昭和、平成の街並みを振り返れる希少な番組の希少な再放送だった
1984年から1992年にかけてNHK教育テレビジョン(現:Eテレ)にて放送されていた社会科番組の『たんけんぼくのまち』。
タイトルに見覚えのある方も多分少なくはないはず。
小学3年生程度をターゲットにした教育番組で、主人公のチョーさんが、舞台となる街の商店の店長になることを目指して修行する配達員という設定で奮闘するという作風。
社会科番組ではあるものの、割と気軽に観ることもできる作品で、学校によっては社会科の時間にこれをテレビで観る時間を設けていたケースもあったそうだ。
この番組では1年おきにチョーさんの下宿先が変わる形になっており、視聴者にとってみると1年おきに新しい土地の街並みや、その街の風土についても自然に学べる形になっていた。
その『たんけんぼくのまち』が、今年の8月1日から3日にかけて15時35分から15分番組として放映されていた。
過去の放送分の中からピックアップされた再放送番組としてオンエアされており、現在はその3回分の再放送も行われている。
しかもただの再放送ではなく、チョーさんの副音声つきの再放送となっているのがポイントだ。
その番組の名は『チョーさんと見よう!たんけんぼくのまち』である。
この番組はあの頃見た街、懐かしい街並みの貴重な記録映像だ!
『たんけんぼくのまち』では1年おきに舞台が変更されるが、長野県諏訪市や静岡県清水市、神奈川県三浦市など、主に関東圏が多く選ばれている。
その中には、2011年の震災で大打撃を受けることとなる福島県いわき市小名浜も選ばれており、1988年から1年間、お話の舞台となっていた。
震災後の復興著しい福島県の、それ以前の街並みを記録していたという意味でも、大変貴重な番組になっているとも言える。
それでなくても、日本の昭和から平成への転換期となる時代の街並みが映像に残っていて、なおかつ大都市でもない普通の街の日常的な光景ともなると、意外に今となっては希少価値の高い番組ではないだろうか。
筆者はこの番組が放送スタートとなった1984年に生まれており、番組終了時にはギリギリ小学校に上がったかどうかという世代。
しかし自宅で『たんけんぼくのまち』は観ていたし、オープニング曲もちゃんとおぼえている。チョーさんという主人公も大好きだった。
番組の舞台となった都市にはほとんど訪れたことはないけど、三浦市はこの番組がきっかけで後年観光に出向いたこともある。
副音声で2022年のチョーさんと楽しむ再放送…
どの都市も大体そうだが、数十年もすれば大抵面影こそ残るが、街の佇まいみたいなものは変化してしまう。
放送終了からもう30年以上経過した番組に見る街並みというのは、今となっては懐かしいものだらけ。
もう販売終了から久しいジュースがひしめいた自販機や、既に倒産している企業の看板。もう売ってない商品の広告ポスターなど。
そういったものがチラチラ映るので、多分筆者と同世代かそれより少し上の『たんけんぼくのまち』ドンピシャ世代の方にはたまらない再放送ではないだろうか。
それこそ、番組の舞台になった都市に当時住んでいたって人にとっては、これはたまらないんだろうなぁ。
筆者も昔住んでいた街が開発によってどんどん変貌していくのを見ているけど、やっぱり当時の様子が写真や映像に残っていれば嬉しいし、見たいと思うものだし。
さて、実際この度の再放送を副音声つきて視聴してみると、チョーさんが当時の思い出を結構鮮明におぼえていることに驚かされるが、それ以上に映像の不鮮明さに目が向く。
だけど、その画質が時代の経過を感じさせるし、昔の観光名所を巡る場面があったり、当時の宿泊施設やレストランも登場するし、86年以前の放送回で出る一万円紙幣は聖徳太子。
鮮明ではないけれども見どころ、聞きどころが多い。
この頃の街並みって今とは少しばかり異なるし、走っている車も全体的にデザインは角ばっている。
タクシーも、後部座席は自動では開かないので、運転手が開閉を担当していたのだ。そういう懐かしさを感じながらチョーさんの話を聞くというのは、結構面白い楽しみ方だと思う。
もちろん副音声を切って番組を楽しむこともできるが、個人的には副音声込みで視聴したほうが面白いかな?
映像が不明瞭なところも、解説してもらえるので。
この夏休み、あなたも懐かしい街並みを「たんけん」してみては?
この番組というのはもう30年以上も前に終了した教育番組なので、当時馴染みのない方にとっては、そこまで思い入れが強くはないものかもしれない。
ただ、リアルタイムで観てきた人からすると、この再放送って結構楽しめるんじゃないかと個人的には感じる。
番組の最初と最後には新撮シーンもあってチョーさんがおしゃべりするし、犬が苦手だったのに今では『いないいないばぁっ!』のワンワンと友達になっているという設定を知ることもできる。
そういえば、もうすぐお盆。
地元に帰省するという方もいらっしゃることだろうし、この夏は久々に、実家に眠る古いアルバムを眺めてかつての街並みに思いを馳せてみるのもいいんじゃないだろうか。
コロナ禍でしばらく帰らない間に、恐らく地元もちょっとだけ様相が変わっているだろうし、その変化を実際に出歩いて「たんけん」して確認するのも悪くないかも。
『チョーさんと見よう!たんけんぼくのまち』自体の再放送がいつまで続くのかアナウンスがないので不明瞭だが、NHKプラスでは見逃し配信にも対応しているので視聴自体は簡単。
NHKプラスでは放送終了からおよそ1週間程度の見逃し視聴が可能なので、気になる方はこの機会に入会してみることをオススメしたい。
文/松本ミゾレ
編集/inox.
【参考】
NHK「チョーさんと見よう!たんけんぼくのまち」