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LEDの光で誰の着信かすぐわかるスケルトンスマホ「Nothing Phone(1)」の実力検証

2022.08.05

■連載/石野純也のガチレビュー

 英国のスタートアップ、Nothing Technologyが開発したスマートフォンが、日本に上陸する。それが、「Nothing Phone(1)」だ。同社は、OPPOに吸収されたOnePlusの共同創業者、カール・ペイ氏が設立した企業。その第一弾のプロダクトであるワイヤレスイヤホンの「Nothing ear(1)」も、日本で発売されている。デザインへのこだわりが好評を博していたNothing ear(1)の特徴を受け継ぎ、Nothing Phone(1)も、その外観で差別化を打ち出した。

 もっともわかりやすいのが、スケルトン仕様の背面だ。単に基板がむき出しになっているのではなく、カバーをつけ、“中”を見せるデザインになっているところにこだわりを感じる。この透明の背面を生かし、大量のLEDを配置しているのもNothing Phone(1)ならでは。「Glyphインターフェイス」と名付けた機能を備え、光によって着信などの情報を背面だけで伝えることができる。

 機能的にはミッドレンジ上位に位置づけられる端末で、普段使いには十分な性能を期待できる。とは言え、初モノかつ日本初上陸なだけに、本当にきちんと使えるスマホなのか、不安を覚える向きもあるだろう。そんなNothing Phone(1)の実機を、発売に先立って試用することができた。ここでは、その実力をチェックしていきたい。

8月に日本で発売されるNothing Phone(1)。英国のスタートアップが開発した端末で、OnePlusの共同創業者が設立した企業ということもあり、グローバルで話題を集めていた

光るだけじゃない、情報も伝えるGlyphインターフェイス

 Nothing Phone(1)の個性とも言えるが、スケルトン仕様の背面を使った「Glyphインターフェイス」だ。インターフェイスと銘打っているだけに、単に背面が光るだけでなく、光と音を使って様々な情報を伝えることができる。例えば、電話をかけてきた人に応じて光り方を変えれば、画面を見なくても誰からの着信かが一目でわかる。ディスプレイに文字を表示するより、遠くまで伝わるのが光のメリットだ。メールなど、他のアプリから通知が届いた時に背面を光らせることもできる。

背面はスケルトン仕様。単なるデザインではなく、これは内部に埋め込まれたLEDを点灯させるためのものだ

 充電時に光でバッテリー残量を知らせるのも、Glyphインターフェイスの機能だ。本体下部の縦に配置されたLEDで、おおよそどの程度充電されたかがわかる。パーセンテージほどの細かな情報ではないものの、ディスプレイを点灯させる必要がないのは便利だ。Googleアシスタント起動時に、LEDを点滅させる設定も用意されている。音声でGoogleアシスタントを起動した時、画面を下にしていても、きちんと反応しているかどうかがわかる。デザイン性だけでなく、こうした実用性を兼ね備えているのがGlyphインターフェイスの利点だ。

おおまかな充電残量を、LEDの光で知ることが可能だ

Googleアシスタントを呼び出した際に、背面を光らすことが可能

 音にもこだわりがあり、レトロな電子音のようなサウンドがプリセットされている。インターフェイスの随所にちりばめられているドットで構成された欧文フォントとぴったりマッチしており、グラフィックスだけでなく、サウンドまで含め、トータルで端末の世界観を演出する。効果音のボリュームが少々大きすぎるきらいはあるが、それもNothing Phone(1)の個性。ソフトウエアでは横並びになりがちなAndroid端末が多い中、世界観をきちんと作り上げようとしている姿勢は評価できる。

電子音のようなレトロ感あるサウンドをプリセット。Glyphインターフェイスの光やユーザーインターフェイスとマッチする

 一方で、Glyphインターフェイスでできることは、ほぼ上記に限られており、まだまだ拡張の余地がある。実用性という観点では、物足りなさも残ると言えるだろう。例えば、タイマーと連動させて残り時間を光で伝えたり、光らせ方を変えることでどのアプリから通知が来たかをわかるようにしたりと、工夫のしどころはあるはずだ。ソフトウエアでアップデートできる機能なだけに、継続的な進化に期待したい。

 背面以外のデザインは、どことなくiPhoneをほうふつとさせる。角が丸みを帯びた工作精度の高いアルミフレームが、その理由だろう。USB Type-Cの端子がきちんと中央に配置されていたり、アンテナ用のスリットが同系色でまとめられていたりと、シンプルにデザインをまとめあげている印象だ。ディスプレイ内指紋認証を採用していることもあり、側面に物理的なセンサーが露出していることもない。デザイン感度の高いユーザーも、満足できる仕上がりと言えそうだ。

側面のアルミフレームは、製造の精度が高く、シンプルにまとめられている

ローカライズやアプリでの世界観構築が課題か

 それだけに、ユーザーインターフェイスのローカライズがやや中途半端になっている点は気になった。例えば、先に挙げたドットを組み合わせたフォントは、欧文のみ。Androidの言語を日本語に設定していると、目にする機会が少なくなる。それだけならまだいいが、欧文と日本語が組み合わさっているところでは、フォントの不統一感が目立ってしまう。特に「Glyphインターフェイス」の画面は、「インターフェイス」の「ス」だけが改行されており、見栄えがよくない。

言語設定が日本語だと、印象が大きく変わる。これは、独自のドットで構成されたフォントが日本語に非対応なためだ

 ユーザーインターフェイスは標準のAndroidに近く、凝ったカスタマイズはされていない。違いがあるとすれば、クイックパネルのボタンが2つだけ大きく表示されるところだろう。逆に、内蔵されているプリインストールアプリは、ほとんどがAndroid標準。Nothing Phone(1)独自のものは、カメラと音声を録音するためのレコーダーぐらいだ。Android標準のアプリも機能的には申し分ないが、デザインのテイストが大きく異なる。アプリを開くと、Nothing Phone(1)らしさが一気になくなってしまうというわけだ。

ホーム画面や通知などのインターフェイスは、Androidの標準に近い

レコーダーアプリは、Nothing Phone(1)のオリジナル。デザインがメニューなどと統一されている

 独自のアプリを開発するのはコストもかかるが、デザインにこだわっている端末なだけに、この点は残念。カレンダーや時計、連絡帳、電卓といった基本アプリには、独自に手を加えているメーカーも多いだけに、Nothing Phone(1)らしいデザインで再構築してほしかった。同社らしいウィジェットも少ないため、こうした細部をアップデートでどう詰めていくかは、今後の課題と言えるだろう。

 一方で、標準のAndroidに近いだけに、操作性に違和感を覚えることは少ない。これまでにAndroidを使ったことがあるユーザーであれば、すぐに使いこなせるのはメリットだ。ユーザーインターフェイスにクセがなく、OSとして採用される「Nothing OS」も最新のAndroid 12をベースにしている。Pixelシリーズに採用された、壁紙の色に合わせてフォントなどの色味を自動で調整する機能にも対応する。

Pixelからスタートした、Material Youに対応。壁紙に合わせて文字の色などを自動で変更できる

 こうした点も含め、使い勝手は驚くほど“普通”だ。「Glyphインターフェイス」やサウンドで醸し出している個性とは、対照的な印象すら受ける。Nothing OSの開発にあたり、Nothing Technologyは動作の安定性やレスポンスのよさに注力したというだけに、操作感はいい。ほかにはない個性的なAndroidスマホを求めていた人は拍子抜けしてしまうかもしれないが、快適に利用できるのは重要なポイント。その個性とは裏腹に、比較的安心して使えるスマホと言える。

処理能力やカメラ性能は上々、初物ながら使い勝手はいい

 ソフトウエアだけでなく、ベースとなる処理能力も充実している。チップセットには、クアルコムのSnpdragon 778G+を採用。メモリも8GBと、ミッドレンジモデルとしては十分な仕様と言えるだろう。テストした端末は、ストレージが256GB搭載されており、写真や動画などを撮りためておくにも十分な容量だ。ミッドレンジモデルは、ストレージが128GBのものが多く、特に動画の撮影が多いとすぐに容量がいっぱいになってしまう。microSDカードに非対応なため、ストレージが多いのはうれしいポイントだ。

ストレージは256GBで、十分な容量。ミッドレンジモデルとしては、多い方だ

 操作感の滑らかさは、ディスプレイの仕様によるところも大きい。同モデルは、リフレッシュレートが最大120Hzに対応。60Hzと120Hzを自動で切り替える仕組みに対応しており、バッテリーの消費量を抑えつつ、必要なところでだけ、滑らかな動作に切り替えている。スクロールが指の動きにしっかり追従するレスポンスのよさは、あたかもハイエンドモデルを操作しているかのよう。ミッドレンジモデルとは言え、快適さはきちんと担保されている。

ディスプレイのリフレッシュレートは最大120Hz。60Hzと自動で切り替えることが可能だ

 カメラは、デュアルカメラで超広角と広角の2つ。おもしろいのが、どちらも5000万画素のセンサーを採用していることだ。一般的に、超広角カメラはワイドなアングルで迫力がある写真を撮れる一方で、メインカメラと比べると画素数が抑えられている傾向がある。そのため、メインカメラで撮った写真と比べると、解像感がやや落ちてしまうことが多い。暗所に弱いのも、超広角カメラの弱点だ。

カメラはデュアル構成。メインカメラと超広角カメラは、いずれも5000万画素でピクセルビニングを用いて画素ピッチを拡大する

 Nothing Phone(1)は、5000万画素の超広角カメラを採用することで、こうした弱点を克服している。センサーのメーカーが違うためか、色味がやや異なるのは気になるが、解像感が落ちる心配をする必要はない。超広角カメラがオマケではなく、メインのカメラの1つと捉えている証拠だ。標準設定時はピクセルビニングで1200万画素相当になるが、設定を変更すると5000万画素をフルで使って撮影することもできる。

メインカメラと超広角カメラのどちらで撮っても、精細感がある仕上がりに

 メインカメラも5000万画素でピクセルビニングに対応しており、暗所でもノイズの少ないキレイな写真が撮れる。夜景撮影に特化したナイトモードにも対応している。建物の光を強調しつつ、夜空もやや明るめにする仕上がりで、暗所で撮ったとは思えないほどノイズも少ない。また、料理を撮影すると、被写体の温かみを強調した仕上がりになる。ホワイトバランスがきっちり合い、飲食店内での撮影もしやすい。

ナイトモードで撮った写真はノイズが少なく、HDRもしっかり効いている。料理写真は、温かみがある仕上がりに

 ハイエンドモデルのように望遠カメラは搭載していないものの、5000万画素という高画素を生かしてズームをすることは可能。2程度のズームであれば、劣化は非常に少ない。ミッドレンジモデルだと、コストの関係でカメラが犠牲になることも多いが、Nothing Phone(1)は数を絞り、そのぶん、2つのカメラの性能を上げているように見える。30fpsであれば4K動画も撮影でき、性能は必要十分だ。

2倍ズームであれば、写真の劣化は非常に少ない

 Glyphインターフェイスの派手さに目を奪われがちだが、Nothing Phone(1)はAndroidスマホとして、素直にまとまった端末だと評価できる。一方で、肝心のデザイン、特に日本語フォントやフォントのレイアウトには詰めの甘い部分がある。同社のデザインセンスに期待していた人は、独自アプリの少なさに物足りなさを覚える可能性もある。初物としては完成度の高い端末なだけに、継続的なアップデートに期待したい。

【石野’s ジャッジメント】
質感        ★★★★★
持ちやすさ     ★★★★
ディスプレイ性能  ★★★★
UI         ★★★★
撮影性能      ★★★★
音楽性能      ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
生体認証      ★★★★
決済機能      ★★
バッテリーもち   ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定

取材・文/石野純也

慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

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