側のみがセンサーとなっているため、比較的扱いやすくなっています。
また、実際に使っていて便利に感じるのが、片方のイヤホンを充電ケースに戻した際に、自動的にステレオ再生からモノラル再生へと切り替わる「片耳モード」。片側のみでも音楽が存分に楽しめるだけでなく、バッテリーの節約という意味でも、重宝する機能です。
バッテリーはイヤホン単体で最大7時間、充電ケース併用で最大35時間となります。極端に長いわけではありませんが、一般的な使い方であればストレスなく使用できるでしょう。
また、イヤホン本体はIPX4の生活防水に対応しています。フィット感も魅力の製品なので、ワークアウト時などに利用するのもおすすめです。
1万円台で購入できる“音質にこだわった”完全ワイヤレスイヤホン
ZE2000は、内臓ドライバーや筐体、チューニングなど、音作りへのこだわりが詰め込まれた、オーディオブランドらしい完全ワイヤレスイヤホン。アクティブノイズキャンセリングやマルチポイントといった、近年のハイエンド製品に搭載されることの多い機能は省かれていますが、1万4800円という価格をみれば、妥協するべきポイントともいえます。
もちろん、音質は好みの分かれる部分なので、絶対に満足できるとは明言できませんが、finalらしい音のバランスや明瞭さは存分に味わえます。1万円台ながら、オーディオブランドらしいこだわりが感じられるので、気になる人はぜひ試してみてください。ZE3000と聞き比べをし、気に入ったチューニングのほうを購入するのもおすすめです。
取材・文/佐藤文彦