BTSのノミネートや、2021年のルール変更で改めて話題になっているのが『グラミー賞』です。歴史は長く、2022年8時点ですでに64回が開催されています。来年のグラミー賞が今までよりももっと身近に感じられるように、基本情報や魅力を解説します。
グラミー賞とは?基本をチェック
グラミー賞が音楽の賞であることは知っていても、海外で開催されているため、詳しい内容は分からない人も多いでしょう。テレビでグラミー賞を楽しみたいなら、まず概要を知っておきましょう。
世界的に有名な音楽賞レース
グラミー賞とは、世界的に影響力を持つ音楽賞の名前です。1958年に音楽制作関係者(レコード会社や広告関係者は除く)と音楽関係への就職を目指す学生で構成された『全米レコーディング芸術科学アカデミー』によって作られました。
2022年が第64回の開催となる歴史ある賞で、日本でも毎年大きく報道されています。グラミー賞を手にした多くのアーティストが輝かしいスターの道を歩んでおり、世界中が大注目する音楽賞レースの一つといえるでしょう。
なお、2022年の第64回は1月31日(日本時間2月1日)にロサンゼルスで開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響のため同年の4月3日(日本時間4月4日)に延期されました。
対象はアメリカで注目の作品やアーティスト
グラミー賞の審査対象は『アメリカ国内でリリースされた作品とアーティスト』に限られています。各国でいくら人気があっても、アメリカで作品を発表していない限りグラミー賞にノミネートされることはありません。
アメリカでは『EGOT(イーゴット)』と呼ばれる4大芸術賞(エミー賞・グラミー賞・オスカー賞・トニー賞)のうちの一つで、発表の時期は祭典のように盛り上がります。
審査はまず、ノミネート作品やアーティストが発表され、その中から受賞作品・受賞者が選ばれるシステムです。日本でいうと『日本レコード大賞』のように、ノミネートされた作品の中からカテゴリー別に最優秀作品を選ぶ方式となっています。
2021年に発表された選考方法の変更
2021年、グラミー賞の選考方法に変更が発表されています。大きな変更は『秘密委員会(選考審査委員会)の廃止』です。
以前は選考委員会によって、非公開にノミネート候補が絞り込まれていました。しかし、作品への世間の支持が反映されず「人種や性別が選考へ影響を与えている」と批判が出ることもあり、委員会の廃止と選考委員が投票できる部門を減らす対応が取られています。
同時に、ノミネートされる条件も緩和されました。アーティスト以外にクレジットされているメンバーが自動的に対象になるなど、より多くの音楽制作者がグラミー賞を目指せるようになっています。
一方で、2023年からは『ニューアルバム』のノミネート基準が厳しくなります。未発表曲のみが対象な点は変わりませんが、これまで演奏時間の50%以上が新録のものが認められていたところ『75%以上』へ引き上げられました。新録と認められる期間も『リリース日から5年前』までに限られます。
ノミネートされるカテゴリー数は80以上
グラミー賞に80以上のカテゴリーが存在することは、あまり知られていないかもしれません。グラミー賞をより深く楽しむため、カテゴリーについての知識も備えておきましょう。
日本でよく報道されるのは主要4部門
日本でグラミー賞が話題になるカテゴリーとしては、年間最優秀レコード・年間最優秀アルバム・年間最優秀楽曲・最優秀新人賞の『主要4部門(ビッグ・フォー)』が多いでしょう。2022年は以下の受賞内容となりました。
主要4部門 | アーティスト | 作品 |
最優秀レコード 最優秀楽曲 |
シルク・ソニック (ブルーノ・マーズ、アンダーソン・パーク) |
Leave the Door Open |
最優秀アルバム | ジョン・バティステ | We Are |
最優秀新人賞 | オリヴィア・ロドリゴ |
主要4部門で受賞する作品やアーティストは、他の部門でも複数ノミネートされています。例えば、最優秀アルバムのジョン・バティステは11部門にノミネートされ、うち5部門(最優秀ミュージック・ビデオ賞、最優秀アメリカ・ルーツ・パフォーマンス賞、最優秀アメリカン・ルーツ・ソング賞、最優秀サウンドトラック・アルバム作曲賞、テレビ・その他映像部門賞)で受賞しました。
好きなカテゴリーを探す楽しみ方も
王道である主要4部門は、今をときめくアーティストが受賞することが多く、世間の注目も集まります。ただ、そこだけで終わってはもったいないのがグラミー賞です。
R&B・ロック・ラップ・クラッシク・ジャズから、作曲・映像・技術部門といった制作部門のための賞も用意されています。
『リズム・アンド・ブルース・パフォーマンス賞』や『ヴォーカル入りインストゥルメンタル編曲賞』『室内楽パフォーマンス賞』などの部門まであると聞けば、ユニークなカテゴリーにも興味がわいてきませんか?
この他にも報道されていない部門が多くあるため、自分の気に入ったカテゴリーを探してみるのもグラミー賞の一つの楽しみ方かもしれません。
2年連続ノミネートのBTSにも注目
世界中で人気爆発中の韓国のアイドルグループ『BTS(防弾少年団)』は、韓国人歌手で初めて第63・64回と2年続けてグラミー賞の『ベストポップデュオ/グループ・パフォーマンス』部門にノミネートされました。
受賞は逃しましたが、アジア出身のBTSがノミネートされて現地でパフォーマンスを披露したことは、今までグラミー賞にあまり関心がなかった人の興味を引くきっかけ十分なきっかけになったでしょう。第63回でパフォーマンスをした『Dynamite』と第64回の『Butter』は、ともに各国で高い評価を受けています。
グラミー賞で輝いた日本人
世界中のトップが受賞するグラミー賞ですが、実は日本人も輝かしい成績を修めています。意外なカテゴリーでの受賞者にも、注目しましょう。
日本人の歴代受賞者
日本人初のグラミー賞受賞者は、オノ・ヨーコ(芸術家)です。1981年に夫であるジョン・レノンとともに製作したアルバム『ダブル・ファンタジー』で『最優秀アルバム賞』を受賞しています。
他にも、坂本龍一(ピアニスト・音楽プロデューサー)や『B’z(ビーズ)』の松本孝弘(ギタリスト)・小澤征爾(指揮者)といった各界のレジェンドたちが、グラミー賞に名を連ねているのは有名かもしれません。
また、あまり知られてはいませんが、中村浩二(和太鼓奏者)や小池正樹(グラフィックデザイナー)をはじめ、多くの日本人アーティストや技術者がグラミー賞を受賞しています。
最新の第64回では、松本エル(チェリスト)が『最優秀クラシック・ソロ・ボーカル・アルバム賞』、藤村実穂子(メゾソプラノ歌手)が『最優秀合唱パフォーマンス賞』を受賞しました。
グラミー賞に近いといわれる日本人は?
松居慶子(ジャズ・ミュージシャン)とNao Yoshioka(シンガーソングライター)はともに全米デビューを果たしており、アメリカ・ビルボード誌のランキング『ビルボードチャート』でも上位に入るほど活躍が目覚ましい2人です。
松居慶子は、2000年に当時発表した『Unconditional』でグラミー賞2部門にノミネートされた実績があります。近年では、2019年2月に日米同時発売したアルバム『Echo』が、ビルボードチャートのコンテンポラリー・ジャズチャートで年間5位を獲得しています。
Nao Yoshiokaは、2018年、ビルボードチャートの『アーバン・アダルト・コンテンポラリー』で32位の好成績を収めています。アメリカの大衆文化雑誌『ローリングストーン誌』で『非の打ちどころのないネオソウル』と評された実力者です。ノミネート・受賞すればR&B部門では日本人初となるため、期待も高まっています。
構成/編集部