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昭和のヴィンテージマンション「秀和レジデンス」が令和時代の今でも愛され続ける理由

2022.08.04

「秀和レジデンス」と呼ばれるマンションがある。建設されたのは高度経済成長期の真っただ中だった1960年代から80年代。ざっと築30年から50年というかなり古い建物だが、現在も東京を中心に130棟以上が現存している。

建物の大きな特徴は青い瓦屋根と白い塗り壁、アイアン柵のバルコニー。秀和レジデンスという名前は知らなくても、東京に縁がある人はこの外観をみたらピンとくる人も多いのではないだろうか?

秀和高円寺レジデンス 写真提供:『秀和レジデンス図鑑』(トゥーヴァージンズ)

現在、この秀和レジデンスがSNSなどを中心に大きな注目が集まっている。大きなきっかけは2022年2月、秀和レジデンスの歴史をていねいに紐解き、その魅力をマニアックな視点で紹介する書籍『秀和レジデンス図鑑』が発売されたことだ。

「こんなマニアックな本、誰が買うの?」理解されなかった10年間

著者は不動産・リノベーション会社の代表をつとめる谷島香奈子さんと、お菓子作家として活動するhacoさん。ともに秀和レジデンスが大好きで、谷島さんは独自に「秀和レジデンスマニア」という情報サイトを運営していた。その傍ら、ずっと秀和の魅力がつまった本の出版を夢見ていたそうだが、出版社の反応は芳しくなかったという。

「話を持ち掛けても『こんなマニアックな本、誰が買うの?』という反応が10年くらい続いていました。やっぱり誰にも求められていないのかな?現実を目の当たりにして、最後のほうは書籍化を諦めかけていましたね」(谷島さん)

だが念願の書籍化となった『秀和レジデンス図鑑』は、出版社側からのオファーによって実現している。きっかけとなったのは、秀和レジデンスの第1号として1967年に建てられた「秀和青山レジデンス」が2021年に建て替えられることだった。

「秀和のような建物を記録として残しておきたい、そんな熱い想いによるトゥーヴァージンズ社からのオファーでした。正直もう諦めていたところがあったので、驚きとともに喜びでいっぱいでした」(谷島さん)

現在は解体されてしまった秀和青山レジデンス(写真提供:秀和レジデンスマニア)

一方、もう一人の著者であるhacoさんは2017年、東京の味わい深いビルを集めた書籍『いいビルの世界 東京ハンサムイースト』を共著で出版。その際に「秀和レジデンスの魅力にせまる夜」という刊行記念イベントを開催し、そこで谷島さんと出会うことになる。

「イベントを企画したものの、秀和好きがどのくらいいるのか、まったく想像がつきませんでした。当初5人くらしかお客さんが来ないかもしれないと思っていましたが、フタをあけてみればチケットはすべて完売。結局、60人くらいお客さんが集まりました」(hacoさん)

ひそかに秀和レジデンスを愛する人は、当時から存在していた。谷島さんはイベントでhacoさんとの出会いについてこう語る。

「hacoさんと出会うまでは秀和の魅力を語っても誰も反応してくれなかったので、出会ったときの喜びは大きかったです。私以上にマニアックだし、秀和の話ができる人をやっとみつけた!と」(谷島さん)

こうしてhacoさんも加わり、どのくらい存在しているかも定かではない秀和レジデンス好きに向けての書籍制作がスタートした。

20種類以上にもおよぶモルタル壁の紹介ページが大バズり

『秀和レジデンス図鑑』が販売されると、予想に反してSNSを中心に大きな話題を呼ぶ。きっかけは、秀和レジデンスに多く採用されている、白い塗り壁を取り上げたページ。秀和レジデンスではマンションごとに自由なデザインで白セメントやモルタルが塗られており、同じ模様のものはひとつもないという。

『秀和レジデンス図鑑』(トゥーヴァージンズ)で話題になった「いろいろな模様の壁」

本では20種類以上にもおよぶ、モルタル塗りの壁の模様をアップにして紹介。このページをSNSにアップする人がおり、マニアック具合が話題となってたちまち拡散されたのだ。そして書籍は1週間後に重版がかかり、2人に取材の申し込みが相次いだ。

「このページをみて『この建物はみたことがあるけれど、こんなに深く掘り下げるようなものだったのか』という驚きがあり、それをきっかけに興味を持ってくれた人が大勢いたようです。みんなの頭の片隅にある存在だったけど、この本によってそれが明確化されたのかもしれません」(hacoさん)

「秀和は実際に住んでいた人も多いし、友達が住んでいて知っているという人もいる。自分が勤めていた会社の目の前にあったとか、何かしら身近に接点があった人も多いと思います。そういう人が興味を持ってくれたのではないでしょうか」(谷島さん)

秀和レジデンスが数多く建設されているエリアは、主に東京23区。そこで生まれ育った人はもちろん、都内を拠点に生活する人たちにとっては「よく見かけるマンション」にすぎなかった。だがその魅力にいち早く気が付いた谷島さんとhacoさんにはある共通点がある。二人ともマンションにあまり馴染みがない地方出身で、地元には存在しないデコラティブなデザインの秀和レジデンスに衝撃を受けたのだ。

「私のファースト秀和は、代官山レジデンスだと思います。すぐそばにポップチューントーキョーという雑貨屋さんがあって、高校生だったころにストリート誌でよく取り上げられていたんです。地方出身の子ってよくお買い物マップ的なものを握りしめて代官山や原宿に行くんですけど、その時ポップチューントーキョーの目の前にあった建物が代官山レジデンスでした。とにかくお城みたいでかわいい建物が印象的でしたね」(hacoさん)

「私は佐賀県の出身で、マンションがほとんどなくて戸建てに住むのが一般的でした。ファースト秀和は上京して不動産業の仕事で訪れた秀和田町レジデンス。とにかく建物がデコラティブで可愛くて……まさに一目ぼれでした」(谷島さん)

谷島さんによると、秀和が建てられた60年代から70年代の東京は、日本の住宅建築は採算度外視で建てられてたり、たくさんのチャレンジがある建物がたくさんあったという。中でも秀和レジデンスは建築数がほかのマンションと比較するとかなり多く、それだけ目につく割合も高かったのだろう。

秀和代官山レジデンス 写真提供:『秀和レジデンス図鑑』(トゥーヴァージンズ)

だがこの風景が日常でなくなる日はもうすぐ迫っている。築30年から40年の建物には“老朽化”という問題があり、近い将来は秀和青山レジデンスのように建て替えられたり、あるいは取り壊しになると言われているのだ。

2人の書籍『秀和レジデンス図鑑』は、秀和の風景が日常と化している人々にその事実を気が付かせてくれた。さてこの先、秀和レジデンスはどうなっていくのだろうか?

(著者プロフィール)

谷島香奈子さん
不動産&リノベーション会社、株式会社Style&Deco代表取締役。秀和レジデンスの情報を集約した秀和レジデンス専門不動産サイト「秀和レジデンスマニア」を運営。著書に『中古を買ってリノベーション』(東洋出版)がある。

hacoさん
サイケデリックでキュートなスイーツを製作する「psychedelic sweets spica」として活動しているほか、街で気になった物を写真に撮りzineを制作している。2021年には自身が撮影した秀和レジデンスの写真をまとめた『Shuwa is cute -かわいい秀和レジデンス-』を発表。

取材・文/高山 惠


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