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非接触タグRFIDの活用で実現するトレーサビリティーと物流・小売業界のDX

2022.08.07

衣料や雑貨の量販店などでよく見かけるようになった非接触ICタグ「RFID」。非接触会計や在庫管理などの業務効率化に活用されている。そのRFIDの最大手である米国発のAvery Dennison(エイブリィ・デニソン)社は、近年、RFIDやQRコード、BluetoothタグなどのデジタルIDの掛け合わせでデータを取得し、それらのデータをクラウド上で商品の来歴と紐付けることで、個品ごとのトレーサビリティを実現している。RFIDなどのデジタルID、またクラウドを掛け合わせ、個品をトレースするメリットとは?同社にインタビューを行った。

RFIDとは?

そもそも「RFID(Radio Frequency IDentification)」とは何か?よく耳にするものの、わかったようでわかっていない技術の一つだろう。

直訳すれば「近距離無線通信を用いた自動認識技術」となる。つまり無線を使って自動認識する技術のこと。タグやシールにICチップが搭載されたアンテナを組み込むことで、様々なものを非接触で識別・管理することができる。

例えば、ユニクロなどの衣料品のリアル店舗内にあるすべての商品一つ一つにRFIDがつけられているため、店員がわざわざ数えなくても、リーダーをかざすだけで在庫数をリアルタイムで確認することができる。また、客が会計する際にも、商品を一つ一つスキャンすることなく、セルフレジに入れるだけで、商品を一瞬で読み取ることができ、スピーディーに会計が終えられる。

RFIDが解決したこと

そのRFIDの世界的トップ企業といわれるAvery Dennisonは、RFIDを自社のラベル加工技術と組み合わせたことで拡大させた。日本での多くの店舗ですでに同社製のRFIDタグが導入されている。

そもそもなぜ、今世界中で、RFIDの導入が進んでいるのか。これまでのやり方にはどんな課題があったのか。同社の日本法人でマネージングディレクターを務める加藤順也氏に話を聞いた。

【取材協力】
加藤順也氏
Avery Dennison Smartrac Japan
Managing Director
LVMHグループ、Kurt Salmon US Incを経て2011年にAvery Dennisonに入社、2019年4月から現職。小売業や消費財メーカーへのコンサルティングやソリューション開発が専門。Avery Dennisonにおいて、マーケット開拓やRFID導入プロジェクトをリードし、日本支社の成長を牽引。上智大学卒。UCバークレーHaasビジネススクールDLAP修了。

「従来は、バーコードの形で『どの事業者の、どの商品か』を識別するJANコードを使用する方法が一般的でした。在庫管理やレジのPOSシステムなどで広く活用されており、バーコードをスキャンすることで得られるデータを活用して、売れ筋などを把握できたり、それを補充発注や生産計画、マーチャンダイジング、商品開発などに活かすことで、ビジネスをダイナミックに変えてきました。

しかしよりサステナブルで、サプライチェーンにおける透明性を担保する必要性が出てきたこと、そして顧客体験に寄り添ったビジネスが求められる今日では、さらに細かい単位、つまり、ひとつひとつのモノごとに異なる『ユニークID』のデータが求められるようになりました」

RFIDは、その課題の解決策の一つとなるという。

「RFIDは、ひとつひとつのアイテムに固有のユニークIDを付与することができます。つまり、個品単位で、生産地や原材料といった個品の来歴、サプライチェーン上のどこに位置するのかといったデータを取得し、イベントとの紐付けが可能になります。またそれら来歴の管理・開示も可能になります。

一般に広がっている『QRコード』でもユニークIDの管理はできますが、サプライチェーン上のすべてのリードポイントで、すべての商品のQRコードを都度スキャンすることは現実的ではありません。そこでRFIDのように無線を使って一括で読取りができるソリューションが改めて注目されています」

異なるデジタルトリガーの掛け合わせでトレーサビリティを実現

同社はBluetoothタグを開発しているWiliot社に出資を行っているが、先日同社との戦略的パートナーシップを締結した。

同社は、RFIDなどのフィジカル(物理的な)アイテムにユニークIDを与えてデジタル化するためのトリガーを「デジタルトリガー」と呼んでいる。このたびのWiliot社との協業により、RFIDやQRコードに加え、Bluetoothタグもデジタルトリガーのオプションとなり、ビジネスニーズに応じてデータを取得できる環境がより一層整ってきているという。生産地、各物流拠点や販売店でそれぞれ読み取り、取得されたデータを一括で管理することで製品が生活者の手元に届くまでの道のりを精緻に可視化・追跡できる。つまり「トレーサビリティ」の確立により、例えば産地偽装防止なども実現可能だ。

なぜデータを取得する際は、RFIDだけでなく、複数のデジタルトリガーを組み合わせる必要があるのだろうか。加藤氏は、次のように解説する。

「サプライチェーン上での透明性を担保し、個品レベルのトレーサビリティを実現するためには、RFIDやQRコード、Bluetoothタグなどのデジタルトリガーを、使用する場所や状況に応じて組み合わせて活用することが求められます。

例えば、RFIDは、読み取りに特殊なRFIDリーダーを必要としますが、リーダーにかざすだけで一度に大量のアイテムを読み取ることができます。ですので物流センターや倉庫、店舗といった多くのアイテムが集められる環境で効果を発揮します。

一方、QRコードは、専用のリーダーを必要とせず、スマホでデータをスキャンできる代わりに、ひとつひとつコードを読み取っていく作業を必要とします。つまり小規模な飲食店や消費者の家庭といったリーダーがない状況でのデータの読み取りに適しています。

このように使用する場所や状況に応じて適切なデジタルトリガーを組み合わせることで、固有のアイテムに関する様々なデータを、生産地から消費者の手に渡るまで効率的に集めることができます」

デジタルトリガーを活用して、ユニークIDのデータを収集することで、もう一つ、メリットが期待できるという。それは、過剰在庫、廃棄物、二酸化炭素排出量の削減といったサステナブルな取り組みにも寄与できる点だ。

「弊社は、2021年春にフィジカルな世界とデジタルな世界をつなぐデジタルプラットフォームである『atma.io』を立ち上げました。これはデジタルIDをトラッキングすることで得られたそれぞれの個品の『固有のストーリー』を消費者に提示することができるサービスです。

取得したデータをatma.ioのようなソリューションを活用してクラウド上に登録し、そのアイテムが経験したイベントを紐付けていくことで、従来では実現できなかった、個品ごとのより正確なトレーサビリティや在庫最適化が実現でき、また過剰在庫、廃棄物、二酸化炭素排出量の削減に向けた、データドリブンなアプローチや意思決定をすることができるようになります」

新しいBluetooth技術「Passive Bluetoothタグ」とは

もう一つ、同社は先述のWiliot社と共同で、新しいBluetooth技術によるデジタルトリガーを設計・製造しているという。

それは「Passive Bluetoothタグ」と呼ばれるものだ。

「Passive Bluetoothタグ」は、他のデジタルIDとどのような違いがあるのだろうか。

「Passive Bluetoothタグは、エナジーハーベストという技術を使い、空気中に存在するWi-Fiや携帯電話の電波をエネルギーに変換してIDを発信するバッテリーレスのタグです。温度や重量などのセンシング機能も搭載でき、将来的には改ざん防止、湿気、衝撃などの機能も備えることができるようになるでしょう。

ただし、このPassive BluetoothタグはRFIDなどの他の技術に取って代わるものではなく、先述の通りユースケースや必要なデータに応じて使い分けられることになります。

Passive Bluetoothタグは、スマートフォンなどの端末でもIDを取得することができること、またNFC(近距離無線通信)とも異なり、数メートル先のタグでも複数のIDを一括で読み取ることができるため、専用端末がない環境下でも、例えばQRコードなどの読み取りをせず、複数のアイテムに関するデータを自動で取得できることが期待されています」

日本における最新デジタルIDソリューションの未来

日本で今後、RFIDやPassive BluetoothタグなどデジタルIDソリューションが導入されていった場合、どのようなシーンや用途で、どのように発展していくだろうか。加藤氏は次のように述べる。

「アメリカでは、Walmart(ウォルマート)やUPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)といった業界を代表する企業がRFIDの活用を公表していますが、日本ではまだこれからという段階です。しかし日本でも今後、モノにユニークIDを与えて、それぞれのモノがいったいどんなヒストリーを持っているのか、そのヒストリーにどんな価値があるのかといったことを消費者やビジネスユーザーに伝える世界が来るでしょう。業界が抱える課題を考えると、特に『食品、化粧品、物流業界』に注目しています」

●消費者は新しい観点で商品を選ぶことができる

もし食品業界に導入された場合、消費者は買い物の際、新しい基準で選択できるようになるという。

「例えば食品の場合、スーパーの店頭に並んでいる牛乳は全部同じように見えますが、同じAというブランドの商品であっても、搾乳された日時は違いますし、どの牛から絞られているのかも違います。しかし、JANコード単位での在庫管理システム上では、それらはすべて同じ商品として管理されています。

しかし、商品ひとつひとつにユニークなIDを与えて管理することができれば、どこの牧場でつくられたのか、どの牛からいつ搾乳されたのか、どうやって運ばれてきたのか、どこでいつ販売されたのかといった情報をトラッキングすることができ、ある一つのモノにまつわる新しい価値としてヒストリーやジャーニーが見えてきます。

また、CO2排出量や原料がコンプライアンスを満たしているかといったところまで見えれば、消費者はいままでとは違う観点で商品を選ぶことができ、買い物の仕方が変わるはずです

アメリカのレストランチェーンChipotle MexicanGrillでは、RFIDを導入して原材料サプライヤーからレストランで食材を提供するまでのトレースを実現しています。これは食品の安全性や品質に関する懸念に対して、迅速、かつ正確に対応できるように設計されたもので、Foodwith Integrityという基準に取り組んでいる同社らしい、先進的な取り組みだと考えています」

●オンラインにおける在庫情報のリアルタイム開示

「これほどまでに買い物のデジタル化が進んでいるのに、在庫情報のオンラインでの開示はまだまだ進んでいません。RFIDを使って在庫情報がリアルタイムかつ正確に把握できるようになれば、リアル店舗の在庫数がオンラインで分かるようになり、Amazonの翌日配送という選択肢以外にも、Googleで検索した商品を最寄りの店舗に行って買い物をする、ということも今まで以上にできるようになるでしょう。これが米国のWalmartやTarget(米国の大型ディスカウントスーパー)がRFIDを使って実現を目指している世界だといわれています。日本の小売業にとっても大きな転換点であり、同時にチャンスと言えるのではないでしょうか」

RFIDはすでに日本でも定着し始めているが、アメリカではすでにさらに次の段階へと進んでいる。まずはトレーサビリティを確認して商品を選べるようになる日は近付いているといえそうだ。日々活用する商品にユニークIDが付与させるようになれば、これまでにない買い物体験が得られるだろう。

取材・文/石原亜香利

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