資生堂が19年ぶりに男性向け新スキンケアブランド「SIDEKICK」をローンチ
1970年代あたりまで、はみがきのチューブは金属が主流だった。
金属製のため残量が少なくなると、中身を絞り出しにくくなるのが難点で、あの頃の家庭の洗面所には、ペンチを使って何重にも折りたたまれたはみがきのチューブが当たり前のように置かれていた。
当時子どもだった自分は、チューブがいろいろな形になるのがおもしろくて、使いもしないのに押したりひねったりして遊んでは、親によく怒られたものだった。
そんな金属製のチューブは、ラミネートチューブの普及とともに姿を消していったが、2022年、思わぬ形で再会することとなった。
再び金属製のチューブにスポットを当てたのが、資生堂が19年ぶりにリリースした男性向けスキンケアの新ブランド「SIDEKICK」だ。
しかもターゲットがZ世代(1990年半ばから2010年代生まれの世代)というから驚きだ。
「SIDEKICK」とは「相棒」という意味
「SIDEKICK」の洗顔料に金属製のチューブを採用した理由は、もちろん世界的な脱プラスチックの流れもあるが、使うたびに形が変わり様々な表情をみせるチューブのもつ、お仕着せのデザインにはない自由な形状が、既存の価値観に縛られないZ世代の志向にマッチするからということらしい。
金属製のチューブは使うたびに形が変わる
「SIDEKICK」が狙うのは、今やアジアの男性化粧品市場をけん引する中国マーケット。
同社によれば、中国における男性向けスキンケアの売れ筋は、いわゆる「意識高い系」のハイエンドゾーンと、コンビニやドラッグストアなどで手軽に手に入るプチプラゾーンの二極化しており、平均購買価格の差は4倍にも及ぶとのことだ。
いわゆるトレードオフの関係になる両者の間には、これといった有力な製品が存在しない、大いなる可能性を秘めたゾーン(プレミアムゾーン)が横たわっている。
「SIDEKICK」は、まさにここでの主導権を握るために投入された製品だ。
とはいえ、市場を席巻するために必要なものは、やはりその製品の実力。
年齢的にZ世代向けコスメを試すには少々力不足の感はあるが、実際に試してみた。
泡で汚れを落とす洗顔料と1種類しかリリースされていないローションを体験
今回試してみたのは、肌質に合わせて5種類ラインアップされた洗顔料のうち、泡で汚れを落とすタイプの「シャインオフ ハイブリッド クレンザー」。
使用上の注意に従って、よく振ってからプッシュすると、瞬時に濃密な泡状の洗顔フォームが出来上がる。
泡が噴き出す様は、洗顔料というよりシェービングフォームに近い。コシのある泡は滑らかというよりは硬めで、顔全体に広げてもまだしっかりとした形状を保つ。
香りもユニセックス的な柔らかさはなく、理容室で使用する製品を彷彿とさせ、思ったよりも無骨なイメージだ。
しっかりとした泡で、簡単には崩れない
泡がしっかりしているので、力を入れてこする必要はなく、少しずつ、顔全体にやさしくなじませるようにして洗い流すと、表面の汚れや脂はしっかりと取れた印象だが、肌はしっとりとして、決して除去しすぎた感はなく、しっかりと被膜で守られているような洗い上がりとなった。
このクオリティなら、意識高い系のユーザーも取り込むことができると思えるほどのバランスの良さだ。
こうなると、あえて1種類しかリリースされていないローションの出来も気になる。せっかくなのでこちらも試してみる。
こちらもプラスチックではなく、重厚感あるガラス瓶を使い、テクスチャーも粘度がしっかりしていて、思ったよりしっとりとしたつけ心地だ。
素早く肌になじむタイプではないが、しつこくはなく、仕上がりは比較的さっぱりとしている。
翌朝の肌の状態も、しっとりというよりさっぱりとした状態が続いていた。
枯れ気味の自分の肌には少々物足りない感じではあるが、Z世代にはちょうどいいバランスだと思われる。
しっとりとしたテクスチャーだが、仕上がりは意外とさっぱり
スキンケアにあまり興味のない層にもアピールして取り込んでいくという製品だが、コストパフォーマンスが高く、製品によってはハイエンド志向のユーザーをも十分に満足させられるクオリティをもっている。
価格設定も手ごろで、一度ハマったら長く愛用してしまうほどのポテンシャルを秘めた製品と思われるので、
今お使いの製品に少々疑問を感じている方がいたら、ぜひ一度試してみるのもよいだろう。
資生堂
0120-81-4710
https://corp.shiseido.com/jp/brands/sidekick/
取材・文/TOSHI.ヒロシ