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毎日小さな感動と幸せを届けてくれる!自分にじわじわとなじんでくる文具の選び方

2022.08.09

ICT時代を迎えても、ノートやペン、手帳などの文房具を使っている人がほとんどだろう。身近に存在する、あまりにも見慣れた文具たちが、しっかりと私たちの仕事を支えてくれている。

日本の文房具の良さといってすぐに思い出すのは、海外のホテルの備品のボールペンのこと。書きにくく、日本に持って帰っても、すぐに壊れてしまう。日本のボールペンはノベルティグッズでもらったものでも、書きやすいのだ。

今回はこうした身近な文房具の良さについて、伝言メモ「Deng On」や耐洗紙のメモパッド「TAGGED」等でグッドデザイン賞を受賞された松岡厚志さんに、インタビューをお願いした。

身の回りのツールを好きなもので固める

――松岡先生は「じわじわくる文具」(玄光社発刊、定価1800円+税)を上梓されましたが、文房具の魅力について教えてください。先生が文房具「沼」にはまったのはいつ頃、どういうきっかけでしたか?

松岡先生 いきなり梯子を外すようですが、私は文房具の沼にはまった特別な人ではないんです。もちろん文具は日常的に使うツールですから人並みに活用しますし、「こういうのがあったらいいな」という思いからメーカーとしてオリジナル文具を作ったりもしてますが、文具との距離感はそれほどみなさんと変わらないはずです。

ただ、社会に出たころから自営業で在宅ワークでしたので、身の回りのツールを好きなもので固めたい気持ちは人一倍強かったかもしれません。なにせ自宅が職場ですから、モチベーションやパフォーマンスが上がるものにこだわってきました。

とくに20代の後半くらいから「モノトーン」に目覚めまして、身につけるものや雑貨に関してとにかく白黒のものを集めてきました。写真はあくまで一例ですが、当時から愛用している文具も黒や白がほとんどでしたね。当初は「モノトーンであれば何でもいい」という軽い気持ちでしたが、最近は機能面からもしっかり厳選しています。

本書『じわじわくる文具』をご覧いただけると、実はモノトーンの文具ばかり紹介されていることに気づいていただけるかと思います。

じわじわ「自分のものになる」

――「ピンとくる」と「じわじわくる」では、時間差があります。でも、ピンときたものが長く感動を保てるかというと、そうでもなくて、「じわじわ」の方が印象を長く保てるような気がします。今回は「じわじわくる」文具なのですね?

松岡先生 直感で「ピンとくる」のもいいのですが、それだと視覚的な満足感で終わってしまうのではないでしょうか。洋服やアクセサリーならともかく、文具はやはり「使ってなんぼ」のツールですから、手に馴染むかどうか、必要な場面できちんと役に立つかどうかが重要で、使い続けてみないと真の満足感を得られないと思うんです。

つまり「じわじわくる」とは「じわじわ自分のものになる」と考えてみてください。本書の中では「じわじわとは何か」について3つの定義を挙げていて、「じわ」にもいくつかバリエーションがあると述べているのですが、大きく括るなら「じわじわ自分のものになる」です。

ぱっと見たときはピンとこなかったけど、説明されて、使ってみたら、じわじわ自分に馴染んでくる。これ以外のものを使うなんて考えられなくなるくらい一生モノの相棒になる。そんなプロセスをぜひ味わっていただきたいですね。

本当に良い商品が全く売れないことはない

――じわじわ文具が増えると、幸せな人が増えそうです。ただし、残念ながら「じわじわ」には時間が必要で、じわる前に売れ行き不振で消えてしまうケースも考えられます。消費者としたら、どうしたら良いでしょうか?

松岡先生 これは私も文具メーカーの端くれだから言えることなのですが、売れ行き不振で消えてしまうことについて、消費者にまったく非はないですね。本当にいい商品で、愛用してくれるユーザーが存在するのであれば、メーカーは当初見込んだ売上が伴わなくても可能な限り販売を継続するべきなんです。「あんまり売れないから、やーめた」では今の時代、やっぱり無責任だと思います。

と、自分で自分の首を絞めるようなことを言ってますが(笑)、本当にいい商品だったらまったく売れないなんてことはないはずなんですよ。だからそもそもメーカーが商品として発売する前のプロセスに問題があるんじゃないかと思います。実は社内で誰もいい商品だと思ってなかったとか、横やりが入って当初の企画が曲げられてしまったとか。

そんなわけで消費者に非はないのですが、それでもメーカー側からお願いできることがあるとすれば、まずその文具のことを知り、気になった段階で「気になる」とSNS等で積極的に発信してほしい。そして、実際に使ってみて本当にいいものだと感じたら「良かった」と発信してほしい。その声がとても大事なんです。

ネガティブなレビューは開発者の心が折れるだけですから(笑)、ネット上に純粋な高評価も残してほしい。それを見た人がまた新しいユーザーになって、市場がふくらんでいきますから。そうすれば最初は火がつかなかった文具も、じわじわ売れて市場に残り続けてくれます。みんな幸せになれます。

ちなみに「じわじわくる文具」の見分け方はありません。どんな文具であっても、その人にとっての「じわじわくる」になり得ますから、この文具はじわじわこないというのは基本的には存在しません。それでも強いて言うなら、見た目のカラフルさや機能の物珍しさにとらわれることなく、実際に買って、試して、使い続けてみることですね。文具は高い買い物ではないですし、自分好みのものが見つかるまで探求できる楽しみがありますから。

大好きなブックエンド

――新刊書では37個の文具を紹介していますが、この中で松岡先生が一番好きなものがあれば教えていただけますか?(好きな理由もお願いします)

松岡先生 37個に甲乙はつけられないのですが、やはり本書の中で最初に紹介している「9° BOOK STOPPER」でしょうか。本の中では抑えた書き方をしましたが、ずっと一般的なブックエンドの形が嫌いだったんですよ。なんであんなに大振りで、野暮ったい形なんだろうって。もちろん辞書みたいな重量のある本も支えられなきゃいけないから、モノとして大きくならざるを得ないのは分かるのですが、自宅や事務所で使うのにずっと抵抗があったんです。

そんなとき、お店で出会ってしまったんですよ、SOGUさんの「9° BOOK STOPPER」に。「これだ!」と思いましたね。なんで今までなかったんだろう、何で誰も思いつかなかったんだろう、ブックエンドは本来こうあるべきじゃないかって感動しましたね。

でも、さすがに私も最初に目にしたときは、これをどう使うのか分からなかった。それで説明を聞いて、なるほどこれはすごいと膝を打って、使ってみたら納得で。まさに「じわじわくる文具」を象徴する文具のひとつだなあと思います。

トン、トンが心地よいファイル

――37個に入らなかったけれど、じわる文具があれば一つだけ教えてください。

松岡先生 アイドントノウの「SLIT」ですね。A4サイズの紙を複数枚挟めるファイルなのですが、私は主に傷めたくない書類を持ち運ぶときに使ってます。紙を挟むと冊子のようにページをぱらぱらめくれるようになるので、企画書を綴じたり、展示会用に即席の商品カタログを作れたりと、いろんな用途で使えます。

一番のポイントは紙を挟んで「トン、トン」と背の部分を打ちつけると、不思議と紙が落ちないしくみです。この「トン、トン」が心地よくて、企画書だったら「さあ、プレゼンに勝つぞ」って気分が高まるんです。

ただ紙を挟むだけのファイルと言ってしまえばそれだけなのですが、使えば使うほどよくできてるなあと、じわじわ感心します。

――私だけの「じわ文具」を発掘したいと思います。どんなお店でどう探すのが良いでしょうか?

松岡先生 店主が積極的に情報発信している、こだわりの強いお店がいいですね。例えば大阪のドケットストアさんなんかは「なぜそれがお気に入りか」をnoteでこってり書かれてますし、とても参考になります。セレクトもいい意味でかなり偏ってるので、好きな人にはたまらない世界観です。本書で紹介している文具もいくつか取り扱っておられます。

逆に大手チェーンの文具店や雑貨店を散策するのもいいですよ。小規模店舗にはない種類の豊富さがありますので、見つけてくれるのをひっそりと待っている控えめな文具たちがたくさん埋もれています。売れ筋だけが文具じゃない、私だけの「じわじわくる文具」を発掘するぞという気持ちで楽しんでほしいですね。もし見つけたらハッシュタグ「 #じわじわくる文具 」をつけて教えていただきたいです。

――最後にガジェット好きな@DIME読者のみなさんに、毎日の仕事へのモチベーションをあげる文具を一つ、紹介していただけますか?

松岡先生 ラコニックさんの「STYLE NOTEBOOK」シリーズのひとつ「To Do ノート」ですね。ガジェット好きの皆さんはきっと To Do 管理に一家言あるはずです。それこそアプリは無数にありますし、デジタル管理している方も少なくないのではないでしょうか。しかし私はあえてアナログを推したい。

この To Do ノートは本当に To Do 管理のみに特化したノートで、ここに日々の「やらなきゃいけないこと」や「今から取り組むこと」を気軽に書きこんでいけます。手書きでパパっと書いて、クリアしたらチェックマークを入れるだけ。内容を間違えたり変更があったら線を引いて書き直せばいいし、とにかく手軽です。

日々のタスクはできるだけ細分化するのがポイントですね。だからノートに書くべきはプロジェクト名ではなく「誰々にメールをする」とか「確認の電話を入れる」とか、本当に細かい現場レベルの作業内容。達成するたびにチェックマークをシャッと右上にはね上げる気持ちよさが味わえるので、どんどんモチベーションが上がってくるんですよ。こなしたタスクの量を物理的に実感できるのもアナログならではの良さですね。

気づけば日々たくさんの仕事をこなしていることに気づいて、自己肯定感もじわじわ上がります。「嗚呼、自分も頑張ってるな」って。

――ありがとうございました!

生活に溶け込む「ささやかで実用的なデザイン」と「高機能」が両立した、知れば知るほど使いたくなる文具の新ジャンルが「じわじわくる文具」。毎日使いながら、じんわり幸せを噛みしめてみたい!

著者紹介
松岡厚志さん
Atsushi Matsuoka
1978年生まれ。関西学院大学卒業。在学中からフリーライターとして活動。2010年、HI MOJIMOJI(ハイモジモジ)を創業。「Kneepon from Nippon!」をミッションに掲げ、思わず膝を打つアイデア・プロダクトを企画・開発・販売。キーボードに立てられる伝言メモ「Deng On」や耐洗紙のメモパッド「TAGGED」等でグッドデザイン賞を受賞。2014年より御茶の水美術専門学校非常勤講師(~2020年)。ネーミングの専門家「ネームデザイナー」としても活動中。

文/柿川鮎子

編集/inox.

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