経営者にも人気のスポーツ、トライアスロンを室内で、しかも3種目連続して行なうことができるトレーニングジムが登場。国内初のトライアスロン専用ジムとはどんなものなのか? 実際にその一部を体験してみた。
練習時に続けてやることがない
泳いで、乗って、走る。トライアスロン愛好者は国内に30万人いると言われ(日本トライアスロン連合調べ)、USEN-NEXT HOLDINGS宇野康秀CEOなどの経営者も楽しむスポーツになっている。※関連記事はこちらから。
さてこのトライアスロン、ご存じのようにスイム、バイク、ランの3種目を連続して行なうスポーツだが、練習の時に3種目を続けて行なうことはほとんどない。筆者も10年以上トライアスロンを楽しんでいるが、練習で3種目を続けて行なったことはない。
おそらくほとんどのトライアスリートが同じだと思う。バイクとランを連続して行なうことはあるが、スイムも一緒にやろうとするとかなり難しい。プールから上がった後、身体を拭いて着替えて・・・などとしているうちに心拍数が落ち着いてしまうため、実戦的な練習にはほとんどならない。結局、大会の際にぶっつけ本番で行なうことになってしまうのが実際のところだ。
そんなこのスポーツの”弱点”ともいうべきところを補ってくれるのが、東京・池袋にオープンしたトライアスロン専門室内ジム「アーストライアスロン」なのだ。
このジムの大きな特徴は、流水プールが設置されていて(奥の黒い建物)、そのすぐ近くに室内用のバイク、さらにその隣にトレッドミル(ランニングマシン)が準備されているところ。水から上がって、すぐにバイクに乗って、そのまま走ることができるため、実戦のようなトレーニングが可能になっている。
「このジムに反応を示してくれるのはベテランの方が多いかな、と予想していましたが意外と初心者の方の問い合わせも多いですね。トライアスロンを始める際にいくつかハードルがありますが、海で長い距離を泳ぐスイムに不安をおぼえる人も多いので、実戦的なトレーニングができる流水プールがあるのは、初心者には大きなメリットだと思いますよ」
流水プールといえば、オリンピック選手などが使用しているところを見たことがある人も多いと思う。なんとなく憧れがあるこの施設が、筆者のような一般人でも使えるとは! それだけでテンションが上がってしまう。
しかもこの流水プール、トライアスロンのスイム練習としてもメリットが多い。トライアスロンのスイムは海や湖を止まらずに泳いでいくのが基本で、プールで泳ぐ競泳のように壁を蹴ってターンをすることはない。流水プールでは、ターンせずにずっと泳ぎ続けられるため、かなり実戦的なトレーニングを行なうことができる。
またプールの横面がガラスになっていて、水中姿勢のチェックも可能。施設に所属しているコーチからフィードバックを得られるほか、動画で自分の泳ぎを確認することもできる。これによって通常のプールで泳ぐよりも、短時間で上達できる仕組みだ。
実際に流水プールを使ってみた
3種目を連続して行なうのはさすがにツラいので、せめてスイムだけでもと、実際に流水プールで泳いでみることにした。
自分が普段泳いでる速度(100m何秒など)をコーチに伝えると、その速度の水流が前方から流れてくる。この速度は12段階で設定ができ、トライアスリートは大体100mを1分50秒 ~ 2分10秒くらいのペースで泳ぐという。一般的なプールと違うのは、やはり前方からの水流があり、それに逆らって泳ぐイメージ。普段あまり感じない”水の抵抗”を意識しながら泳ぐことも求められる。
あとは上からも、横からも”見られてる”感じがするところ。実際には見られているかどうか、こちらからはガラスの向こう側が確認できないが、何となく緊張感があった。
5分ほど連続して泳いでみたが、やはりターンがないのでかなり実戦的なトレーニングにはなると感じた。しかも、実際のレースで泳ぐ海とは違い、いつでも足がつける安心感もあるので、泳ぎが苦手な人も安心してトレーニングに集中できるだろう。”見られている”緊張感にはいずれ慣れるだろう・・・。
濡れたままでバイクにも乗れる
さて、ここからもし3種目を連続して行なう場合は、プールを上がってすぐに自転車のトレーニングに入ることもできる。使用する自転車は、自分のものを持ち込んでもOKだし、施設にあるスマートバイクを使用してもOKだ。
このスマートバイクはゲームのようにバーチャル空間をサイクリングできるアプリ「ZWIFT(ズイフト)」を活用して行う。実際にペダルを回すと、画面内のアバターが走り始めて飽きることなく自転車の走力を養っていく。またこのスマートトレーナーは、画面に現れる勾配に合わせて、ペダルにかかる重さも、自転車自体の角度も変わるので、まさに実戦的な練習ができる。
※ZWIFTを使用する場合は、個人のアカウントでログインする必要があります。
前述のとおり、バイクを終えて最後の種目ランニングもできる。スポーツジムなどでもおなじみのランニングマシン(トレッドミル)を使っていく。ランニングマシンといえば、走行面が自動で動くものが一般的だが、ここではその一般的な電動式(左)とともに、自分で走ることで走行面を動かす自走式(右)の両方が準備されている。
“空力”チェックでラクに速く
プールで泳いだそのまま、バイク、ランと続けていける。それだけでもかなり画期的だが、このジムには日本唯一の空力解析システム「ビオレーサーエアロ」も導入されている。
ペダルを速く回転させれば速く走れるのが自転車ですが、それにプラスして空気抵抗について考えると、さらに速く、効率的に走ることができます。このビオレーサーエアロは、仮想で風洞実験ができるシミュレーターで、カメラで乗車姿勢を撮影し自分の空気抵抗を解析。コーチ陣がフォームを調整することで、効率的に走るフォームが身につけられる。このシステムは日本で唯一このジムだけが導入しているという。
「”空力”を考えると体力をセーブしながらラクに走ることができます。想像以上に空気抵抗は身体への負担になっていて、しかもトライアスロンの自転車は走行距離が長く、その後にランニングも待っています。いかに自転車をラクに走るか、それがトライアスロンには必要なんです」(自転車コーチ・前川さん)
カメラで撮影すると詳細なデータが画面に出てくるので、納得して取り組むことができる。「実は経験者よりも初心者のうちに空力について考えるとメリットが大きい(前川さん)」
プールで泳いだ後、すぐにバイクに乗れてランまで続けられる実戦的なトレーニングが可能。しかも”空力”を分析して効率的な走りまで身につけることができる。長い時間・距離を走り続けるためのテクニックが、専門コーチと最新技術で探れるトライアスロン専門ジム。
現在は東京・池袋の一店舗だけだが、今後都内に拡大していく予定があるとか。トライアスリートだけではなく、自転車のレベルアップを図りたい人にも最適なアーストライアスロン。8月1日より会員の受付がスタートするが、お試し体験コースもあるので、まずは最新の設備を体験してみては?
アーストライアスロン
https://www.earth-triathlon.com
取材・撮影/今 雄飛(こんゆうひ):ミラソル デポルテ代表。スポーツブランドのPR業務を行うかたわら、自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン