多くの人が実感した『ヤクルト1000』の凄さ
今年のヒット商品を一つ選ぶとすれば、私は『ヤクルト1000』を推したい。昨年末よりSNSを中心に「『ヤクルト1000』を飲むとぐっすり眠れるようになった」「寝る前に飲むと寝付きが良くなった」等の口コミが広がり、じわじわと人気を拡大した同商品だが、2022年に入ってからは大手メディアでもたびたび取り上げられるようになり、そのたびにスーパーやコンビニの商品棚から姿を消し、現在(2022年7月末)でも品薄状態が続いている。
今やSNSでは「やくせん」という愛称まで登場している『ヤクルト1000』であるが、細かいことを言えば2種類の商品があることはご存じだろうか。
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内容量 |
メーカー希望小売価格 |
主なチャネル |
全国発売日 |
備考 |
Yakult1000 |
100ml |
130円/本(税別) 910円/7本パック(税別) |
ヤクルトレディの宅配 |
2021年4月5日 |
2019年10月に地域限定で発売 |
Y1000 |
110ml |
150円/本(税別) 900円/6本パック(税別) |
店頭 |
2021年10月5日 |
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※株式会社ヤクルト本社提供
どちらの商品も1mlあたり10億個の「乳酸菌 シロタ株」が含まれており、「ストレス緩和」「睡眠の質向上」が認められた機能性表示食品という点では変わりがないが、いずれも品薄が続いており今後の見通しとしては「『Y1000』につきましては、7月から生産体制を強化し、さらに年内の増強を計画しております。また『Yakult(ヤクルト)1000』につきましても、今秋の生産体制強化に向けて準備を進めております」(ヤクルト本社ホームページより)とのことである。
※本記事では便宜上『Y1000』『Yakult(ヤクルト)1000』をまとめて『ヤクルト1000』と表記する
大事なのは「乳酸菌 シロタ株」の個数ではなく“密度”
安定供給には期待が高まる一方で、やはり“いま”『ヤクルト1000』を飲みたいのもまた事実である。どうにかして『ヤクルト1000』を手に入れる方法はないものか――。
思考を巡らせヤクルトのホームページを見ていると、ふと気付いたことがある。既存商品にも「乳酸菌 シロタ株」が含まれているのである。同じヤクルトなので当然と言えば当然なのだが、そうであるならばもしかしたら既存商品でも飲み方次第で『ヤクルト1000』と同じ効果を得られるのではないだろうか。
例えば、『Newヤクルト』であれば一本当たり200億個の「乳酸菌 シロタ株」が、『ヤクルト400』であれば一本当たり400億個の「乳酸菌 シロタ株」が含まれている。であれば、『Newヤクルト』を5本、『ヤクルト400』を2.5本飲めば『ヤクルト1000』と同じ「乳酸菌 シロタ株」を摂取できるではないか。
全然『Yakult1000』が手に入らないので、写真はNewヤクルト
単純な算数の問題であるが、そこまで単純な話ではない気もする。気になった私はこの仮説の真偽を確かめるべくヤクルト本社に問い合わせることした。
「『Yakult1000』『Y1000』のエビデンスは、高密度の『乳酸菌 シロタ株』(1mlに10億個の乳酸菌シロタ株)を含んだ飲料での飲用試験で得られたエビデンスです。これは10億個/1mlという高密度だからこそと考えられています。他の商品では、同じエビデンスを持ち合わせていません」(ヤクルト本社広報室)
呆気なく私の仮説は間違っていると指摘されてしまった。しかし、なぜ高密度の「乳酸菌 シロタ株」だと、これまでになかった機能が備わるのか新たな疑問が沸いてくる。
「メカニズムについては、高密度な『乳酸菌 シロタ株』が神経系に緩やかに作用することで一時的な精神的ストレスがかかる状況での『ストレス緩和』『睡眠の質向上』をもたらすのではないかとこれまでの研究で考えられています。ただし、まだ詳細なメカニズムは解明されていないため、研究を重ねているところです」(ヤクルト本社広報室)
「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能はないものの、『ヤクルト400』や『Newヤクルト』は特定保健用食品として整腸作用が認められている商品であるという。睡眠の質に困っている人たちは残念ながら大人しく『ヤクルト1000』の供給再開を待つしかないというわけである。ヤクルト本社の丁寧な回答のおかげで疑問が解消できた私に限って言えば、『ヤクルト1000』がなくても今夜はよく眠れそうだ。
取材・文/峯亮佑(Twitter:@mineryo33)