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【深層心理の謎】ネガティブな感情がある時のほうがパフォーマンスが上がる理由

2022.08.12

 傘が手放せない今日の天気のように、気分のほうも晴れがましくはない。その理由ははっきりしているので不安感はないが、いろいろと憂鬱である――。

少し憂鬱な気分になりながら中河原駅前を歩く

 身内関係の用事を昼までに終えて京王線・中河原駅に来ていた。朝から雨で気分も優れない。仕事も残っているので直帰しなければならないが、ちょうどお昼でもあるしどこかで何か食べてから帰ることにしよう。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 厄介なことに再来週あたりにもこの辺まで来なければならない用事ができてしまった。進めなければならない仕事があるのだが、こればかりは仕方がない。少しずつ仕事を前倒しで進めて調整するしかない。タイミングが悪いことにその週には歯科検診もある。なんだかちょっと憂鬱である。

 雨の駅前を傘をさして歩く。とりあえずスーパーマーケットのある大きな複合商業施設に向かう。

 再来週が過ぎるまではなんだか晴れない気分の日々が続きそうだ。しかし無理に気分をあげようとして妙な行動に出れば、それに時間を取られて自分で自分の首を絞めることになる。余計なエネルギーを使わないように、しばらくの間は気持ち多めに仕事をしながら、1日1日を淡々と過ごしていくしかないだろう。

 夏本番を迎えているが、ご多分に漏れずこのコロナ禍で多くの楽しみが奪われている。夏祭りの季節だが、東京でもいくつもの祭りが去年に続き中止になっているようだ。

 しかし行動制限がない以上、特に町内会や商店街レベルの小さな祭りは主催者の判断に任されているのも事実で、ついこの前の夕刻、住宅街を歩いていて久しぶりに「東京音頭」のメロディーが耳に入ってきた。たぶんコロナ禍になって初めてのことだ。近くで盆踊りをやっていたのである。各地の花火大会なども今年は開催を決めているところがいくつかあり、すでに行われた花火大会もある。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 駅前ロータリーの脇を歩き商業施設の入口までやってきたのだが、フロア案内を見てみると飲食店はどうやら某ハンバーガーチェーン店しかないことが判明した。けっこう意外に思えたが、他所から遊びに来るような街でないことは明らかであるし、地下の広いスーパーでは弁当や総菜類も豊富に売られているので、飲食店の需要はあまりないということなのだろう。

 仕方がない。ハンバーガーという気分ではないので、もう少し歩いて店を見つけることにしよう。前方には某餃子チェーンの店が見える。餃子という気分でもないのだが、その辺りに別の店があるかもしれない。

不安を逆手にとる「防衛的悲観主義」とは?

 駅前を歩く。駅前の通りを渡った反対側にもいくつか飲食店がありそうだが、ひとまずまっすぐ進むことにする。なさそうなら餃子の店でもいいだろう。

 相変わらず気分は晴れないのだが、そうはいっても清涼飲料水のCMでもあるまいし、常日頃からハッピーな気分でいるというのも不自然な話だ。いつも幸せな気分でいなければならないというものでもない。

 来るべき出来事へのより良い対処とパフォーマンスの向上のための戦略として「防衛的悲観主義(defensive pessimism)」が心理学の分野で最近注目されているという。防衛的悲観主義は、高望みするのではなく適度に低い期待値を設定することで、準備を怠ることなく、障害を落ち着いて克服しようとする戦略だ。


 個人は不安を誘発するイベントやパフォーマンスに備えるための戦略として、防衛的悲観主義を使います。

 防衛的悲観主義を実行する時に個人は、過去にどれだけうまくやったかに関係なく、自分のパフォーマンスに対する期待を低く設定します。

 次に防衛的悲観主義は、目標の追求に悪影響を与える可能性のある特定の否定的な出来事や挫折について考えます。起こり得る否定的な結果を想定することにより、防衛的悲観主義者はそれらを回避または準備するための行動を取ることができます。

 この戦略を採用すると防衛的悲観主義者は、そうでなければ彼らのパフォーマンスを損なう可能性のある不安を有利に利用することができます。

※「Wikipedia」より引用


 常に前向きな気持ちで日々の生活を送ろうという“ポジティブシンキング”は今や心理セラピーの主流であり、その方法論は過去を後悔したり、未来を憂いたりするすることなく、今を前向きにとらえることにフォーカスするものである。

 しかし人間は過去の体験から学び、未来でサバイバルするための計画を立てる生き物である。そう考えれば今現在を前向きに生きるというポジティブシンキングには、物事を自身にとって都合よく解釈してしまう“楽観バイアス”をはじめとする見過ごせない落とし穴があるともいえる。

 そこで見直されてくるのが防衛的悲観主義で、一般的にネガティブな気分はだまされにくく、懐疑的になるといわれている。そして過去を振り返って後悔することは、同じ過ちを繰り返さないための不可欠な精神的メカニズムでもあるのだ。

 実際に防衛的悲観主義はさまざまな分野で利用されている。たとえば近いうちに人前で話すことになることが判明した際、防衛的悲観主義者は、話している最中に次に話す内容をど忘れしてしまうケースや、スピーチ中に突然喉が渇くケース、スピーチの直前に何らかの要因でワイシャツを汚してしまうケースなど、考えられる災難を予め想像しておくことで、人前で話すことに対する不安を和らげようとする。

 そして防衛的悲観主義者は準備にぬかりがなくなる。スピーチに際して話の流れを書き記したメモを作成して持参し、ペットボトルの水を用意し、当日は携帯用のシミ抜きを用意しておいたりすることで不安を軽減し、結果的にスピーチに専念することができ、優れたパフォーマンスを発揮することが期待できるのだ。つまり不安を逆手にとるのである。

 今の自分もいくつかの理由で何かと気分が晴れないわけだが、このネガティブな感情も近い将来への準備、つまり前倒しで仕事を進めることを後押しするものなのかもしれない。むしろそう考えてしばらくは仕事に専念すべきなのだろう。

インド&ネパール系の野菜カレーで昼食にする

 駅前を歩く。商業施設を越えた通りを右折する。商店街になっていて「住吉銀座」と記された標識が電柱の上部に掲げられている。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 某餃子チェーン店でもまったくかまわないのだが、通りの少し先に赤い看板の飲食店が見えた。インド&ネパール料理店のようだ。カレーもいいだろう。入ってみたい。

 外観の印象からすれば案外こぢんまりとした店内だが、個人店ならじゅうぶんなのだろう。すべてテーブル席で、お店の人に案内されて店の奥のほうのテーブル席に着く。異国情緒溢れる趣のあるインテリアだ。昼休みのピークの時間を過ぎているし、雨ということもあってか先客は2人連れが1組だけだった。

 テーブルの上に置かれていたランチメニューの表を一通り眺めて、一番シンプルなセットメニューの野菜カレーをライスでお願いした。ドリンクもついてくるというのでウーロン茶を選んだ。ちなみにメニューには「ナン又はライスはおかわり自由です」との記述もある。

 インド系のカレーを食べるのは久しぶりだ。このコロナ禍もあり、ひょっとすると1年ぶりくらいかもしれないと思った矢先、池袋近くの明治通り沿いにあるインドカレーのお店でランチを食べたことを思い出した。確かに1年と少し前だ。その時も似たようなメニューを注文したと思うが、大盛りで提供されたライスを全部食べたら満腹になってしまったことが思い出されてくる。その日はその後ほとんど何も食べられなくなってしまった。

 基本的に出された物はすべて食べるようにはしているのだが、もういい歳でもあるし胃に負担をかけてまで食べることはないのだろう。食べられない時は残すことも考えに入れておきたいものだ。というか、ひょっとするとこの店でもライスが大盛りできてしまうのだろうか。ご飯少なめで注文すればよかったかもしれない。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 カレーがやって来た。野菜カレーは美味しそうだが、予感は的中して皿に盛られたライスはなかなか凄い量だ。

 ミニサラダのドレッシングはコクがあって美味しい。サラダを先に片づけてしまってからカレーを頂く。バターのコクが感じられてなかなかいける。それにしてもこのライスの量である。

 ライスを少なめにお願いしなかったのが悔やまれるが、もう後の祭りだ。それでも前回のインドカレー店の記憶が思い出され、多かった場合は無理しない心づもりはできていたので、妙なプレッシャーを感じることなく美味しく頂くことができる。これも防衛的悲観主義者の戦略といえるかもしれない。

 この店もそうだが、ランチ時にはライスとナンが食べ放題というインド系カレーの店は多く、きっと客の大半は最初はナンを注文しているように思える。そしてナンを食べ終わってまだいけそうならライスを注文するというパターンが多そうだ。

 しかし自分はナンを食べないので、お店にしてみれば低コストの客ということになり、それもあって好意からかライスを大盛りにしてしまう傾向がどうやらありそうに思えてくる。そもそもおかわりができるのだからそういう気は使わなくていいのだが、それが好意からきているのだとすれば不満を感じるのはお門違いだ。

 まぁあまり細かいことは気にせずにカレーを楽しむことにしよう。何かと気分が晴れない日々が続く中、せめてこうした外食で気分をあげていくのも、日常生活の中では重要なことになるだろう。さて、食べ終えたら電車に乗ってひとまず部屋に戻ることにしようか。

文/仲田しんじ

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